外食大手の「ロイヤルホールディングス」と「すかいらーく」の2社は、働き方改革の一環として、24時間営業を見直し営業時間を短縮したものの、去年1年間の決算でともに売り上げが増加しました。日中の従業員を増やし接客を強化したことや新規の出店を進めたことなどが、効果を挙げたとしています。ーNHK NEWS WEBより(24時間営業見直しでも増収 ファミレス2社の決算)
ニュースでご覧になられた方も多いかもしれません。
様々な業種で人材不足傾向が強まる中、飲食サービス業において売上アップにつなげていることが伝えられました。
スタッフ確保の難しさ等から24時間営業をやめたファミリーレストラン業のケースです。
深夜営業をやめることによって全体の顧客数は減少したものの、売上は向上しているそうです。
(ロイヤルホールディングスは1.9%、すかいらーくは1.4%の売上増)
具体的な施策としては、深夜勤務の従業員をランチタイムやディナータイムに配置転換することで、注文をとるタイミング、料理の提供時間、配膳、テーブルの片づけ、掃除などのスピードが上がるサービス向上につながっているそう。
この場合、繁忙時間帯の従業員数確保ができることで、従業員にも余裕が生まれ接客サービスのホスピタリティ的な要素も向上していることが推測できます。
従業員の負担も軽減されます。注文受付や配膳や食器の片づけが「作業」ではなく「接客」「サービス」に変化することで、従業員自身が達成感を感じやすく自己効力感が高まることも予想されます。
これらは従業員のエンゲージメント向上につながり、離職防止や売上向上につながる理由となります。
顧客体験が向上する付加価値が生れていることから、満足度の高まり=リピート顧客の増加も見込めるのではないでしょうか。
もちろん施策はそれだけに限らず、メニューのラインナップ(もう1品のサラダやデザートやサイドメニュー類)を増やすことなどが影響しているのですが、接客サービス品質向上によって滞在時間や追加オーダーの増加も考えられます。
無駄を省き付加価値を向上させることで人材不足によるサービス品質低下を防いている好例です。
ここで見直したいことがあります。
人材不足をきっかけに、人材をひとつの単なるリソースとしてハードの一部として捉えるのではなく、事業推進のためのキャピタル(資本)であり大切なパートナーでもあるというより“ソフト”の部分を重要視するマネジメントにスポットライトがあたるきっかけになるのではないでしょうか。
経営への影響について、すかいらーくの谷社長は「残念ながら短期的にはマイナス。ただし長期的には、これは必ずプラスになる。勝算はある」と言います。
「女性が生活と仕事と両立できる企業だけが、この後の日本の国内で成長することができる。24時間営業を見直して、従業員の働き方改革をしていくことが、年齢、性別にかかわらず、多様な人材の雇用の窓口を広げ出店を加速し、新たな成長につなげていける」と話し、24時間営業の見直しによって新たな成長を目指す考えです。
この会社では、早速、採用に好影響が出ているとしています。例年1月ごろに相次ぐ内定辞退者がことしは1人だけ。去年の辞退者5人に比べ減ったということです。
また、食品の衛生面や、商品・サービスの在り方などから経営危機に陥っていた日本マクドナルドがV字回復を見せている理由にもヒントが隠されています。
マクドナルドがV字回復した理由の一つに「組織の風通しをよくする(経営陣が店舗や人材育成やFCオーナーに耳を傾け、現場に積極的に姿を見せる)」や「12万人以上の従業員(クルー)の教育てこ入れ」など、より人材や現場を大切にする方針への転換があったといいます。ー産経ニュース(3期連続赤字に追い込まれたマクドナルドが「V字回復」成し遂げたワケ)
人材や組織の問題に取り組むことで業績向上につながるということがこのように明確に様々なケースで登場しています。
皆さんの会社では取り組まれていらっしゃいますか?
もちろんサービス業の分野でも、AIやIoT、顧客によるセルフサービス化のための端末などによる人材不足対応策も徐々に登場してきています。ですが、顧客満足に大きく影響するホスピタリティの要素は人じゃないと難しい。
景気がよくても「人手不足倒産」が起こる時代。そんななかでも顧客の満足度を高めるための「接客サービス≒ホスピタリティ」を高めるためにも、ビジネスモデル転換や組織マネジメントの在り方・従業員の働き方に着目していく必要がありそうです。