- 氏名
- 奥田 和広
- プロフィール
- 上場ファッションメーカー、化粧品メーカー、コンサルティング企業 などで勤務。取締役として最大170人の組織マネジメントに携わる。自らのマネジメント経験とコンサルティング経験を経て、成長企業の共通項OKRに出会い、株式会社タバネルを設立。
心理的資本を高める介入法=ガイディングのスキルを有するPsyCap Masterの認定を取得された奥田 和広さん(写真左)に、お話を伺いました。聞き手:Be&Do赤澤(写真右)
まずは奥田さんのお仕事について教えてください。
株式会社タバネルという会社で代表取締役をしています。社名には「全員の力を束ねることで、目的、目標を達成できる組織に変わる」という想いがこめられています。OKRという目標管理ツールを活用したコンサルティングや組織マネジメント支援、研修を行っています。
クライアントにコンサルティングをしていく中で私が特に最近感じているのは、中間管理職の過剰負担です。会社全体の仕組みにも問題があるはずなのに、なんでも全て中間管理職の技量のせいになっている現状を危惧していて、その問題解決に取り組んでいきたいと考えています。
「意欲は大事。でもどうしたらいい?」を解明されている
心理的資本に関心を持たれた理由を教えてください。
仕事する上で、意欲やモチベーション、マインドは大事。仕事のパフォーマンス発揮に影響するもの。多くのビジネスパーソンが経験則として理解していると思います。一方で、具体的な高め方はよくわからないものという認識ですよね。
私が心理的資本に関心を持ったのは、心理的資本が学術的に検証されており、開発が可能であるという点に注目したからです。誰かの経験則や思い込みを基とした考え方ではありません。みんなが大事だと思っているけど結局よくわからないという内面的なものを、科学的に解明している点に非常に注目しています。
私がコンサルティングを行う中でも、OKRを導入したことでマネジメントサイクルができて、メンバーと対話する機会が増え、結果として管理職とメンバー双方の心理的資本が高まっていくという実感を持っていました。より心理的資本が高まる理論や方法への理解を深めることで中間管理職の過剰負担の課題解決に寄与できると思い、PsyCap Master認定講座を受講しました。
自信を持って1on1を実施するための”裏付け”になる
コンサルティングの中で、心理的資本をどのように活かされていますか?
コンサルティングでは心理的資本の構成要素のHEROのうち、特にEfficacy(エフィカシー/自信と信頼の力)の考え方をメインでお伝えすることが多いですね。
中間管理職はメンバーと1on1をすることは多いですが、自分自身が1on1をやってくれる相手はいないというケースが往々にしてあります。精神的な相談を上司にできていない現状があります。なので組織に1on1を導入する際は、トップ⇒役員⇒部長⇒中間管理職との間でも1on1を実施しないとダメとクライアントへはっきり伝えています。その上で、1on1を効果的に実施してもらうための考え方として、エフィカシーを伝えています。
エフィカシーの考え方は、正直とてつもなく新しい考え方ではないです。「聞いてびっくり」という訳ではありません。しかしながら、薄々そうじゃないかとおぼろげに感じていたことが体系的に言語化されているので、「確かにそうだな」と本人が思っていたことが裏付けされやすいので、納得感や自信を持って1on1を実践していくことができると感じます。
管理職本人のエフィカシー(自信)を高めることも重要
管理職がメンバーのエフィカシーを高めることは大事ですが、管理職本人のエフィカシーを高めることも重要です。しかし、これが難しいのです。
例えば、エフィカシーは異なるドメイン(分野・領域)を超えられないものとされていますよね。つまり、これまでメンバーとして業務の中で自信を積み重ねてきた名プレイヤーであったとしても、やはりリーダーとしては新たなドメインに変わっているため、プレイヤーとしての自信をそのまま引き継ぐのは難しい。そこに最初の壁があります。
さらに、日本企業の管理職は役割が曖昧です。部下育成、業績の達成、上位層とのコミュニケーションも必要です。よってドメインが広範囲に渡るため、エフィカシーを築く上で重要な達成経験を積みにくい状況といえます。しかも、仕事のドメインが広範囲な分、どこかしらできていない部分が出てくるものです。そこに注目がいってしまい、上位層から「よく達成したね」という誉め言葉をもらいづらい。そうすると徐々にエフィカシーが毀損してしまい、結果的にあきらめや喪失感に繋がってきます。「ここまで頑張って課長になったけど、部長にはなれないな〜」という心情になりがちです。
OKRの良いところの一つは、仮に目標達成していなくても、上手くいったことに注目して褒め合おうという考え方でマネジメントサイクルを回していくことだと思っています。小さな達成体験を繰り返し積み、エフィカシーを高めることが、中間管理職のパフォーマンス発揮に欠かせないと考えています。
心理的資本はメンバー育成の根本にあるべき考え方
最後に、PsyCap Master認定講座を特におすすめしたいのは、どのような方でしょうか?
1on1で何をテーマに喋るか?どんな対話のテクニックがあるか?ということも大事かも知れませんが、心理的資本は1on1を含むメンバー育成の根本にあるべき考え方だと思います。メンバーが自信を失っていたり、楽観性を失っていたり。メンバーの状態を心理的資本の観点から捉えていくフレームワークとして活用できるものです。ぜひ、職場で1on1を実施する管理職の人や、あるいは1on1や組織開発を推進する人事の方にもぜひ心理的資本を学んでほしいですね。