営業活動を効率的に行い、成果を最大化したい。
営業組織を持つ企業の方は、多かれ少なかれこの課題を持っているのではないでしょうか。
業種・業態や扱う商品サービスによって組織体制も異なると思います。
新規開拓が中心の場合と、ルート営業が中心の場合でも異なってきます。
営業の役割として想像されやすい例を見ながら、営業組織として生産性を向上するためにできることを考えていきます。
営業活動を取り巻く変化
一般的に「営業」部門に配属されて行う営業活動は以下のようなイメージではないでしょうか。
- 顧客のリストを準備する
法人営業の場合、年鑑や四季報のような冊子から集めることもあれば、インターネットから収集することもあるでしょう。
地域別や業種別に検索できる便利さから求人情報誌や求人サイトから企業情報を集めることもあります。
もちろんインターネットからの資料請求から生まれるリストもあります。
法人個人に関わらずですが紹介を募るという方法もあります。 - アポイントを獲得するために様々な手段を講じる
準備したリストに対して電話をして商談機会をつくります。いわゆるテレアポセールスというものです。
飛び込み営業を行うケースや、ダイレクトメールや手紙を送って機会をうかがうこともあるでしょう。 - 商談を行う
商品・サービスによって、商談のプロセスは異なりますが、初回訪問で課題をヒアリングしたり商品概要を説明し、企画提案に持ち込むケースが多いように思います。 - 顧客と契約を交わす
見積書を提出し、顧客と交渉を行います。最終的に契約書や申込書を取り交わします。いわゆるクロージングです。 - 顧客への納品を行う
しっかりと商品・サービスを納品するところまで行います。 - 顧客へのアフターフォローを行う
定期的に契約先顧客に連絡をしたり、訪問をしながら困りごとがないか確認します。
契約の継続や、追加発注につなげることが主な目的になるのでしょうか。
という具合です。
もちろんそれぞれの会社で独自のプロセスが含まれるケースもあると思いますが、新規開拓営業の王道パターンではないでしょうか。
しかしながら、現在はこの王道パターンが非効率になっていることもしばしば。
ビジネス環境の変化やテクノロジーの発達によって、今までよしとされていた営業活動が難しくなってきているケースが多いのです。
例えば1日100件の営業電話をかけるためにリストアップする作業、100件新規開拓の電話をかけること、そのうち数件アポイント獲得できたとしてもです。
その商談準備にかける時間、せっかく商談訪問をしたけれどニーズがなく無駄足に終わることもあります。
納品やアフターフォローを注力すると、次の新規営業にかける時間がなくなるので、おろそかになりがち…このようなケースも多いのが事実。
それでいて「働き方改革」の波もあります。営業自身の働き方改善も必要とされます。
もう一方で顧客側も効率的に働こうとしている中で、自分に必要ないと思っている商品の売り込みや、時間外に受電することなどはマイナスイメージにもなりかねません。ビルのセキュリティは高くなり、飛び込み営業も難しくなってきている。
そのような状況ではないでしょうか。
インターネット検索が発達し、法人個人に関わらず商品を選ぶことをインターネットで行うことが増えました。
あるデータによれば、顧客がその会社にお問い合わせをする前に、ほとんどの選定が終わっているそうです。
だからWebサイトに掲載する情報を充実させ、顧客がお問い合わせをしたくなる情報をできるだけオープンにしたり、資料請求につなげたりといった施策が重要になってきます。
また、その顧客の興味関心の内容や度合いを可視化したり一部の業務を自動化して効率化を図るためにマーケティングオートメーション(MA)を導入したり、営業が案件を管理しやすいようにセールスフォースオートメーション(SFA)や顧客管理(CRM)のためのシステム導入が進んでいます。
オンライン会議や、画面共有システムも普及しはじめており、訪問や移動なしで商談機会やアフターフォローを行える手段も現場に導入されはじめています。
分業化が進む営業組織
業務の効率化を図り、生産性の最大化を目指して営業組織を分業化することも増えています。
以下のような分業体制を見かけることも多いのではないでしょうか。
- マーケティング(顧客情報の獲得、メール配信やセミナーによる育成)
