コラム

良い採用は良い組織づくりと両輪で進めることが今こそ必要である理由

「組織開発は大事だと思っているけれども、とはいえ現場が回っていない。喫緊の課題として人材採用を優先して着手する必要がある。でもこのままで本当に良いのだろうか・・・」と悩みを抱える人事責任者さまは多いのではないでしょうか?

卵(採用)が先か鶏(組織開発)が先か。筆者は「採用に力を入れること」は「組織開発に力を入れること」にも直結しており、さらにその傾向は採用市場の変化からより強くなっていると感じています。つまり、「良質な卵(新しい社員)がほしいなら、ニワトリ(組織)を育てよ」ということです。

筆者は前職では採用支援に携わっていました。その当時の経験も交えて、採用と組織開発が両輪であると思う理由を述べます。

魅力の発信が表面的では訴求できない

人口減少、恒常的な人不足による”売り手市場”側である求職者は、応募企業を慎重に選り好みできる状況になっています。よって、応募や面接の前後には企業ウェブサイトを確認することが一般的となりました。仕事内容や条件を知れれば良いという求職者もおられますが、優秀な方ほどプラスαの深い情報を知りたいとアクションをするのではと筆者は思います。

この流れを受けて、2017年頃から多くの会社が採用を意識したウェブサイト(以下、採用サイト)の作成、作り込みを競うようになりました。鮮やかなデザインや、豊富な写真、社員インタビュー記事、採用担当者のブログなどです。

採用サイト構築の黎明期では先に作ったもん勝ちで、キレイな採用サイトがあること自体が武器でした。ただ、昨今では求職者にとって採用サイトの存在が当たり前となり、今問われているのはサイトの中身の質です。求職者が「自社のビジョンに共感してくれるか?」「会社風土や働く社員にポジティブな印象を抱いてくれるか?」など、組織の魅力をアピールする必要性が増しています。

アピール強化のためには、魅力の言語化が必須です。「アットホームな社風」「成長できる環境」「未経験でもメンバーがサポート」のような表面的な表現では伝わらないどころか、怪しさすら感じるかも知れませんね。魅力的な組織であれば、魅力をしっかり言語化し、アピールすることが可能です。しかし、そもそも組織の魅力がなかったら・・・?見せかけや誇張した表現を書くこともできますが(ダメだけど)、表面的な工夫では返って噓っぽさがにじみ出るかも知れません。採用後のギャップが拡大するというジレンマにも陥るでしょう。一部の魅力的で優秀な社員だけにインタビューする手もありますが、ギャップを生むのは同様です。(優秀な人に限って転職を選び、せっかくの記事が段々と減ってくる問題も!?)

口コミサイトの普及で、本質が問われる流れが加速

採用サイト普及の流れにやや遅れて、近年の求職者の企業のリアルを知りたいというニーズの高まりから、企業の口コミサイトへの注目が増しています。2019年にエン転職が実施した調査結果では、回答者の89.1%が「転職活動で企業の口コミを見る」と回答しているそうです。口コミサイトの運営会社も、口コミへの信頼性を増すために努力しており、いよいよ雇用市場の透明性が高まっています。社員や元社員が匿名で「組織文化/働きがい/成長/入社後のギャップ」などについて本音を書き込んでいます。

優秀な方ほどその会社の募集要項プラスαの情報を知るアクションをすると仮定するならば、もはや企業としては組織開発に目を背けられない状況になっていると言えそうです。

ここまでをまとめると、良い組織でないことは、優秀な求職者に対する魅力の発信が不十分となり、さらに口コミサイトでも大きく不利になってしまうのです。

採用しても辞めてしまうジレンマ

「組織開発に力を入れること」が後回しになっている企業が、仮に人材をうまく採用できたとして、その後どのようなことが考え得るでしょうか。もちろん全てのケースではありませんが、しばらくして採用した社員が離職してしまったり、あるいは入社時には持ち合わせていたはずの意欲やエンゲージメントが徐々に低下してしまうことが考えられます。せっかくの採用者が、このようなネガティブな状態に至ってしまう理由はなんでしょうか?エン転職(エンジャパン株式会社)による以下の調査結果を見てみましょう。

(エン転職)退職理由のホンネと建前[2022年版]より★「退職を考えたことがある」と回答した人の、そう思うに至ったきっかけ
1位:やりがい・達成感を感じない
2位:給与が低かった
3位:企業の将来性に疑問を感じた
4位:人間関係が悪かった
5位:残業・休日出勤などの拘束時間が長かった
6位:評価・人事制度に不満があった
7位:自分の成長が止まった・成長感がない
8位:社風や風土が合わなかった
9位:業界・企業の将来性が不安だった
10位:やりたい仕事ではなかった

給与以外にも、やりがい/人間関係/評価への不満/成長感/風土などの項目がランクインしていますね。これらはリーダーシップに帰結している項目といえます。リーダーのマネジメントが良い意味でも悪い意味でも社員の職場経験に大きな影響を与えるからです。リーダーのマネジメントが採用定着の鍵と筆者は考えます。

給与を上げれば採用定着は改善するのか?

