コラム

今だからこそ知っておきたい!エンゲージメントと心理的資本の違いとは?

社内の組織改善のためだけではなく、社内外問わず社会に対して組織の生産性や成長性の根拠の指標として従業員の「エンゲージメント(Engagement)」が改めて注目を集めています。(エンゲイジメントと表記されることもあります)

一方で、「令和元年版 労働経済白書(厚生労働省)」では、心理的資本というキーワードが用いられました。その中で「働きがい(ワーク・エンゲージメント)」を促進するための要因となる個人資源が心理的資本であると示されました。その開発の重要性が指摘されています。

そこで、今回は「エンゲージメント」と「心理的資本」の違いと関係性についてお伝えしながら、その開発の重要性と方法についても触れたいと思います。

エンゲージメントと心理的資本の決定的違い

結論から言うと、エンゲージメントは「表出した態度」「状態」を表し、心理的資本はその要因となる個人の「資源・資産・資質」のようなものだとご認識ください。

組織文化の先行要因、個人の心理的資本

上記の図は矢印→の方向に影響を与えるものです。

心理的資本はいうなれば「やりとげる自信」「行動に影響を与える心のエネルギー源でありエンジン」です。容易には変えられない個人の特性もゼロではありませんが、特徴は開発することができるという点です。心理的資本は鍛えることができるということです。

エンゲージメントは状態や態度です。良い状態であれば、熱意をもってポジティブに仕事に励んでいますし、その逆に悪い状態なら不平や不満や批判があるということです。エンゲージメントは、組織文化や業績状況などの先行要因と共に、個人の心理的資本の高低によっても変化しますし、本人の意思にも影響を与えます。その結果として業績などの成果にもやはり影響を与えるのです。

業績を高める、成果をUPするために「エンゲージメントを高める」ならどうすれば良いでしょうか。

組織文化そのものを良くすることは勿論大切ですが、その文化をつくっていくのは一人一人の組織の一員である個人ということです。

例えば

  • 「仕事の裁量権」をどこまで認めるか。
  • 「チャレンジする機会」をどれだけ用意できるか。
  • 「上司からのサポート」を良いものにできるか。
  • 「同僚とのチームワーク」をどうやって高めるか。
  • 「適切なフィードバック」をどうやって提供するか。

エンゲージメントに影響を与える要素の例をあげましたが、想像してみてください。

実際に「チャンスをもらえた」「裁量権が増えた」としても、本人に「やりとげる自信」「チャンスを前向きに捉えることができる思考」「失敗を糧とできる担力」みたいなものが無ければ、なかなかうまくいかないのではないでしょうか。

「上司からのサポート」「フィードバック」が高頻度であったとしても、細かく管理するだけだったり、部下の強みに気づくことができず認めることもできずネガティブな指摘ばかりする上司だったらサポートになるでしょうか?

「同僚とのチームワーク」をとりたくとも、周囲に感謝できない人や、他者の揚げ足取りばかりする人、評論ばかりして行動しない人、建設的なコミュニケーションができない人であふれていたらどうでしょうか。

これらは心理的資本の状態に大きく起因しています。

個人の心理的資本を無視してしまうと、エンゲージメントを高めるために1on1ミーティングを組織でやろう!とか、皆がチャレンジできる制度を取り入れよう!評価をフェアにしよう!と取り組んでも、なかなかうまくいかない、なんてことも起こり得るのです。

状態や態度を良くしようと懸命に取り組んでも、そもそもの個人の資源を開発しなければ効果が得づらいということですね。せっかく様々な施策に取り組んでいくなら、泥臭いですがひとりひとりとしっかり向き合うことがとても大切になりそうです。

どうやって向き合うと良いのか。後半でお伝えするとして、その前にエンゲージメントについて、もう少し具体的にしたいと思います。

従業員のエンゲージメントについて知る

従業員のエンゲージメントと言っても、厳密には2つの考え方があります。

一般的によく「従業員エンゲージメント(Employee egagement」と呼ばれるのは、従業員が職場に対して抱く愛着度や信頼度、仕事に対する情熱度、待遇に対する満足度、経営者の考え方に対する共感度などを測る指標として用いられます。誤解を恐れずに表現するならば「愛社精神」に近いものかもしれません。(もとは商用の調査から生まれた指標のようです。)

また学術的に裏付けされたものとして「ワーク・エンゲージメント(Work engagement)」と表現されるものがあります。ポジティブで達成感に満ちた仕事に関連ある心の状態を示すものです。熱意・没頭・活力の状態をみることを特徴としています。調査研究や論文もしっかり存在するので、最近ではこちらの指標を用いて社内の調査をしていることが多いように思います。こちらは職場におけるウェルビーイング度(イキイキと働いているか)を表していると言えるでしょう。

いずれにしても、共通点としては様々な業績指標との相関があるということです。サービスの品質、顧客満足度、営業成果、離職率、事故率など…様々な関連性が指摘されています。

