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決して「部下の召使い」ではない、 コミュニティを生むサーバントリーダーシップ

「サーバントリーダーシップ」をご存じでしょうか。
サーバントリーダーシップとは「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考え方です。

「Servant (サーバント)」とは、「使用人」「召使い」という意味。「あれ?リーダーなのに召使い??」と疑問に思った方もが多いかもしれません。

リーダーという言葉から「人の上に立つ」「部下を束ね、自分のリーダーシップで組織を動かす」といったマネジメントを想像される方が多いかと思います。「部下の召使い」などといわれたら、混乱してしまうでしょう。
部下のいいなりになる、ということではありません。目的はあくまでも、組織の活性化と生産性の向上。

今回は、どうして今サーバントリーダーシップが求められているかをご説明します。特に、テレワークのマネジメントに頭を抱えている方、必見です。

かつては重宝された「支配型リーダーシップ」

「リーダー」と「サーバント」ということばの組み合わせに違和感を覚えるのだとしたら、それは、わたしたちが持っている「リーダー」のイメージと真逆だからでしょう。

既存の「リーダー」から思い浮かぶのは、以下のようなものが多いのではないでしょうか。

・上司の命令は絶対
・先陣を切って、引っ張っていく
・部下の意見よりも自分の意見重視。そもそも部下が意見をする機会を与えない
・意思決定はもちろんトップダウン

こういったタイプを「支配型リーダーシップ」と呼びます。こうして見ると、まるで悪代官のような上司が思い浮かぶかもしれませんが、もちろんいいところもあります。それは「決定が早く、大量かつスピーディに生産可能」な指示系統になっていること。そのため、このタイプのリーダーは高度成長期には大いに重宝されました。

サーバントリーダーシップは、支配せず支援する

一方のサーバントリーダーシップは、「支援型リーダー」と呼ばれます。

このような感じでイメージするとわかりやすいでしょう。

・部下の意見を聞き、取りまとめる
・後ろからそっと押す
・インタラクティブ(双方向)でフラットな意思決定

「支配型」では主役はあくまで上司で、部下は命令して動かすものでしたが、「支援型」では、部下を信頼し、お互いに協力しながら、仕事を進めていきます。リーダーだからといって完璧な存在ではありません。それを踏まえた、支援者としての存在がサーバントリーダーシップです。

ふたつのタイプでの一番大きな違いは、部下に対する考え方です。どちらのリーダーシップが正解でどちらが間違っている、というものではありません。しかし、現代社会の消費者ニーズの多様化やさまざまな働き方で選択肢が広がり、ひとりのリーダーではベストな方法を指示できないという課題を抱える企業が増えてきました。サーバントリーダーシップに注目が集まっている理由のひとつでしょう。

10の特徴と、傾聴の大切さ

サーバントリーダーシップには「10の特性」があります。

 

【1】傾聴
相手が何を望んで考えているかを聞き出す。自分自身の考えにも耳を傾ける。
【2】共感
上司の権力を使うのではなく、相手の立場に立ち、相手の気持ちを理解する。
【3】癒やし
相手の現状や心の状態に配慮して、本来の力を取り戻させるようにする。組織内で、欠けている力を補い合えるようにする。
【4】気づき
ものごとをありのままに見ることによって、自分への気づきを得ることができる。
【5】納得
上司の権力を使うのではなく、相手の同意を得られるような説得をする。
【6】概念化
目標や組織のゴールを持ち、それを相手に伝える。
【7】先見力
過去から、現在の業務の将来を予測する。
【8】執事役
自分の利益よりも、相手の成長を支援し、一歩引くことを心得ている。
【9】人々の成長への関与
一人ひとりが秘めている力や価値、可能性を信じ、成長に深く関わる。
【10】コミュニティづくり
愛情と癒やしで満ちていて、人々が大きく成長できるコミュニティをつくり出す。

