「マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力」にて触れられている「インナーワークライフ」という言葉をご存知でしょうか。
インナーワークライフ(個人的職務体験)とは:
感情、認識、モチベーションの3つの要素の相互作用で、業務を通じて人の内面で起こっている反応のこと。
機械やAIと異なり、人間的な部分なのです。喜怒哀楽の感情の状態と、同じ仕事でもそのことをどう本人が認識するかということと、都度変化するモチベーション。この相互作用を良い状態で高めることが、個人のパフォーマンスを高めることにつながり、結果として組織の成果にもつながっているという研究結果が出ています。
Googleのように成功を収めている企業は、最高の従業員への待遇や福利厚生を提供することではなく、豊かな“インナーワークライフ(個人的職務体験)”を生み出す環境をつくることで成果を生み続けています。それは、ポジティブな感情、強い内発的モチベーション、仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識を育てることにつながります。
ではどのように良いインナーワークライフを生み出す環境をつくることができるのか。
それは現場のマネージャーの関わり方がカギとなりそうです。
部下の目標の進捗をサポートできていますか?
社内に数名いるかいないかの“スーパースター”のようなハイパフォーマーは、放っておいても自ら「豊かなインナーワークライフ」が生まれている状態かもしれません。しかしながら、おそらく多くの従業員はそのようにはいきません。
マネージャーが「チームや部下にとってやりがいのある仕事が、毎日少しでも進捗するように支援する」ことが大切だと冒頭で紹介した書籍の著者、AmabileとKramerは結論付けています。
実際にスポーツコーチングの分野では、オリンピックで金メダルを獲得したコーチの特徴には、勝利に重きを置かず、選手の日々の成長、小さな成功を重視しているという最新研究があるそうです。
監訳者のインタビューによれば、
オムロンヘルスケア株式会社の営業課長からはこんな話を聞いた。「営業は知識とスキルが全てだと思っていた。だから、メンバー自身がワクワクする小さな目標を立てられるよう支援して、日々それが達成されたかどうかを一緒に振り返った。すると、気づいたんです。数字ばかりを追いかけていた時よりも遥かに良い成果がでていることに」マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力より
これを書いている私自身もそうですが、もしこれを読んでおられる方が部下をお持ちの場合に、振り返ってみてください。
- メンバーがワクワクする小さな目標を立てられているかどうか
- 日々それが達成できているかどうかを一緒に振り返っているか
わくわくできる目標とは、それを達成すると嬉しくなる目標、著しく達成感を感じる目標、成長につながる目標、他者に影響が生まれる目標など、いろいろと考えられます。つまり挑戦的な目標であるということです。
ただ、それだけではだめで「小さな目標」にまでブレークダウン(細分化)する必要があるのです。
挑戦的な目標は、挑戦的であるがゆえ、そう簡単に実現できるものではありません。
では、毎日、日常的に小さな達成を積み重ね、その挑戦的な目標に対して「進捗」しているということが実感できなければいけません。
マネージャーが部下と行うコミュニケーションとして、とても重要なスタートは「わくわくする目標、それを小さな目標に細分化することを支援する・一緒に考える」ことからかもしれませんね。
そして、日々それが達成できているかどうか(つまり進捗しているかどうか)を一緒にふりかえること。
毎日ミーティングをすることが難しければ、簡単なふりかえりをメンバーにしてもらうと良いでしょう。それを、マネージャーはちゃんと承認することでしょう。必要に応じて、コメントでサポートする。
もちろん、ここで触れたこと以外にも、影響する要素は多々あります。
ただ、日々の目標に向けて進捗をサポートするということは、マネージャーが行うべき最重要なことであり、最も基本的なことであるように感じます。
いくつかの企業の様子を実際にうかがうと、業務としてメンバーに課せられている日報や報告が、上司が読んでくれているかすらわからないという話を、残念ながらよく聞きます。
小さな進捗をちゃんと見ること、ぜひそれを実現できる環境づくり、仕組みづくりをおすすめします。