今回は厚生労働省でも用いられた「ワーク・エンゲージメント」の考え方を軸に、もう少し正体について解説してみたいと思います。

ワークエンゲージメントの解説をするマトリクス図

ワーク・エンゲージメントが高い状態とは、仕事に対して能動的に積極的かつ活発に取り組むことができていて、職務に前向きに取り組むことができている状態です。当然ながら生産性も高く、自ずと成果もついてくるでしょう。

ではワーカホリズムはどういう状態でしょうか。ぱっと見では、活発に一生懸命に仕事に取り組んでいるのですが、職務に対しては受動的。つまり「やらされ感」「義務感」で取り組んでいる状態です。”やらなければならない”という負の使命感によるものなので、決して仕事を面白い・楽しいとは思えていない可能性が高いでしょう。仕事の虫、仕事中毒…決してポジティブな状態ではないです。放っておいてはダメ、ゼッタイです。

3つ目はリラックスの状態。仕事に対して決して文句はなく、むしろ「楽ができて良いな」「がんばらなくても大丈夫」「待遇や福利厚生もいいし」のような感じ。ある部分では従業員の満足度は高いのかもしれません。しかしながら業務の生産性としては低空飛行。最低限のことはやるかもしれませんが、積極的に挑戦したり、自ら進んで問題解決のために動くことは少ないかもしれません。

4つ目にバーンアウトの状態。一言で表すなら「灰になっちまった」状態と言えるでしょう。悪いストレスが蓄積してしまっているかもしれません。がんばりたくても頑張れない、メンタル不調に陥ってしまいかねないのです。2つ目にとりあげたワーカホリズムの状態が長期にわたると、バーンアウトになってしまいかねません。無茶な業務量や上司からのパワハラ的命令も原因になりそう。または、やらなきゃいけない、完璧にしなきゃいけない、と自ら頑張り過ぎてしまう場合も要注意です。またはリラックス状態の人に、挑戦的な課題を急に与えても簡単にバーンアウトしてしまう…かもしれません。バーンアウトは会社にとっても、本人にとっても最も避けたい状態です。

では、ワーク・エンゲージメントをどうつくっていけば良いでしょうか。

ワーク・エンゲージメントのもとになる心理的資本

熱意をもってその仕事に没頭できていて活力のある様子がワーク・エンゲージメントが高い状態です。

熱意を持って能動的に目標に向かって取り組んでいくためには、その人自身が自分のWill=志・意志を認識して強く意識できるかどうかが大切でしょう。会社・組織の目指す目的や方向性と一致していたり重なる部分があるなら、それに越したことはありません。よりいっそう貢献意欲が高まるでしょう。

活力がある状態は、具体的なアクションをしっかりと実行できている状態です。そのためにはマイルストーンとなる目標を立てられているかどうか。行動を起こすために、何をすれば良いか。こういったことを明確化していくことが大切です。そして、小さくても良いので実際に行動することで、前進できている状態をつくる。そうすることで達成感や貢献実感も湧いてきます。

成長実感や達成感をより得ようと思えば、簡単に達成できる目標を立てても効果的ではありません。少し背伸びをした、それでいて達成可能な目標を立てることです。

とはいえ挑戦したり行動したりすると、うまくいかないこともあります。うまくいかなかった時、ただ落ち込んだり反省するのではなく、その事実をどう肯定的に捉えることができるか。自分の強みを知り、どう活かして乗り切るか考えられるか。うまく内省することが大切です。

周囲との信頼関係も、とても重要。困ったときに相談できる頼れる人がいるかどうか。励まし合ったり、切磋琢磨できる共通の目標を持つ人の存在がいるかどうか。自分を認めてくれて、良いフィードバックをもらえる人がいるかどうか。こういった人たちの存在に気づき、感謝できるかどうか。

このように、自分の意志に気づき、目標を適切に設定し、行動を起こし、周囲に感謝し、フィードバックをもらい、事実を肯定的に捉え内省をしっかり行うことで、やりとげる自信がついてきます。そしてワーク・エンゲージメントにつながるのです。

これらは心理的資本を開発する方法の一部であり、大まかな内容に過ぎませんが、自分一人ですべてセルフコントロールできるわけではありません。他者からの関わりやフィードバックを通じて、自分自身のことを知り省みるということも多いからです。

ひとりひとりとしっかり向き合うことがいかに大切か!そして、一朝一夕で得られるものではなく、行動することと内省することの繰り返しで醸成されて、より定着していくものなのです。

私たちは、日々の仕事の中や、マネジメントの中で、心理的資本を開発し、ワーク・エンゲージメントを高めるソリューションを開発提供を行って参ります。ぜひ、お気軽にどんなことができるのかご相談ください。

そして結果として業績や成果につながり、よりいっそうイキイキとした人材と組織が増えることを目指して行動していきます!

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
◆資料内容抜粋 (全16ページ)
・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

研究員リスト

  • 赤澤智貴
  • 小西ちひろ
  • 橋本豊輝
  • 石見 一女
  • Li Zheng
  • 心理的資本研究員
  • 下山美紀
  • 舞田美和
  • 岡本映一
  • 雪丸由香

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