4月は新年度のところも多く、チャレンジの気分が高まります。
今年度の目標を掲げ、スタートを切っていることでしょう。
目標管理制度を導入している会社の場合、年度か半期の目標を立てて、そのふりかえりが、評価の直前ということが、多いのではないでしょうか。
目次
目標管理制度やOKRの課題
目標管理制度が日本で広まった背景には、ドラッカー氏の影響が強いと言われています。
それは、明確な目標を自律的に設定することで、目標達成に向かう動機付けができるということからです。これは目標設定理論によるものです。
目標設定理論(Goal-setting theory)は、1960年代にアメリカの心理学者エドウィン・ロック等がモチベーション(動機づけ)理論の一つとして発表しました。
目標設定理論では効果的な目標設定の在り方として、以下が挙げられています。
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- 目標の明確化、具体化
- 困難性
- フィードバック
- 自発的な参加
- 能力
目標設定する意味は、経営的には着地を把握したいということもありますが、本来の目的は行動を起こすための動機付けです。 しかしながら、目標管理制度の運用では、本来の動機づけの意味合いより管理的な意味合いが強くなったことで、目標設定を過小にするなどの弊害が出てきてしまいました。 または目標が動機付けではなく、ノルマになり、長期的にみるとやらされ感やストレスにより生産性を落としてしまっています。
そこで少し前に流行ったOKRなどでは、過小な目標ではイノベーションが起こらないと、ムーンショットの目標を自発的に掲げようということがありました。通常では達成できそうもない大きな目標をリミッターを外して自ら掲げることで、やらされ感から脱し、挑戦への意欲を高めることで行動を促すというものです。このことは管理型の目標管理制度から脱する上で意味はありましたが、今は残念ながら従来型の目標管理制度にとってかわるものにはなっていません。
達成へのプレッシャーから過小になる目標設定も、殻を破りたいと設定するムーンショットの目標も、本来の動機づけにつなげるには大いに足りないものがあります。
それはWay(経路・道のり)です。掲げた目標に対して、どのような道のりを描くことができるか、またその道のりを複数、柔軟に描くことができるのかが重要です。
心理的資本の目標設定はWill(ありたい姿)とWay(経路・道のり)
心理的資本は「目標に向かって自律的に行動する心のエネルギー」です。心理的資本の構成要素の中で目標設定に関わる概念をHope(意志と経路の力)といいます。
心理的資本の目標設定の考え方は、まさしく動機付けに直結しています。
心理的資本はHope(意志と経路の力)、Efficacy(自信と信頼の力)、Optimism(現実的な楽観力)、Resilience(乗り越える力)から構成される概念で、頭文字をとって「HERO」といわれています。心理的資本の概要はこちらを参照ください。
心理的資本の目標設定に関わる概念のHope(意思と経路の力)はWill Power とWay Powerといい、「どうありたいかと描く力(Will)」そのWillに向かって「どんな道のりを複数柔軟に描ける力(Way)」の2つをいいます。
すなわち、Hopeが豊かな状態とは、登るべき山が見えて、その山に登るルートが明確に描けている状態であり、もしそのルートに問題が生じても、プランBやCを用意していたり、また他のルートをすぐに見出し、歩みを止めることなく進めることができている状態をいいます。
目標管理制度の問題は達成目標を掲げていても、その道のり(Way)が曖昧であったり、ましてや評価面談の時しか上司部下の対話の機会がないと、道のりが見えないまま迷子になってしまうのは当然です。目標の達成が評価と紐づいていれば、過小な目標になって当然です。
OKRでは、ムーンショットの目標に対して、定期的な1on1やフィードバックを行いながら行動を促進します。1on1が企業に定着しつつあるのは、OKRの大きな成果です。
ただ、一方で、ムーンショットの目標なので「7割の達成で良い」、ということはどうもすっきりしません。
なぜかというと、心理理的資本のEfficacy(自信と信頼の力)が開発しにくいからです。
Efficacyを高めるには、達成体験・代理体験・社会的説得・情動的喚起が効果的と言われています。
いつも7割の達成だと達成体験が得られないのです。または自分の中で、「この目標では7割でいいや」と脳内で調整してしまうことになります。
心理的資本の目標設定の考え方は「具体的である」「測定可能である」「挑戦的である」に加えて「達成可能である」です。
これこそ、Way(経路・道のり)を設定する上で重要です。
登るべき山頂に向けて、「どんなルートで登るのか」「いつまでにどれくらいの距離を歩むのか」「これまでのスキルを高める登り方なのか」そして「達成可能か」を考えて設定するのです。山登りで「達成が7割」だと危険ですよね。
そして、この少しストレッチのきいた目標を達成していくことで自信を深め、最終目標に到達できます。
ガイドの伴走が効果的
最初からストレッチのきいた目標が難しい場合は、最初は達成可能な低めの目標でも良いのです。ただ、少しずつストレッチを上げていくことで成長につながりますし、動機付けにもつながります。
そのために、この山登りには、Way (経路・道のり)を相談しながら進めるガイドの存在が重要です。
ガイドにふりかえりを共有し、励まされたり、ヒントをもらったりしながらWayの幅を広げることができます。
心理的資本を開発する介入法をBe&Doではガイディングといい、ガイディングを行う人をガイドと呼んでいます。
ガイディングが現場に浸透すると、自律的に目標達成行動する人を生み出せます。
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