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集合研修を「コスト」ではなく「投資」にするためのカギとは?

早くも、企業のなかでは来年度の研修計画が検討される時期になりました。

企業の教育研修担当者は、少しでも従業員に学んで成長してもらいたい!、こんなスキル、こんな能力・こんな意識を高めてもらいたい!、と、自社の人材育成課題とにらめっこしながら、額に汗して企画されていることと思います。
また、忙しい中で集合研修の時間を捻出してもらうのも一苦労!部門ごとに異なる繁忙期を勘案したり、現場の担当者との調整もいろいろと気を遣うところでしょう。

ところが、そんな想いでようやく実施しても、「研修を受けても、何も変わらなかった」「最初はやる気だったけど、1週間も経てば元通り」「勉強にはなったけど、仕事では活用できていない」「講師の話は面白かったけど、それしか印象に残っていない」など、担当者の苦労が報われない残念な言葉が浴びせられることもあるとお聞きします。

集合研修に対する取り組みへの満足度において、取り組みが不十分なものとして課題となっているトップ3は以下のようになっています(「人材開発実態調査2017」リクルートマネジメントソリューションズ社・従業員300名以上の企業対象)

  1. 学習によって、どのような行動変化や業績改善が起こったかを測定する機会や仕組み(不十分・やや不十分の合計…94.5%)
  2. 学習の成果を何によって測定、評価するかを、事前に明らかにすること(同 90.0%)
  3. 参加者が、学習したことを思い出すための機会や仕組み(同 84.1%)

学習したことの定着化と効果の測定に課題を抱えている企業が、思いのほか多いことが見て取れます。

学習の定着化はどうすれば高められる?

一般的に、単に講義を聴いたり書籍を読んだりするなどの受動的な学びでは、学習の定着率は5~10%程度と言われています。一方で、グループでディスカッションをしたり、自らが実際に体験したり、さらには誰かに教えたりするといった能動的な学びを通すことで、定着率は格段に向上することがわかっています。
https://habi-do.com/blog/learning-pyramid/
昨今、多拠点化や繁忙により集合研修が実施しづらくなったことを背景に、代替として取り入れられることの多くなった通信教育やE-learningも、知識獲得には効果的ではあるものの受動的な学びになりやすい点は留意が必要かもしれません。実際に同調査では、人材開発手法として取り入れたことがあり効果の満足度が高いものは「ケーススタディ」(40.5%)で、逆に取り入れたことがあるが効果の満足度が低いものは、「通信教育」(47.3%)、「E-learning」(40.9%)となっています。

集合研修においては、単に講義だけではなく、ワークシートを書かせて自分で考えさせたり、隣の人やグループでディスカッションさせたりと受講生の能動性を引き出すような工夫も効果的でしょう。

とは言え、研修の場は「OFF-JT」。実際の仕事の場において学んだことを活かして行動し、繰り返し実践してこそはじめて本当の意味で学んだことが定着したと言えます。以下のようなプロセスも集合研修時に設計しておくことで、より受講者が実行しやすい=研修効果を高めることができるでしょう。

  1. 研修で学んだことをどう現場の業務に活かすのか?について、より具体的に行動ベースの「やること」として落とし込む時間を設ける。
  2. 実際に実行できたかをショートタームで振り返る機会を設ける(半年後では忘れてしまっている可能性大。できれば、研修終了翌日から振り返りを行うと忘却曲線は最も緩やかに。)。
  3. 研修で学んだことやこれから実行する「やること」について、上司や同僚に報告することで、職場で「やること」を試しやすい環境を整える(今までとは異なる新しいチャレンジをする際には、失敗も付きもの。周りのサポートも重要です。)。
  4. 実際に実践してみてはじめて感じる難しさや試行錯誤(成功・失敗)について、受講者どうしが互いに共有し合える場を設ける。

研修の効果を測るには?

相応の時間と費用をかけて実施した研修の効果を測りたいというのは、研修担当者にとっても、また経営者にとっても当然のことでしょう。効果測定が重視されるようになってきた理由として、米国のウィスコンシン大学名誉教授ドナルド・カークパトリックは、次の5点を挙げています。

  1. プログラムを継続するのか、やめるのかを判定するため
  2. 目的に合っているかを判定するため
  3. どのように改善できるかを知るため
  4. プログラムの予算を正当化するため
  5. このプログラムが必要であることを証明するため

また、同氏は1975年に研修の効果測定方法として「カークパトリックモデル」というものを提唱しています。
研修効果について測定レベルを4段階で評価する理論で、レベル1からレベル4の4段階(Reactions:反応/Learning:学習/Behavior:行動/Results:結果)で測定が可能であるとしています。

レベル1 リアクション(反応)
「研修は面白かったか?」研修後のアンケート等で、受講者の理解度・満足度を測定する。

レベル2 ラーニング(学習)
「知識やスキルが理解されたか?」研修で学習した内容について、理解度テストや検定試験、実技試験で習得度合いを測定する。

レベル3 ビヘイビア(行動)
「学習内容を実行したか?」研修後に日常業務でどのような行動変容が現われたかを評価する。

レベル4 リザルト(結果)
「プロセスパフォーマンスが変わったか?」その研修を実施したことで、どれだけ売上を上げたのか、利益を得たかを見る。

全ての研修において、レベル1~4の全てが必要であるかというと、そうではないケースもあるでしょう。しかし全ての研修がレベル1~2までしか測定できていないとするならば、やはり見直しが必要かもしれません。特に、知識獲得が目的ではない研修の場合は、前述の学習の定着効果を高めることもふまえて、まずはレベル3までの効果測定を目指したいところです。

効果測定を適切に行い研修をコストではなく投資として捉えられるものにすることが、さらなる人材育成・人材開発の基盤となるでしょう。ますます深まる人材難の時代。既存の従業員への教育投資は企業の戦略そのものになってきています。研修をより効果的なものにするために、「学習の定着化」「効果の測定」を改めて見直してみてはいかがでしょうか。

舞田美和

舞田美和

Be&Doカスタマーサクセス担当/ CDAキャリアカウンセラー。人材サービス・教育研修会社の企画営業として多くの人材育成支援に携わる。その後、人事・採用、大学の新設・運営業務の後、現職。Be&Doのカスタマーサクセス担当として、イキイキとした組織・人材づくりの提案や運用支援を行っている。

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執筆者プロフィール

舞田美和

舞田美和

Be&Doカスタマーサクセス担当/ CDAキャリアカウンセラー。人材サービス・教育研修会社の企画営業として多くの人材育成支援に携わる。その後、人事・採用、大学の新設・運営業務の後、現職。Be&Doのカスタマーサクセス担当として、イキイキとした組織・人材づくりの提案や運用支援を行っている。

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