コラム

誤解しがち?1on1ミーティングにまつわるエトセトラ

1on1ミーティングという言葉が、ビジネスの現場でよく聞かれるようになりました。聞いたことがない!という方も、本ブログで知っていただき、やってみようかなと思ってもらえると嬉しいです。

さて、その「1on1ミーティング」ですが、聞くところによると多くの場面で本来の目的を果たすことができていないようです。うまくいっているという話も聞きますが、多くは良くない印象をお持ちで、なんというか悲喜こもごも。

そこでネガティブな印象をお持ちの方も、本来の目的に立ち戻りつつ、1on1ミーティングのやり方を見直すきっかけにしていただきたく思い、誤解しがちな1on1ミーティングにまつわるエトセトラについて記したいと思います。

1on1ミーティングとは?

一般的に上司と部下による1対1で行われる話し合いのことで、マネジメントの手法のひとつです。シリコンバレーで取り組まれていたことで注目を集めました。上司と部下の関係性づくりや、部下のパフォーマンス向上、人材育成のために欠かせない取り組みとなっています。

週1回~月1回程度、マンツーマンで対話する時間をつくるものとされています。

1on1でよく聞かれる声

1on1ミーティングの様子

会社で「1on1ミーティングを実施してください」と指示されて言われるがまま決まったルールにのっとってやっている、そんな場合によく聞かれる声はだいたい共通しています。

例えば以下のような悲しい声もなかなか多く聞きます。

  • 何を話したらよいのか分からない
  • 何か話さないといけないという義務感がつらい
  • ただ業務の進捗を確認する場になっている
  • 目標について詰める(詰められる)場となっている
  • 評価面談が分割されて回数が増えただけ
  • 物理的にも心理的にも負担になっている

一方で、目的を理解し、良い機会と捉えて運用している場合はどうでしょう。うまくいっているケースで聞かれる声は以下のようなものです。

  • 忙しい中でも相談をできる良い機会になっている
  • お互いのことを知る良い時間になっている
  • フィードバックをする(もらえる)時間になっている
  • 進む方向をすり合わせできる機会として貴重だ
  • 目標を具体化できる時間になっている
  • 自信がつき前向きになれる時間になっている

うまくいっている1on1ミーティングと、そうではない1on1ミーティングではこうも当事者の持つ印象も結果も違ってくるものなのです。

うまくいかない場合は、心がまえ以前に1on1ミーティングそのものを誤解して取り組んでいるかもしれません。

1on1ミーティングの目的とメリットを再確認する

本来の1on1ミーティングの目的はマネジメントそのものなんです。成果をより高めるためなのです。

パフォーマンスを高めるためには、率直な相談が遠慮なくできる関係性が必要なこともあります。適切な目標や行動計画が大切なこともあるでしょう。人材育成の機会も大切です。

「1on1はこうあるべきだ」や「このように進めてください」と言われることもあるかもしれません。あまりにもどうしたら良いか分からない状態や、対話を進めることが難しい場合は、型を示すことも必要なのかもしれません。しかしながら、実際には「確実な型や正解は無い」という前提がしっくりきます。

様々なビジネスがありますし、それぞれが取り組んでいる職務内容も異なります。組織の文化、組織の構造もそれぞれです。個々人が置かれている状況も違えば、上司部下の関係性の状態も違います。

ではあえて「1on1ミーティング」実施を職場で取り入れる最大のメリットは何でしょうか。

私はコミュニケーション機会の創出なのだと思います。

それぞれが忙しく仕事をしていて、業務がそれなりに進んでいると問題は無いように思います。しかしながら、ちょっとした違和感から生まれるすれ違いや、確認不足から問題が発生することも多いのではないでしょうか。

業務のやり取りだけをしていることで、関係性を築くことができなかったり、成長につながるフィードバックを伝える(もらえる)機会を逃していないでしょうか。

定期的にコミュニケーションをする機会を設定することで、その不足を補うことができること。それが実は最大のメリットのはずです。

私個人的には、もともと1on1ミーティングのような方法が注目されたのがシリコンバレーだということが興味深く映ります。シリコンバレーの一般的なイメージは、ITを駆使して働き方も最前線。そこで改めてマネジメント手法として注目されたのはなぜか。

おそらくメールやチャットやグループウェアなど、様々なITツールが当たり前のように利用され”社内コミュニケーション”の総量は間違いなく多いでしょう。というより情報流通と言った方が合っているかもしれません。これは昨今の日本国内でも同じ状況です。

そんな中、ビジネスのスピードはより早くなり、かつ情報量が増える中で、業務効率を追い求めるあまりに業務が個別化していたり、パソコンの画面とにらめっこして完結してしまったり。結果として協働のためのチームづくりが疎かになっていないか。

実は一緒に仕事をするメンバーとの関係性の質を高めるコミュニケーションが減っていないでしょうか。何のためにやるのかを確認し合う時間は減っていないでしょうか。率直に意見を伝え合ったり相談できる時間は減っていないでしょうか。相手に感謝を伝えたり、賞賛したり、労ったり、改善点を伝えたりするような時間は減っていないでしょうか。

意思疎通=コミュニケーションが普段から十分にできていますか?

