コラム

世界は誰かの仕事でできているから気負わなくていい!キャリアにおけるWillの悩みに応えたい

世の中的に「自分事としてキャリアを考えましょう」という話が増えていると思います。それはその通りなのですが、やっぱり言葉の一人歩きは良くないと思い、コラムに書きたいと思います。キャリア自律、キャリアオーナーシップ、キャリア〇〇。言葉が躍り「キャリアのことしっかり考えなきゃ」と気負ってしまっている人にこそ、読んでほしいと思っています。

そもそもキャリアって何?

そもそもキャリアの意味は、広い意味での生き方を指すこともありますし、もっと特定の仕事のことを指す使われ方もありますが、語源はラテン語の「荷馬車(Carrus)」だそうです。

荷馬車が通った後に残る車輪の轍(わだち)がありますが、その意味を捉えて「その人が通ってきた過去からの道のり」と捉えると最も自然に思います。経験や実績などを踏まえて「どのようなキャリアを歩んできたのか」という表現がしっくりきます。また将来に向けて「持ち運べること」と捉えることもできますよね。

キャリアプランを考えろ、と言われても、実のところは予測不能。計画通りに事が運ばないことも多いのではないでしょうか。

今求められているのは、これまでの自分の経験・知識・スキルをしっかりと意味付けすることの優先度が高いと考えます。そのうえで「Willは何だろう?」と問うことが大切なのではないでしょうか。もし、そこで自分のWillに気づいたとしても、これまでの経験がそのまま活かせるとも限りません。その時はその時で、じゃあどんな行動をしていけばいいか検討し、実際に行動に移していくことが大切なのだと思います。

そのWillがプレッシャーになっているなら

しかしながら、そのWillを考えることが重圧になるという話は、実によくうかがいます。つまり「目的意識とか自分軸とか自分の志を具体化しなければならない」という気負いです。私は具体化できていないことにネガティブになる必要は全くないと思います。

もう一つあげるなら「立派なWillを掲げることができない」と気に病んでしまう人も、なかなか多いです。これもまた、本来は全くネガティブになる必要がないと思います。

もしかすると、そんな時は誰かと自分を比べてはいないか。他者の評価を必要以上に気にしていないか。こうあるべきという固定概念に縛られてしまっていないか。少し時間をとって点検してみてほしいです。

人のWillを笑うな!Willの大小に貴賤なし

Willが具体的で、成し遂げたい強い志がある人は、自分が進みたい方向が明確なだけに強い。これは確かに間違いはありません。でも想像してみてください。それぞれが強く具体的な目的があったとしても、バラバラで好き勝手言っていたら、組織としてうまくいかないなんてこともあるのではないでしょうか。(もっと大きな目的意識のもとで意思疎通がとれているなら別なのかもしれませんし、理想ではありますが簡単ではないでしょう。)

Willを考えろなんて言われたら、どうしても遠い先にある壮大な目標を掲げなければと思いがちで、そうでなければ価値が低いなんて思っちゃいます。そう思っちゃうのも人間です。「Willが自分本位で恥ずかしい」とか「たいしたことが無いから恥ずかしい」と、やはり人の目を気にしちゃうものです。

でも、Willって本来は「~したい」という素直な想いにもとづいているはずですよね。

だから子どものころに立てた夢も立派なWillです。
身近な誰か、例えば家族やパートナーや友人に喜んでもらいたいというのも立派なWillです。
何なら〇〇に旅行に行きたい、美味しい××のお店で食事をしたい、思い切りお風呂でリラックスしたい、そういったものも一種のWillと捉えることができると思います。

自覚があるかないかは関係なく、例えば生活を維持することがWillだったとします。そのために、もし好きでもない仕事をしていたとしても、その仕事は必ず誰かの役に立っているものです。

誰かの仕事が積み重なりつながって、また別の誰かの生活を支えたり、気持ちよく過ごせたり、仕事が生まれたりしているはずなんです。

様々な職業の人たち

日本コカ・コーラ社のジョージアのCMが個人的にずっと印象に残っています。「世界は誰かの仕事でできている」というキャッチコピーで俳優さんたち扮する様々なビジネスパーソンが心の中でお互いを称えあう。そう、みんなそれぞれにカッコイイ。

そして私が社会人になり立ての頃に、当時の経営者からよく言われていたのは「職業に貴賤はないんやぞ」という話でした。それが私個人の労働観にも刷り込まれているのかもしれません。

本当に自分や家族の生活が成り立つのは、誰かの「おかげさま」なんですよね。

積み重ねたアクションの先で見つかることもある

もし今の仕事は自分にとって意味があるのだろうか。誰かの役に立っているのだろうか。そんな風にモヤモヤと考えてしまったりした時は、どんなに小さいと思えても、自分本位だって全く構わないので、それも立派なWill。そこに向かって行動を起こしてみることが第一歩なのだと思います。

その小さな一歩を踏み出して行動した結果、自分がどう感じたか。何か自分や周囲に変化があったか。あまり気張り過ぎずにふりかえってみると、自分自身の考え方や見方に少しずつ気づくことができるかもしれません。自分はこれが好きなんだなとか、こんな時に夢中になれるんだなとか、こんな風に誰かに喜んでもらえるんだなとか、達成感を感じるのはこれだなとか、観察するといろんなことを感じられると思います。

その積み重ねの結果、見えてくる景色が変わってきます。視点があがり、視野が広がることもあるでしょう。すると、その時に初めて「自分はこれを実現したい」というWillが明確になり、いわゆる”解像度”が高まってきたりします。

だから今、もし具体的なWillが見えなくて焦ってたり、迷っていたりしても、それは準備期間にいるんだと自分自身を認めることからスタートなのかもしれませんね。Willなんてないとか、私には無理、とかではなく、素直に「今はこれをやってみたいと思っている」で良いと思うんです。他者がどう思おうが、自分の本心を大事にしてほしいです。

まずは小さな行動。その積み重ねによる経験が「キャリア」になっていくのだと思いますし、Willが徐々に具体化してくることで「キャリア自律」にもつながってくるのだと私は思います。

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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・心理的資本の特徴
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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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