「社員の主体性を高めたい」「組織のレジリエンス(回復力)を可視化したい」
人的資本経営の重要性が叫ばれる中、多くの企業がこうした「見えない資産」の数値化に挑んでいます。
その中心的な指標として注目されているのが「心理的資本(Psychological Capital)」です。 しかし、いざ測定しようとすると、「目に見えない『心』をどうやって測るのか?」「その数値は本当に信頼できるのか?」という疑問に突き当たります。
結論から言えば、心理的資本は科学的に測定可能です。
本質的な心理的資本の測定方法と経営・現場それぞれの視点からその意義について解説します。
目次
なぜ今、心理的資本の「測定」が必要なのか?
従業員満足度やエンゲージメントを測る企業は増えましたが、なぜ今、あえて「心理的資本」を測定する必要があるのでしょうか。 それは、心理的資本が将来の企業価値を決定づける「先行指標」だからです。
財務諸表に載らない「成長エンジン」を知る
決算書に記載される「売上」や「利益」は、あくまで過去の結果です。一方で、投資家や経営者がいま真に知りたいのは、「この組織は将来も成長し続けられるか?」という未来の可能性です。
組織を車に例えるなら、財務指標は「走行距離(結果)」であり、心理的資本は「エンジンの状態(駆動力)」です。エンジンが焼き付いていては、これ以上距離は伸びません。
心理的資本は、以下のプロセスで業績に寄与することが、提唱者であるルーサンス教授らの研究や、多くのメタ分析で実証されています。
①心理的資本が高い(HEROがある):個人的な心理リソースが充実している。
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②ワーク・エンゲージメントが高まる:「やらされ仕事」ではなく、熱意を持って取り組む(JD-Rモデルによる裏付け)。
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③パフォーマンスが向上する:Aveyら(2011)の研究で、業績との正の相関が証明済み。
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④財務成果につながる:結果として、組織のROI(投資対効果)が向上する。
つまり、現在の心理的資本スコアを測定することは、人的資本から見る企業の将来性を可視化することです。 非財務情報として科学的根拠(エビデンス)を持ってステークホルダーに示すことは、企業の競争優位に直結します。
心理的資本は本当に数値化できるのか?
「心」という曖昧なものを、どうやって定量化するのでしょうか。 心理的資本は、単なる自己啓発用語ではなく、フレッド・ル-サンス教授(ネブラスカ大学)らによって提唱された、明確な定義を持つ学術概念です。
具体的には、以下の4つの要素(HERO)の状態を測定します。
・Hope(希望): 目標達成に向けた「意志」と「経路」を見出す力
・Efficacy(自己効力感): 課題を達成できるという「自信」
・Resilience(レジリエンス): 逆境やトラブルから立ち直る「回復力」
・Optimism(楽観性): 状況を前向きに捉える「柔軟性」
これらは、統計的に検証された質問項目(尺度)を用いることで、スコア化が可能です。 しかし、測定ツール選びには落とし穴があります。
「翻訳しただけ」の尺度では、日本人の心は測れない
世界的な標準尺度(PCQ-24など)は存在しますが、これを単に日本語へ翻訳しただけの診断では、日本企業の現場ではうまく機能しないケースがあります。
欧米と日本では、文化的背景や「働くことへの意識」が異なるからです。 例えば、謙遜を美徳とする日本人は、「私は自信がある」といった直接的な翻訳質問に対して、実態よりもスコアを低くつける傾向(文化的バイアス)があります。
バイアスのかかった物差しで測れば、間違った課題認識しか生まれません。「日本人の心理特性」に合わせて最適化された尺度でなければ、組織の本当の実態を測ることは難しいのです。
心理的資本診断®は国内第一人者・開本浩矢氏による監修
㈱Be&Doが提供するHEROIC診断に搭載されている『心理的資本診断®』は、日本における心理的資本研究を牽引する開本浩矢氏(大阪大学大学院 経済学研究科 教授)の監修を受けて開発されており、「学術的な裏付け(信頼性・妥当性)」と「日本へのローカライズ」を実現しています。
単なる翻訳ではなく、Be&Doが長年積み重ねてきた実践知と開本教授の研究知見による監修を加え、「日本の組織風土」においても妥当性が保たれるよう設問設計が行われています。 だからこそ、人事担当者は「根拠のある数値」として、自信を持って経営層や現場にフィードバックすることができるのです。
現場のモヤモヤを解消する「ミクロ視点」での活用
HEROICによる測定は、経営レベルだけでなく、現場のマネジメント課題の解決にも直結します。 例えば、「従業員満足度は高いはずなのに、なぜか活気がない」というパラドックスに悩んではいないでしょうか?
「満足度」と「心理的資本」の決定的な違い
従来のサーベイ(ES調査など)は、「会社や環境に満足しているか(環境要因)」を問うものでした。 対して心理的資本は、「困難に立ち向かうエネルギーがあるか(人的要因)」を問うものです。
この2軸をクロスさせることで、組織の本当の課題がより浮き彫りになります。
【満足度:高 × 心理的資本:高】= 自律的成長組織
理想的な状態。イノベーションが生まれやすい。
【満足度:高 × 心理的資本:低】= ぬるま湯組織(Comfort Zone)
ここが最も危険です。 居心地は良いが、挑戦しない。「良い人だけど成果が出ない」状態。
対策: 福利厚生などの環境改善ではなく、「Efficacy」や「Hope」を刺激する介入が必要。
組織開発を進める上で、心理的資本のスコアの可視化と心理的資本を高める方法が科学的に認められていることは、大きな武器となります。
「元気がない」を分解し、処方箋を出す
現場でのあるあるですが、「あの人は最近元気がない」という主観的な評価で終わらせず、心理的資本のスコアを見ることで、的確なマネジメントが可能になります。
Hopeが低い部下 → 「目標が高すぎるのかもしれない。スモールステップを一緒に作る(Waypowerの提示)」
Optimismが低い部下 → 「失敗を恐れすぎているかもしれない。学習の機会と捉え直すフィードバックを行う」
このように、精神論ではなく「データの裏付けがある対話・育成」を可能にするのが、心理的資本を可視化する現場メリットの一つです。
測定はゴールではない。「開発」への第一歩
最後に強調したいのは、心理的資本は「開発可能(Developable)」なリソースであるという点です。
性格検査のように「あなたの適性はありません」と判定するためのものではありません。 筋力トレーニングで筋肉が増えるように、心理的資本も「測定 → 気づき → トレーニング(介入)」のサイクルを回すことで、後天的に伸ばすことができます。
心理的資本診断®は、単なる健康診断ではありません。組織の基礎体力を高めるための「トレーニングの起点」として機能します。
まとめ:科学的な「物差し」で、組織の可能性を最大化する
見えない資産を武器に変える第一歩は、それを正しく「見る」ことから始まります。
なんとなくのアンケートではなく、アカデミックな裏付けのある「心理的資本診断®」で、貴社の心理的資本を測定してみませんか? その数値は、経営にとっては「未来の成長証明」となり、現場にとっては「個人の成長の道しるべ」となるはずです。
HEROIC(ヒロイック)診断