多様な働き方、ダイバーシティ、人材の育成をすすめるために
―――メンバーひとりひとりが、”目的意識を持って、自ら考え、 自ら行動する”ことが重要となります。
社員に考える機会を与え、それらの考えを実際の行動に移すことが可能な環境を整えることは、生産性を高めることにつながります。
当事者意識を持って仕事をしている人は、仕事を「自分ごと化」として捉え、責任感を持って仕事をしています。
当事者意識を持つことは、社会人として成長するためにも大切なことです。
またチームのメンバー一人一人が当事者意識を持つことはチーム全体のパフォーマンスの向上にもつながります。
当事者意識とは
当事者意識とは、「自分がその事柄に関係している」、「自分事として捉える」という意識。
「仕事は与えられるもの。自分の仕事ではない。」と思っている人や、「自分は手伝っている。」という考えの人は当事者意識がありません。
仕事が自分事ではなく他人事になっている、部下がやらされ感で仕事をしていると嘆いている管理職の方も多いと思います。
ビジネスの現場で求められる責任感や主体性とも深くかかわっているのが「当事者意識」です。当事者意識が高い人材であれば、主体性を持ち、最後まで責任感をもって業務を全うできます。
当事者意識を持つメンバーでチームを、そして組織を作るにはどうしていけばいいのでしょうか。
自分自身で選択したものに対するコミットメント
ハーバード大学の社会心理学者のエレン・ランガーが行なった有名な実験があります。
Aグループ :ランダムな宝くじの抽選番号を与えます。
Bグループ :自分の好きな番号をカードに書き込むように指示をします。
ランガーは抽選をする前に参加者に宝くじの買戻しを要求。いくらなら譲ってもらえるかを尋ねました。
抽選前の宝くじ、当選は運で決まるため、Aグループ・Bグループどちらも買戻し価格の差はないはずです。
しかし、結果としてBグループは宝くじに高い値段をつけました。自分で番号を記入した人への買い取り額のほうが5倍以上多かったそうです。
「自分で選んだ番号は当たる確率が高い気がするので手放したくない。だから高値で買い取って欲しい。」
という気持ちになったわけです。
店員さんから2つ以上の商品を勧められ、「どれもお客様にお似合いです。いかがいたしましょう?」と問いかけられたことはないでしょうか。並べられた商品を比べ、自分で選んだ商品を手に満足して店を出ます。
宝くじの実験であるよう自分の決めた数字に価値があると感じてしまうこと、買い物で自分で選んだものだと満足できること。
これは心理学で『コントロールの錯覚』と呼ばれるものです。
人は自分で物事を選択した場合には、自分で選択しなかった場合よりも、価値を高く感じ、自分に有利な結果であると考えるのです。自分自身の意志で責任をもって関わろう介入しようとするコミットメントにつながるということです。
一人一人が責任感をもち、業務に取り組んでいけるのが理想的です。
そのために引き出したいのが仕事に対する社員の「当事者意識」です。
当事者意識をうまく引き出している企業~星野リゾート~
一人一人の当事者意識をうまく引き出し、仕事におけるモチベーションにつなげ成果をだしている企業のひとつに「星野リゾート」があります。
人気ホテルランキングでも常に上位にランクイン。行ったことのない人には「一度は行ってみたい」、行ったことのある人には「また絶対行きたい」と思わせる魅力をもつ星野リゾート。
日本全国でホテルやリゾートを運営している星野リゾートは、言いたいことを、言いたいときに、言いたい人に言える「フラットな組織」を作ることで業績不振からの回復に成功しました。
運営に関わるコンセプト、施策、運営などをスタッフ同士が何度も議論しあい考え決定しています。
スタッフ一人一人が考え判断した戦略やルールを用いることで当事者意識を促しています。
経営幹部や経営層、管理職がトップダウン方式で製品やサービスなどについて決めてしまうこと、実際には多いのではないでしょうか。
上から指示を出すことでスピード感を持って成果につなげていく。ひとつの示された方向に従ってリソースが集約されるので、その成果は大きなものになる可能性は高くなります。しかしメンバーはアイディアや意見を発言する事はもちろん考える機会さえ少なくなり、指示をまつ・指示をこなすということなります。
管理職による指示その精度による結果の繰り返しでは、管理職の能力以上にチームや部下が成長することはありません。もちろん部下の育成にもつながりません。
トップダウン式で進めているようでは現場のスタッフは当事者意識を持ちにくく、お客様の問い合わせにもまともに答えられないでしょう。
スタッフの自社製品やサービスへの自信や愛着にもつながりません。
人材・組織を作るために
トップダウン式である限り、社員の当事者意識は引き出せません。
社員が自分自身で考え、経営層や管理職、一般社員が同じレベルで意思決定や情報を共有すること。社員のコミットメントの向上につながります。
そして自分たちが考えた施策や運用を実際に実行し現場で肌で感じることはモチベーション向上へともつながります。
社員一人一人ががイニシアティブを発揮して、新たなビジネスやイノベーションを創造する。
それを実現するために努力することが、上司の、そして組織としての本来の在り方なのだと思います。
社員の受け身体質からの脱却、自らの自主性を大切にした自律的な働き方への転換。
経営を自分事として捉える人材、生産性が高い組織を作るために必要です!