- 氏名
- 山崎 美和(Career Voice 代表)
- プロフィール
- フリーアナウンサーとして活動後、キャリアコンサルタントの資格を取得。キャリアヴォイスを立ち上げ、声を通じたキャリア支援を全国各地で行う。2016年より、企業内の人材育成やキャリアデザイン、イノベーター育成、イベントプロデュースに取り組む。現在は、「活きるチカラをすべてのヒトに!」を目的に、キャリアコンサルティングを通じて、経営者と従業員の架け橋として活動している。
心理的資本を高める介入法=ガイディングのスキルを有するPsyCap Masterの認定を取得された山崎 美和さん(写真右)に、お話を伺いました。聞き手:Be&Do赤澤(写真左)
インタビュアーより一言山崎さんはキャリアコンサルタントとして、豊富な知見と経験をお持ちです。社外1on1ミーティングの質を高めるために、心理的資本のノウハウを活用されており、その取り組みは、外部支援者のみならず、1on1を実施する管理職や組織推進者にも大いに参考になる内容です。また、後編(※公開準備中)では、心理的資本をテーマとした管理職研修の手応えや、地方で活躍する山崎さんの想いについても伺いました。
働く従業員に「活きる力」を感じてほしい
はじめに、山崎さんが実現したいこと(Will)について教えてください。
私が掲げているパーパスは「活きる力を全ての人に」というものです。活きるというのは”バイタリティ”の意味合いです。私自身、このバイタリティという言葉に強く響くものを感じていて、これをパーパスとしています。
具体的な活動としては、経営者と従業員の架け橋になることを、現在の私のミッションとして捉えています。経営に関する難しいスキルや理論にはあまり詳しくないかもしれませんが、私と関わることで「元気が出た」とか「やる気が湧いてきた」と感じてもらえたら嬉しいです。それが、私が目指していることです。
なぜ心理的資本に注目されたのでしょうか?
本題に入る前に、これまでの経緯をお話しします。私はキャリアコンサルタントとして長年活動を続けてきました。資格を取得したのは2007年で、もう約20年近くこの分野に携わっています。私は大分県という地方で活動をスタートさせました。活動当初の頃はまだ「キャリアカウンセラー」という名称で呼ばれていて、キャリアに関する取り組みはほぼ未開拓の領域です。そのような状況ではありましたが、行政や大学など様々な場で貴重な経験を積ませていただきました。
2011年、夫の転勤で横浜に引っ越した際、もっとキャリア支援の幅をひろげたいと考え、大学に加え企業向けの活動を始めました。関東で企業研修の講師として様々な仕事をいただき、5年間活動した後、2016年に再び大分に戻りました。その際、大分でもやはり企業向けのキャリア支援に注力していこうと決め、どうやって企業に入り込んでいこうかと試行錯誤しながら、キャリア面談や研修に取り組んでいきました。
社内コミュニケーションの希薄化で、1on1代行を行うことに
そんな中、新型コロナの発生を契機に今まで以上に社内のコミュニケーションが希薄化し、そこにハラスメントの問題も重なり、本音を語り合うことが難しいという課題が増加していました。このような背景で、企業から「社外の人間による1on1ミーティングの代行」のオファーを多くいただくようになったんです。
どのような試行錯誤がありましたか?
そこで私は二つの課題に直面しました。
一つ目は、限られた時間内で面談の成果を引き出す難しさです。企業での面談は時間が短く、どうやったら短時間でキャリアの話を進め、さらにその人の気持ちを少しでも前向きにして、先ほどお伝えしたバイタリティを感じてもらえるような関わりができるかを考え、試行錯誤していました。実際、キャリア面談自体に慣れていない方が多く、「何を話していいのかわからない」「急に今の仕事についてどう思うかと聞かれても答えに困る」という反応でした。一緒にチューニングを合わせるまでにものすごく時間がかかるわけで、いわば「空中戦」のように探り合いをしているうちに時間が過ぎてしまいます。もう残りわずかしかないみたいな感じになる。
また、社員の多くは会社から指示されてキャリア面談を受けるため、どうしても受け身の姿勢になりがちです。そのため、「Will-Can-Must」を記入してくださいとお願いしても、これまであまり考えたことがないテーマであるため、どのように表現すればよいか分からない方が多く、うまく機能しませんでした。
二つ目は、企業側へのフィードバックと社員個人の信頼をどのように両立させるかという課題です。キャリア面談は、企業の依頼に基づいて実施されるため、社員一人ひとりが何を考え、どのような課題に直面しているのかを知りたいという企業の要望があります。一方で、キャリアコンサルタントとしての守秘義務も厳守しなければなりません。社員が安心して話せる場を守りつつ、企業側が求める情報を適切に提供する方法を模索していました。
そんな時に、タイミングよくある方からこのPsyCap Master認定講座をご紹介いただきました。心理的資本の考え方は、まさに私が言う「活力」にピッタリと合致する考え方ですし、社外1on1など、キャリアコンサルタントとしての私の頼れる相棒になるのではと思い、すぐに受講を決めました。