この中で一番重要視されているのは「傾聴」です。部下の話を聞くことで、顧客や市場のささいな変化を素早く察知。早めに方向修正ができます。上司が話を聞く姿勢でいると部下は発言しやすくなり、一人ひとりから多様な意見が出て、おのずとチーム全体の力が向上します。結果、働きやすく成長できる環境が構築され、自然とコミュニティが形成されていきます。

変化の激しい時代、求められているのは、支配ではなく支援ではないでしょうか。

サーバントリーダーシップの4つのメリット

サーバントリーダーシップにはどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは4つあげてみたいと思います。

メリット1:チームワークが高まる

一人ひとりの意見が尊重されるので、コミュニケーションが円滑になり、情報共有もしやすくなり、メンバー間に壁がなくなります。

メリット2:それぞれが主体性を持ち、成長できる

一人ひとりが考えて行動しなくてはいけないため、当事者意識が生まれ、主体的に動くようになります。積極的に行動するメンバーが増え、チーム内に活気が生まれます。

メリット3:生産性が上がる

主体性が生まれればモチベーションも維持しやすくなるため、生産性の向上が期待できます。

メリット4:間違った決断を下すリスクが減る

上司一人が決定するのではなく、部下からの率直な意見も聞けるので、最もよいアイディアが選択できます。さまざまな意見を取り入れることで、間違った決断を下すリスクが減ります。

特に大切なのは、部下の当事者意識ではないでしょうか。上司に傾聴してもらうことで、自分の意見が組織に必要だという気持ちが生まれます。上司に受け入れられるか、ヒヤヒヤしながらご機嫌取りのように出す意見ではなく、消費者目線のよいアイデアが提出される機会が増えるはずです。

テレワークが助長する、危険な「たこつぼ化」

日本の企業は「たこつぼ化」が起こりやすい土壌にあるといわれますが、テレワークはその傾向をさらに強めます。
たこつぼ化とは、自分の殻に閉じこもって、他人や他部署に関心をなくしてしまうこと。最終的には「うちの部署は問題ない。会社の業績が芳しくないのは、あの部署が悪いから」と責任転嫁し、会社全体の生産性の低下を呼び、危険な状況が生まれます。

確かに、知っている場所で、知っているメンバーと同じ仕事を繰り返すのはとても楽です。しかしそれでは人材は育ちませんし、いい人材は会社を離れていってしまうでしょう。

コミュニケーションと仕組みで解決

たこつぼ化を解消するには、やはりコミュニケーションが大切です。テレワーク下では、コミュニケーションの難易度が上がり、オフィスでは気軽にできた雑談もしにくい環境になってしまいました。そのため、会社として、交流の場を提供するなど、積極的に社員間のコミュニケーションを図れるようにする必要があります。

しかしサーバントリーダーシップが発揮されれば、メンバー間の協力体制を生み、コミュニティが形成されていきます。失敗があっても上司から頭ごなしに怒られない環境。これを「甘い」といってはいけません。失敗やミスの原因は、その部下にではなく、「仕組み」にあるとして、ミスの減る環境をつくることこそがリーダーに求められるスキルです。

これまでは毎日顔を合わせていたからこそ、叱咤激励、強い指示や命令があってもそのフォローが即日できていたのです。テレワーク推進の社会では、これまで以上に人間関係を円滑にして、自発・自律で動いてもらうようなマネジメントが求められています。

まとめ:個人を生かすサーバントリーダーシップ

理想のリーダーシップのあり方は、その時代によって変化します。力強いパワフルなリーダーが求められるときもあれば、寄り添ってくれるようなリーダーが必要な時代もあるでしょう。

今までに経験したことのないテレワーク時代では、管理やルールを中心に考えすぎると人を動かすことはできません。人は理屈ではなく、感情で動く生き物だからです。主体的に動いてもらうためには、これからのリーダーはサーバントであるべきかもしれません。会社にとって一番大切な資産は「人」だということを、今一度考えてみるいい機会になるのではないでしょうか。

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