対話の中身は場面次第?

1on1ミーティングの様子

1on1ミーティングがもてはやされていますが、これはひとつのアイデアであってツールのひとつです。万能の魔法の杖では無いということを改めて認識する必要があるでしょう。

目的地を1人で目指さず、メンバーと共に目指すために意思疎通をはかる場にするんだ!」それくらい大きく構えながら、それでいて肩の力を抜きながら、短い時間で良いので対話を重ねていく。そんな心持ちで臨むのはどうでしょうか。

忙しいのに…と言って、どちらかが嫌々やっているとしたら、何のための時間かがうまく認識できていないんでしょう。いや、それ以前にこうした意思疎通の大切さを認識できていないだけかもしれません。

もしお互いのことをまだよく知らない状態なら、雑談を交えながら相手のことを知り、自分のことを知ってもらう場にすると良いです。

その人がどんなことが好きで、何が得意で、何が不得手で、どうしたいと思っているのか、配慮が必要なことがあるのか、今がんばっていることは何なのか。そんなことをどれだけ認識できているかは”関係性の質”を測るうえで基準になるかもしれません。知るだけではなく、本人が気づいていない強みを認識してもらうような対話も重要です。

相手が何か問題を抱えていたり、目標の達成に悩んでいたり、相談があるようなら、視点や考え方を見直すきっかけになる質問をするのも良いです。そして行動につなげていけるような後押しをする言葉をかけられると尚良いですよね。

とはいえ。まずは型から入ったり、できるだけうまく進められる方法に沿って進めたいこともあると思います。下記のリンク先の資料が参考になれば幸いです。

最高の1on1ミーティングの在り方とは?

オンラインで1on1ミーティングしている様子

理想を言えば、あえて1on1ミーティングという場を設定しなくとも、遠慮なくお互いに相談したり、ちょっとした情報共有や、時には雑談なども行われている状態が望ましいのは間違いありません。お互い配慮は必要だとしても、一緒に目標を目指しているのであれば遠慮は必要ないはずなのですから。

定期的なものだけではなく、日ごろから何かあればコミュニケーションをとる。違和感があれば都度確認する。何か伝えたければ、しっかり伝える。これが最高の本来的な1on1ミーティングの在り方だと思います。(つまり、あえて1on1とか言わなくても、意思疎通できている状態ということです)

とはいえ、業務が忙しく物理的に気軽にコミュニケーションする機会に乏しい場合もあります。または勤務する時間や場所の関係もあるかもしれません。部下からすれば、上司が忙しすぎて話しかけるタイミングすら無い、なんてこともしばしばあるのではないでしょうか。

そういった意味で、半ば強制的にコミュニケーション機会を創出しようということで組織的に1on1ミーティングをやろう!というのは、うなずける話です。

一方で働き方改革や、業務の効率化や合理化に集中するあまり「目的がないと話す必要はない」みたいな風潮があるなんて話を聞くこともあります。これは本末転倒ですよね。むしろ、余裕や余白をつくれるようにしたいものです。それはともかく…

ミーティングは目的ありき!な雰囲気があると、コミュニケーション機会は激減します。特にテレワークが増えたことで、その傾向はより強くなりました。(もちろん仕事内容によっては、業務中は作業に集中しコミュニケーションをとらない方が効果的な職務や場面もありますが)

極論ですが、例えば毎日1分~10分以内くらいで良いので、話をする時間を設ける。話題は何でも良い。雑談でも、仕事の相談でも。頻度が増えても、負担はそれほどでもなくなったりします。話すことがそれほどなければ、ごくごく短く終われば良いだけの話ですし。
私たちは社内でデイリー・ショート・ミーティング(通称DSM)などと呼んで、実践しています。

組織の問題の多くは、コミュニケーション不足から生まれることを考えれば、これもひとつの解決法です。もしうまくいかないなと思ったら、上記のような方法もお試しください。

今回、私自身も社内外含め数多くの1on1ミーティングを実施してきた経験や、様々な会社の課題や事例をうかがってきた中で改めてコラムとしてまとめました。参考になれば嬉しいです。

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
◆資料内容抜粋 (全16ページ)
・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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