- インサイドセールス(顧客リストへの電話、確度の高い商談機会の創出)
- 営業(提案・交渉・受注、契約)
- カスタマーサクセス(契約後の納品・導入支援・運用支援による成果向上支援、契約継続やアップセル)
それぞれの役割のメンバーが、それぞれの目標に集中して取り組むことが可能になります。
専門性も高まり、効率化が進むでしょう。
一方で別の課題が浮き彫りになってきます。
それは、それぞれの目標まで分断されてしまうという現象です。
本来ならば各役割のチームが共通の組織目標を追っていて、その一部を担っているという認識が正しいと思います。
組織目標からブレークダウンされて、チームの目標になり、最終的には個人の目標に落ちてくることが一般的です。
厳密にいえば、以前から同様の課題はあったのだと思いますが、分業体制が進むことで明確になっているのかもしれません。
分業化と専門特化、これらを管理するシステムを導入することでかなりの効率化を図れることは間違いありません。
しかしながら、本当にそれだけで生産性は高まるのでしょうか。
分業化の負の側面
分業化することで専門性を高め効率化し、生産性の最大化を実現する。
理論上はこれだけでうまくいくはずです。
しかしながら、実際に業務を遂行するのは人間であることを忘れてはいけません!
営業活動の分業化、チームを分けることにより、組織そのものが分断されるケースがあります。
同じ営業部に所属していても、それぞれの目指すべき目標が異なることが大きな要因です。
KPIを明確にすることで各チームの目標、個人の目標にまでブレークダウンを行いやすくなりますが、その一方でこんな話をよく聞きます。
- 各チームが自分たちの目標(KPI)だけを追いかけていてシナジーがない。
- 各チームが相互に足の引っ張り合いをしている。
数値的なKPI等は業績評価を行いやすいが、そこだけで評価をすると人はその目標達成を最優先で動きます。
それだけではなく、チームを分けることでお互いにいがみ合うような敵対関係になってしまうことも。
例えば…
- マーケティングチームが質の良い顧客リストを獲得していない
- インサイドセールスが確度の高い商談をつくっていないからだ
- 営業が期待値調整をうまくしていないからだ
- カスタマーサクセスがしっかりと成果につなげることができていないからだ
自分たちの業績目標達成だけに焦点をしぼることで、自分たちが評価されないのはその前プロセスを担当するチームのせいだというようなことだ。
これはそこにいる人たちが悪いわけではなく、人間は本能的にそのように心理的に動いてしまうということを認識したほうが良いでしょう。
協働しなければならない目標
プロセスの数値目標であるKPIに縛られ過ぎ、狭い視点だけで評価することは避けたほうが良いです。
一方でKPIにつながるプロセスはしっかりと可視化して共有することが大切です。お互いに感謝し、さらに協働が生まれやすくなるでしょう。
営業担当が失注した顧客は、その後は改めてマーケティング部門が育成し、インサイドセールス部門が再提案の機会をうかがうでしょう。
また、納品後のカスタマーサクセス部門が丁寧に対応を行うことで、クロスセルやアップセルにつながったり、顧客のご紹介にもつながるでしょう。
つまり、チームが果たすべき役割は、どれが欠けても売り上げの最大化につながらないということです。
各部門の役割が共通の目標のために重要であることを全員が理解することです。
そして、営業組織の各役割ごとのチーム目標の上位には「売上」目標があります。
その売上が最大化するということが当然ながら共通の目標になるはずです。
組織全体の目標をしっかりと明確化し、プロセスを共有する。
カンタンのようで、できていないから組織が分断されて、対立を生み、信頼関係をつくれません。
できていない組織は生産性は落ち、下手をすれば足の引っ張り合いなんてことも。
最近では営業部門やマーケティング部門やカスタマー部門を統括して売上責任を持つCheaf Revenue Officer(CRO)を設置する会社も生まれてきています。その背景には売り上げの最大化をはかるための組織づくりに対する課題感があるのだと思います。
協働をする組織づくりを行い、売上の最大化=生産性向上を目指していきたいですね!