テニスの全米オープンでセリーナ・ウィリアムズを破り優勝、日本選手で初めてグランドスラムを制した大坂なおみ選手。
表彰式では、審判のジャッジへの不満もありブーイングが飛び交う中、「プレイしてくれてありがとう。そして試合を見てくれてみなさんありがとう。」と述べお辞儀をする姿。大坂選手の頑張りを称え、一気に祝福ムードに変わりました。
この大坂選手の強さを支えているのが、二人三脚で歩んでいるコーチ サーシャ・バイン氏です。
サーシャ・バイン氏のコーチとしての指導や寄り添い方、職場における日々のマネジメントにも使える要素がたくさんあります。大坂選手を優勝に導いたコーチから学びます。
「対話」コーチングを重視
大坂選手が優勝、グランドスラム制覇につながったのは、コーチであるサーシャ・バイン氏の存在が大きいと思われます。
サーシャ・バイン氏コーチ就任後、すぐに世界ランキング1位のシモナ・ハレプらを破ってツアー初制覇。
世界ランキングも68位から、一気に19位へと急上昇しています。(今回の日本人男女を通じて史上初となる四大大会優勝の快挙により前回から12上げ、自己最高の7位へ浮上。)
サーシャ・バイン氏は対話を通して自分で考えることを助ける「コーチング」を重視。大坂選手の良さを引き出すことに成功しています。
テニスコーチ界でもサーシャ・バイン氏の対話を大切にする指導法は注目されているようです。
コーチが上から物を言い、先導・強制したりすることは成果につながりません。選手自身が主体性を持ちながら、新しい気づき、考え方や行動の選択肢、目標達成に必要な行動といった視点を持ち実現することが大切です。サーシャ・バイン氏はこれらを重要視しています。
元々大坂選手自身の素質は素晴らしいものです。知識やスキルやノウハウを一方的に教えるティーチングではなく、コーチとの双方向のコミュニケーションにより自分が縛られていた価値観に気づき、広い視点で物事を捉えられるになったのだと思います。
大坂選手の意思を尊重して、潜在能力や可能性を信じ自らチャレンジするように促しているのがサーシャ・バイン氏のコーチングなのでしょう。
ポジティブな行動や発言 空気を生み出す
大坂選手の優勝には精神面が安定したことも大きく影響しています。
去年までの大坂選手は「勝てると思ったらパニックになった」といった発言やインタビュー中に涙をしたりと精神的に不安定な面が見受けられました。
常にポジティブで陽気なサーシャ・バイン氏。
練習前のアップでは笑いながら併走し、コートの中ではとにかく明るい笑顔と言葉が絶えないそうです。トレーニングも一緒に付き合って同じ量の汗を流す。
大坂なおみ選手自身も「ネガティブになりがちな自分の性格上、常にポジティブなサーシャ・バインの姿勢は非常に良い影響を与えている。」とコメントしています。
職場や親子関係でも言えることですが、上司や親が険しい顔をしていると部下や子供は自然に相手の顔色を伺ってしまうものです。「怒られるのかもしれない」「何か失敗しているのかも」といったネガティブな考えにつながることあるでしょう。
逆に明るく陽気な人が周囲にいることは自分自身も明るくしてくれます。
場の空気もよい方向に変わり、考え方もポジティブになります。
マインドから変えポジティブへと導いてくれるのが、サーシャ・バイン氏の「明るさ」なのだと思います。
「楽しみながら」ゲーミフィケーションを利用
また面白い指導方法にも注目が集まっています。
ゲーム性のある競争。楽しみながら進んで取り組む仕掛けを創り出す“ゲーミフィケーション”をうまく利用しています。
4月に国別対抗戦フェド杯で日本に戻ってきた際には、2人でフォアハンドのラリーをして競いあったそうです。
このラリーには罰ゲームが設定してあり、大坂が負けた場合の罰は「渋谷駅前のスクランブル交差点で踊ること」。大坂選手は本気でラリーを頑張り、バイン氏に勝ったそうです。負けたバイン氏がスクワットをする様子を、勝った大坂なおみ選手がスマートフォンで撮影していたといったこともあったそうです。
⽬標・課題・アクションの明確化
⾃分のレベルを可視化
アクションに対する即時、他者からの承認・称賛といったフィードバック
課題達成後の報酬
目的そしてその後の得られるものを提示することで、選手のモチベーションは高まります。課題を設定しクリア後、クリアした課題よりも少し難しい課題を準備する。この繰り返しはモチベーションは維持につながります。
本人がやれたという感覚は、テニスそのものの楽しさや面白さにつながります。そして自然に「次ももっとやろう。頑張ろう。」といった前向きな気持ちへと変化します。それを続けるうちにいつの間にか選手自身の力が向上していきます。
サーシャ・バイン氏の「楽しみながら」、選手と同じ目線に立ってともに歩む、が形となっている練習かと思います。
まとめ
テニスやスポーツに限らず、部下や組織のマネジメントに効果的にコーチングを取り入れることで、部下との対等な「対話」を起こし、部下の主体性を引き出し、考える力を高め、組織の力を高めていくことにつながります。また、ポジティブな行動や言動、ゲーミフィケーションをうまく仕事に利用することで、効果的な⼈材の育成・組織の活性化につながります。
大坂選手が「友だちみたい。彼に対しては自分が出せる。」と言うように、サーシャ・バイン氏は同じ目線に立ち共に戦ってきました。
上司というのは部下にとって非常に大きな存在そして大きな影響力があります。部下が成長するかどうかは上司次第とも言えそうです。