コラム

地方における人手不足の深刻化~人材定着のカギは「エンゲージメント」~

東京都企業の人手不足が過去最高というニュースがテレビや新聞で報道されています。この人手不足は東京だけでなく地方でも深刻に。
人手不足のこの状況の中でも生産性を維持・向上させていくには何が必要でしょうか。

東京都企業の人手不足が過去最高50.8% 地方においても人手不足が深刻に

帝国データバンクは2018年3月6日に東京都の企業の人手不足に対する動向調査の結果を発表。
現在の従業員の過不足状況を調べたところ、正社員が「不足」していると答えた企業は50.8%。
2006年5月の調査開始以来、最高値を更新。
3カ月前(2017年10月)から1.3ポイント増、1年前(2017年1月)から5.3ポイント増加し、同社は「企業の人手不足感は一段と広がっている」と分析。

大都市だけでなく、地方でも人手不足が深刻になっています。

「統計でみる都道府県のすがた2017」によると例えば福井県の完全失業率(完全失業者数/労働力人口)は42位。全国の平均を下回ります。

しかし、福井県月例統計指標(平成30年3月)によると 有効求人倍率(季節調整値、パートを含む)(1月)は2.00倍。
全国の有効求人倍率は1.59倍に比べ大変高い倍率となっています。
東京都2.08倍に次ぎ全国2位の高さです。

福井商工会議所が会員企業に行った「企業の人材定着に関する調査」によると、64.5%が労働力不足と回答(2017年6月調査)。
労働市場の売り手市場化のほか、団塊の世代の定年退職で、人材確保に苦しむ企業の姿がうかがえます。

Uターンの受け入れを増やそうとする取り組みはあるものの、地方はそもそも地元大学からの新卒者の採用が主であるといったことも影響していると思います。
しかしやはり、少子高齢化に伴う、労働力の中核となる生産年齢人口の減少、この余波が大都市だけでなく地方へも深刻な状況を生み出していることがよくわかります。

足りない分の人材の確保への努力は続けるのはもちろんですが、労働力人口が減っている昨今、特に中小企業における人材確保は簡単なものではありません。
採用に加え、そもそも今いる既存の従業員に目を向けることが大切です。人材の定着に向けての施策が必要となります。

人材の定着 カギは「エンゲージメント」

従業員数が減る中でも生産性を維持するためには、機械化・IT導入への投資、また外注を使うといった業務の見直しが必要となります。
それに加え、従業員エンゲージメントの向上が重要となります。
エンゲージメントの向上の重要性がわかるデータがあります。タワーズワトソン『Global Workforce Study』の調査によると、エンゲージメントの低い状態の企業に比べ、「持続可能なエンゲージメント」のレベルの高い企業は1年後の業績(営業利益率)の伸びが3倍という結果が出ています。

ビジネスを成長させるにあたり、経営者にとって、従業員が有している「自発的な貢献意欲(エンゲージメント)」を高く維持することは非常に重要である。「持続可能なエンゲージメント」とは、最近では日本でも徐々に浸透してきているエンゲージメントの概念に加え、「生産的な職場環境」、「健全な就労状態」の二つの要素が加味されたものである。タワーズワトソンは、従業員のエンゲージメントにこの二つの要素が加味された企業では、エンゲージメントが低い状態の企業に比べ、業績(営業利益率)の伸びは3倍にもなったと、そのトラッキング結果を示している。
(タワーズワトソン『Global Workforce Study』の調査より引用)

エンゲージメントとは、従業員の業務内容や職場環境、人間関係などに対する満足度のことをいう「従業員満足度」と呼ばれるES(=Employee Satisfaction)とは異なります。

「従業員のエンゲージメント」は、“会社や事業の方向性”を物差しとして従業員の現状を把握する概念で、会社の成長に対して従業員が有している自発的な貢献意欲の度合いを示すものである。具体的には、(1)会社の方向性に対する理解(組織の目指す方向性を理解しそれが正しいと信じている)、(2)帰属意識(組織に対して帰属意識や誇り・愛着の気持ちを持っている)、そして(3)行動意欲(組織の成功のため、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある)の3点で構成される。
(タワーズワトソン『Global Workforce Study』の調査より引用)

(1)会社の方向性に対する理解(組織の目指す方向性を理解しそれが正しいと信じている)

組織は目標や理念をもっています。しかし、会社の方針・方向性を現場の社員が理解し、共感することが大切です。社員一人ひとりに会社のミッションの理解があれば、その仕事に対する理解が深まります。一見単純でつまらない、そう思えるような作業もプロセスの中で重要であると思えるかどうか、仕事への意欲や成果が大きく変わるのは明白です。
会社の方向そして社員の方向が同じ方向を向いていることが大切です。

(2)帰属意識(組織に対して帰属意識や誇り・愛着の気持ちを持っている)

帰属意識は「愛着」とも言い換えられます。
会社はチームであり組織です。自分以外の何かや誰かのために自分の力を使う時、モチベーションはあがります。また成長へも繋がります。
自分が属しているものに自分の力を使う。会社のことを自分事ととらえていく。そんな帰属意識が会社の成長には欠かせません。

(3)行動意欲(組織の成功のため、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある)

何とかしたい、変えていきたい気持ちがあっても、行動が伴わなければ会社は存続できません。
会社を良くしたい・会社に貢献したいという実践的な想い。そういった帰属意識は、その会社の存続や拡大のために自ら行動するという気持ちにつながります。

エンゲージメント、従業員一人一人の貢献意欲を高めていかなければ、企業の成長はもちろん、存続自体も危ぶまれる時代です。
東京も地方もしかり、人材の定着そして生産性向上のキーワードは「エンゲージメント」です。

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