とはいえ、給与を上げれば良いのでは?という声もありそうです。筆者はその効果は限定的であると考えています。もちろん給与は低いより高い方が嬉しいに決まっていますが、給与の高さだけが前向きに働く要因ではないことは、前述のランキングの通りです。

ある研究では、一定の年収をピークに幸福度は頭打ちになることも明らかになっています。また、戦後復興の時代と比較して、令和時代の多くの日本の社員は生きていくための物質的欲求は一定程度満たされており、物質的欲求以上に承認欲求や自己実現欲求を強く持っているという指摘もあります(マズローの欲求5段階説)。承認欲求や自己実現欲求はお金では買えません。

「最近の若い社員は納得感がないと動かない」という声をよく聞きます。これはまさに、自己実現欲求を叶えられるかどうか?という視点で物事を判断していると説明ができるかも知れません。会社で日々頑張ることが自己実現に繋がると腹落ちできなければ、その会社で頑張る意味を見いだせないのではと思います。

それでも採用に期待してしまうのはなぜか?

それでも、「採用に力を入れること」>「組織開発に力を入れること」という考え方からなかなか離れられないのはなぜでしょう?大きな理由の一つは、「喫緊の人員不足を解決することの優先度が高いから」であると思いますが、他にも心理的な要因が働いているのではと筆者は考えます。以下に採用を優先する理由の仮説を3つ述べます。

▼採用を優先する理由

何だか職場が変わるかも!感

新しい人が職場に加わることで、アイデアやエネルギーがもたらされそう。新人教育による効果もありそう。短期的な変化や改善が起きそう。そんな期待を抱いてしまいそうです。

リーダー採用ならなんとかなる!という希望感

職場のマネジメントに問題があるなら、いっそのこと、メンバー層ではなく優秀なリーダーを採用し、組織やチームに影響力を発揮してもらうほうが理にかなっていると思いませんか?とてもよい方法だと思います。ただし、その期待を背負ったリーダーも、入社後は孤独を感じたり、組織のギャップに苦しんだり、そのリーダーの上司にあたる昔ながらの価値観を持つ社員への対応に苦慮したりすることもありそうです。リーダー採用で組織問題がスムーズに解決するとは限らないことが想像されます。

馴染み深い手段への安心感

採用は多くの組織にとって一般的でなじみ深い手法です。募集→面接→採用→配属というプロセスが組織のノウハウとして定着しています。別の手段をとるリスクより、採用への安心感を優先してしまう心理が働きやすいかも知れません。逆に、組織開発は大変そうで時間がかかりそうですよね。よって、組織開発への着手は後回しにしがちです。

組織開発は採用への好循環を生む

ここまで述べたように、採用と組織開発は両輪です。良質な卵(新しい社員)をほしいなら、ニワトリ(組織)を育てることに、本気で着手する必要があります。組織開発の鍵を握る職場のリーダーがメンバーの内発的なモチベーションを喚起できるようなリーダーシップの発揮、マネジメントが実践できれば、それが採用サイト等の求職者へ向けたコンテンツ発信の強化に繋がります。社員自身が、知り合いに自分の会社を紹介してくれるかも知れません(いわゆるリファラル採用)。そうすれば優秀な人材を採用できることはもちろん、その後の定着も大いに期待できます。そして職場は人員に余裕を持つことができ、さらなるリーダーシップ発揮や職場活性化を生みます。組織開発は、このような採用への好循環を生むことができるのです。

さいごに:企業はリーダーがグッドモチベーターとなる支援を!

先日ある海外経験豊富な人事部門ご担当の方とお話しましたが、このように仰っていました。「海外では人材の流動化が激しく、すぐに転職してしまう。職場のリーダーはグッドモチベーターじゃないと通用しないという価値観が根付いている。」

日本でも雇用流動化の流れは加速しています。すでに多くの企業でグッドモチベーターなリーダーを必要としています。まさに今がリーダーシップを変革すべき過渡期ではないでしょうか。しかし、現職のリーダー(40代以上と仮定)は、「自分で学んでよ」という環境でこれまで育てられてきたという方が多いです。経験から根付いた価値観をアップデートするのは簡単ではありません。リーダーの役割やハラスメント対策を学ぶインプット中心の管理職研修だけでは、「なるほど」と表面的には理解できても、行動を変容することは難しいのです。

そこでBe&Doでは、企業のリーダーに対して、リーダーが本気で自分自身に向き合い、行動変容を起こしてもらうためのマンツーマンのトレーニングプログラム「CG1」を通じたご支援を行っています。その人らしいリーダーシップの気づきと行動を促す「ガイディング」の手法を用いた面談者(=ガイド)が、リーダーに6か月間伴走します。ガイドとの対話によって、実際の職場課題やご本人の想いを伺いながら進める形式だからこそ、行動変容を促すことができます。詳細は、以下のリンクをご覧ください。

採用課題の根本として、その組織自体を良くすることも大切なんだという認識が広がることを筆者は願っています!

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
◆資料内容抜粋 (全16ページ)
・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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