目次
はじめに
2025年11月4日(火)、富山県で開催された【健康経営のレベルアップのためのシンポジウム】に、当社代表・石見の登壇に同行し、参加いたしました。
今回のセミナーは、人的資本経営や女性の健康、企業における健康経営の推進に関する知見を深める場として企画され、当日は健康経営の第一人者である先生方のご講演、そして地元企業の実践的な事例が共有される、非常に濃密な時間となりました。
本レポートでは、あくまで「イチ参加者」として、また「ウェルビーイングやパフォーマンス向上」に日々向き合うBe&Doの一員として、私が各セッションから何を感じ、何を考えたのかを中心に所感をまとめます。
基調講演:【健康経営のレベルアップを図るには】
NPO法人 健康経営研究会 理事長 岡田邦夫 先生
最初のセッションは、岡田先生による基調講演でした。岡田先生は、膨大な統計・調査データを基に、先進諸国と日本の比較をしながら、「なぜ今、働く人は健康でいることを目指し、企業はなぜそれを支援する必要があるのか」という健康経営の根幹を、極めてロジカルに解き明かしてくださいました。
特に私の印象に強く残ったのは、「心の不調を回避するためには、『会社依存症』にならないことが鍵である」というご指摘です。変化の激しい現代において、組織に過度に依存するのではなく、個人が「自立」している状態が、精神的な健康を保つ上でいかに重要か。これは、単にスキルやキャリアの自立を指すだけでなく、マインドセットそのものの自立を意味すると感じました。
また、「健康管理には限界があり、これからは自己管理・セルフケアを支援する方向へシフトすべき」という提言もありました。企業が一方的に「管理」するのではなく、従業員一人ひとりが主体的に自らの健康(フィジカル・メンタル両面)に向き合えるよう、環境や情報、ツールを提供し「支援」する。
その健康経営が目指すゴールは、単に健康状態を改善・維持(マイナスをゼロに)するだけでなく、従業員がウェルビーイングな状態(ゼロからプラスへ)になり、結果として高いパフォーマンスを発揮してもらうことにある、という点が明確に示され、改めて健康経営の意義と目的意識を強くしました。
講演:【女性の健康課題と活躍推進】
女性クリニック We! TOYAMA 代表・産婦人科医 / 富山県議会議員 種部 恭子 先生
続いて、産婦人科医でもある種部先生から、女性特有の健康課題についてのご講演がありました。
私自身も女性ですが、恥ずかしながら自分が経験していないことについては「知らなかった」情報も多く、いかにこの分野の情報が不足しているか、そして組織内での理解や配慮が追いついていないかを痛感しました。種部先生が強調されたように、まずは正しい知識を「周知していくこと」が、企業ができる第一歩なのだと理解しました。
そして、個人的にハッとさせられたのは、「同じ女性だからといって、分かった気にならないことが大事」という自身の気づきです。私たちは無意識のうちに「女性はこうだろう」とカテゴライズしてしまいがちですが、不調の感じ方や必要なサポートは千差万別です。
これは女性特有の課題に限りません。属性で一括りにするのではなく、一人ひとりの「個」と向き合い、対話し、理解しようとする姿勢こそが求められるのだと思います。
事例紹介:【とやまから広げる健康経営!楽しく、明るく、やらんまいけ!!】
北陸コカ・ コーラボトリング株式会社 様
北陸コカ・
様々な施策を実行されている中で、男性育休取得率100%を達成されるまでのお話を聞き、私が重要だと感じたのは次の2点です。
- トップの覚悟
- 社内の雰囲気が変わるまで「続ける」こと
健康経営は、導入してすぐに成果が出るものではありません。その中で、経営トップが「なぜ、これをやるのか」という意義と覚悟を、自らの言葉で繰り返し発信し続けること。
そして、その施策が単なる「イベント」で終わらず、「文化」として根付くまで、地道に「続ける」こと。
社内の雰囲気がポジティブに変わる「勝負どころ」を理解し、そこに至るまでの継続的な努力こそが、健康経営成功の鍵であると学びました。
講演:人的資本経営について
株式会社Be&Do 代表取締役 石見 一女
当社代表・石見からは、健康経営と人的資本経営のつながりや、人的資本のなかでも、個人の心の資源である「心理的資本」の重要性と開発の鍵についてお話ししました。

心理的資本とは、
- Hope(意志と経路の力):明確な志のもと目標達成の方法を思い描き行動を続けられる能力
- Efficacy(自信と信頼の力):自分にもできそうだという行動を起こすことができる自信
- Resilience(乗り越える力):ピンチをチャンスに変えられる逆境すら乗り越え成長する能力
- Optimism(柔軟な楽観力):現実的かつ肯定的に物事を捉えられるしなやかな思考を可能にする能力
この4つの要素(頭文字をとり「HERO」)から成る、開発・向上可能な資源です。従業員一人ひとりが「生きがい」「働きがい」を持つためには、この心理的資本へのアプローチが一つの道筋となります。
総括:ストレス度だけでなく、「心理的資本」への投資を
今回のセミナー全体を通じ、健康経営のフェーズが、不調者を減らす「守り(マイナスをゼロへ)」の段階から、従業員の活力を引き出しパフォーマンスを高める「攻め(ゼロからプラスへ)」の段階へと、明確にシフトしていることを感じました。
岡田先生が示された「自立の必要性」、北陸コカ・
それは、従来のストレス度(マイナスの状態)を測るだけでなく、「心理的資本」(前向きな心の状態)を知り、それを高めることへの投資であると、私は強く認識しました。
企業の成長というのであれば、ストレス度だけでなく心理的資本の状態を知り、それを高めることへの投資も、健康経営において重要テーマだと認識を強くした機会となりました。