私は受講前の無料説明会で山崎さんと初めてお話をしましたが、非常に前のめりだったのが印象的でした(笑)。
さて、少し時間を進めまして、認定後のことをお聞きしたいと思います。認定後すぐ、山崎さんはBe&Doが提供する心理的資本診断ツール(HEROIC/ヒロイック)の導入を決められましたよね。
そうです。私はキャリアコンサルタントの学びの中で、様々な診断ツールを試してきました。利用する企業にとって金額的・時間的な負担が少なく、なおかつ現場で実用的に活用できるツールをずっと探していました。しかしながら、企業に導入してもらうのが難しいと感じるものが多かったんです。
具体的には、内容が詳しすぎて見づらかったり、本人に説明して理解してもらうのが大変だったり、現場でどう活かせばよいか明確にイメージしづらいという課題がありました。しかし、PsyCap Master認定講座を受講した際に心理的資本診断を体験し、「これは1on1で使える!やるしかない!」と直感的に可能性を感じ、一気にモチベーションが高まり、HEROICも利用することに決めました。
2022.09.01
HEROIC(ヒロイック)
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診断レポートと進め方の工夫で、面談の満足度が上がった
今は社外1on1の進め方をどのように変えられたのでしょうか?その効果も教えてください。
心理的資本診断を事前に受けていただき、診断結果のレポートを持って面談にきてもらい1on1ミーティングを進めています。まず大きな変化として、面談をこれから受ける方々が「このあと、自分の仕事への気持ちや意欲について聞かれるんだな」という心の準備ができるようになりました。診断にはそういった内容の質問項目が入っているからです。
具体的な面談の流れも紹介しながら話を進めますね。
まず面談の冒頭で、「この心理的資本診断の結果は評価ではなく、今のあなたの心情を示しているものです。他者との比較や点数の高低を気にして悲観的になる必要は一切ないですよ。」としっかり伝えるようにしています。共通認識を持って面談をスタートすることで、面談に来られる皆さんが安心して私に話をしてくれるようになりました。
その後、レポートを一緒に見ながら話を進めますが、私からではなく逆に面談を受ける方から「このコメントは自分に当てはまります。こういう経験があって・・・」といった具体的な話を色々と話してくれるんです。レポートが会話のきっかけとなり、相手が自然に話してくれる関係性ができるのは大きな変化です。その結果、面談が「何のための時間だったんだろう?」と感じさせることがなくなり、満足度も上がっています。
さらに、診断結果で心理的資本の中に特定の要素が低く出た場合でも、「これからどうやって高めていけばよいか」という私からの提案を皆さん前向きに受け入れてくださいます。これも診断を活用する大きなメリットであると思います。
実際に1on1の中でクライアントのどのような課題がみえてくるのか、差し支えない範囲で教えてください。
そうですね。心理的資本というと、構成要素とされるHERO(ヒーロー)という頭文字もあって、どうしてもポジティブで前向きな支援をしていくイメージが強いように感じますが、それだけではなくって。私はその人の心の中で起こっていることや抱えている課題もちゃんと見逃さないという点が、この診断ツールの素晴らしいところだと感じています。
例えば、診断レポートで「行動変容※」のスコアが非常に低い方がいたとします。その場合、私の実感ではその方は心理的資本のHEROも全体的に低めなことが多いです。でも、なぜそのスコアが低いのかを丁寧にお聞きすると、やはり職場での問題や心の中で抱えていることがあって、それをお話してくださるんです。仕事に対して真面目に捉えすぎるあまり楽観的になれず、頼まれた仕事を断れない結果、どんどん仕事が溜まってしまい、どう対処していいか分からなくなっているケースが実際にありました。
※行動変容:行動が起こせているかの本人の実感値。心理的資本のHEROの値ではないが、参考項目として心理的資本診断の項目の一つとしてスコアが表示される。
心理的資本診断は、ご本人が特に強く意識せずに答えた診断であっても、自分自身の無意識の部分が自然に数値として現れるものだと私は感じています。面談の中でご本人が、「そうか。やっぱりこういう心境だから、この数値が出たんですね」と自己一致を感じて納得される場面がよくあります。この気づきに対して、私もしっかりと丁寧に関わることを心がけています。
企業へのフィードバックが難しい点に関しても、変化はありましたか?
これまでキャリアコンサルタントとして、どうしても守秘義務があるのでクライアントの個人的な情報は企業側に共有することは基本的にできないのが大前提でした。しかし、この心理的資本診断のデータであれば、もちろん個人の特定につながる情報を一切含まないように配慮しつつ、「今の御社の状態はこういった傾向があります」といった形でデータを開示しながらフィードバックできるようになりました。
そうすると企業側も「なんとなく薄々感じていたけれど、やはりこういうことが起きているのか」と納得感がありますよね。現在の状況に対して改善策を早急に考えるきっかけになると感じています。
(Next▶心理的資本を取り入れた管理職研修とは・・・後編に続く※公開準備中 )