ツァイガルニク効果とは
ドイツの心理学者である、クルト・レヴィンは、「人間の記憶は達成された課題よりも、達成されなかった課題や中断している課題が記憶に残りやすい」と考え、このレヴィンの考えに基づいて、ソ連の心理学者ツァイガルニクが記憶の実験を行い、「未完の課題についての記憶は、完了した課題についての記憶より想起されやすい」ことを実証しました。
この思考を利用した効果を、「ツァイガルニク効果」と呼びます。
人の脳は、未完成の項目は今後作業を再開する可能性があると判断し、脳内の短期記憶領域ではなく、長期記憶領域に情報を残すようです。
人は、何かを達成しなくてはいけないという場面では、緊張状態となります。この緊張は課題が達成されると解消され、課題自体を忘れていきます。試験勉強などで頭にたたきこんだ知識を、試験が終わるときれいさっぱり忘れてしまった・・・という経験はないでしょうか。
人は達成した課題は忘れ、また新たな課題に取り組んでいくのですが、途中で課題が中断されたり、課題を達成できなかったりすると、緊張状態が持続してしまいます。この緊張状態の持続のために、未完の課題は強く記憶に残ることになるのです。
つまり、“うまくいったことよりうまくいかなかったことの方がよく覚えている”ということです。
・連続ドラマの翌週の予告を見せられるとつい気になって次の放送も見てしまう。
・片思いの相手だけはなぜかいつまでも覚えている。(振られたことはいつまでも覚えている)
これらも、この「ツァイガルニク効果」によるものです。
働き方改革にも「ツァイガルニク効果」?!
このツァイガルニク効果、上手く使うと働き方改革の課題にも役立ちそうです。
政府が働き方改革を推進する中で、よくとりあげられる「残業時間を減らす」そして「限られた時間での生産性をあげる」ことが企業の必須課題となっているところも多いのではないでしょうか。
やり方は簡単。微妙に仕事を残して消化不良の状態を作ります。
つまりここまでやらなければならないという1歩手前で仕事を終わらせて「気になる」状態にするということです。
私たちは、子供の時から、キリの良いところまでは続ける。ことが正しいやり方として教えられ育ってきました。
ですが、この「ツァイガルニク効果」によるとキリが良いところまで進めてしまうと、脳は短期記憶領域と判断してしまい、その仕事(課題)自体を忘れてしまい効率が良くないそうです。
効率を上げるには、あえて「きりの悪いところで終わらせる」のです。
そうする事で中途半端にしていた作業が記憶に残り、早く終わらせてすっきりしたいという心理が動きやすくなり、続きを再開した時にスムーズに仕事を進めることができるということです。
この手法のもう一つ良いところは、すでにやることが決まっているので、気分が乗る乗らないに左右されずにスムーズにスタートダッシュができます。
消化不良状態のストレスを感じない方法は?
一方で「気になる状態」が続くということは緊張状態が続くということ。それはストレスがかかっている状態が続くということです。
効率を高めながらストレスフリーの状態をつくる手法として「GTD(Getting Things Done)」というワークフロー管理があります。
GTDのステップの初歩は「気になる仕事は、次に何をやるかを明確にして、記録しておくことで、いったん頭の中から追い出してしまう」という方法です。
一見、「ツァイガルニク効果」と逆のようですが、共通点としては持ち越しても「すでにやることが決まっている」ということ。
一歩進んでいる点は、次の日に何をすれば良いかといったタスクを明確にすることで「モヤモヤ」をすっきりさせた状態にすることです。
いずれにしても、1日で達成できる目標はそんなに多くないと思います。
目標に対しての日々の行動やタスクにブレークダウンすることは必須になるでしょう!
毎日のふりかえりの中で「目標はまだ途中だからまだうまくいっていないけれど、今日はここまで達成できたぞ!次の日はこれをやろう!」と考えれば、ツァイガルニク効果もGTDの考え方にも適用できるのではないでしょうか。
▼GTDについての詳細は公式サイトへどうぞ!
忘れてはいけないことは、心身のセルフマネジメント。
ストレスをため込まない工夫、そしてリラクゼーションをして緊張をほぐしたり、気分転換を行うことが大切。
つまり自分で心身の健康状態をマネジメントすることができることが「ツァイガルニク効果」を得るための最低条件になるでしょう。