2017年11月7日に、「健康経営優良法人」 中小部門の申請受付が開始されました。
健康経営優良法人認定制度は、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などの法人を顕彰する制度。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的評価を得られます。
経済産業省が2014年度から東京証券取引所と共同して「健康経営銘柄」の選出を始めていましたが、上場企業に限らず、健康経営の実践法人を拡大する狙いで認定が始まりました。
特に、大規模法人部門は「ホワイト500」という通称で話題になりましたね。
2020年までに500社を認定する目標を掲げての名称ですが、なかなかうまいネーミングですよね。「ブラック企業」に対比して「ホワイトな企業=従業員を大切にする働きやすい企業」というイメージをPRする好機とばかりに、多くの企業が認定にチャレンジされているようです。
おりしも採用マーケットは厳しい状況が続いています。一人でも多く優秀な人材を確保したい企業にとっては、「ホワイト」の名は魅力的でないはずがありません。
これまでに中小規模法人部門で318法人、大規模法人部門で235法人が認定されており、2020年を待たずに500社を超えそう!
先日の当社主催の「健康経営」をテーマにしたセミナー参加企業の中にも、ホワイト500の認定企業や、これから取得を目指す企業がいくつもありました。
でも実際に認定された企業にお話を聞いてみると、、、実態は???なところもあるようです。一定の認定条件をクリアしていることが公認されての認証ではあるはずなのですが、「健康経営」と言えるような取り組みはほとんどできていない、なぜ認定してもらえたのかわからない、と仰る担当者まで。
とは言え、認定を受けたことで「ホワイト」の名に相応しい企業になるべく取組みを積極化されているとのこと。動機は不純だったとしても(笑)、認定にチャレンジすることは、結果として健康経営を本気で始めるきっかけづくりとして、とても有効だと思います。
ホーソン実験にみる健康経営の源流
さて、突然ですが、「ホーソン実験」というのを聞いたことはありますか?
1924年から1932年にアメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われ、「職場の物理的な環境条件ではなく、人間関係が生産性に影響する」ということを突き止めた、経営学の分野ではとても有名な実験です。
当時のアメリカでは、フレデリック・テイラーが提唱した科学的管理法(従業員を効率的に管理する方法)が主流。同社では好景気を背景に業務量が増えたことで、生産性向上の条件を模索する必要があり、環境要因などいくつかの条件を変えて実験を行いました。
その実験の結果は・・・なんと、労働環境やインセンティブを改善したグループだけでなく、諸条件は今までと全く変わりない従業員も含めて、当実験に参加した従業員全体に生産性向上の成果が見られました。
つまり、当初想定していた「物理的労働環境やインセンティブ(報酬)」などは、生産性にはあまり影響しないことがわかったのです。経済的成果や合理的理由よりも、社会的成果や感情的理由、フォーマル組織よりインフォーマル組織に影響されるということがこの実験で明らかになりました。
これはどういうことでしょうか? 会社が従業員のために何らかの施策を実施してくれていること、またその栄誉ある取り組みに自分が参加していること、そのこと自体が従業員のモチベーションとなり、生産性を上げる結果となったのだと分析されています。
このことは、エンゲージメント(社員の会社に対する愛着心やコミットメント)が高まった成果そのものですね。人間は、科学的に割り切れるものではなく、人間関係を含めた感情的なものが大きく影響する・・・この点は、あらゆる施策を講じる際に重要な視点だと言えるでしょう。
健康経営をきっかけにエンゲージメントを強くする
前置きが長くなってしまいました。
つまり、健康経営を通して、会社が従業員の健康や働きやすい職場づくりに本気で取り組んでいるというメッセージを伝え、”健康”をテーマとしたインフォーマルなコミュニケーションを促すことで、ホーソン実験と同じくエンゲージメントの向上や結果としての生産性向上が期待できるということです。
健康経営に取り組むことは、採用マーケットで優位性が高まることも大きな魅力ではありますが、本当の価値はむしろ、健康経営を通じて、今いる従業員のエンゲージメントを高めることにあります。
「とりあえずホワイト500を取れ」というトップからの指示が降りてきたけれど、何から手を付けたらいいのか途方に暮れている、という担当者の方も多いかもしれません。
まずは自社にとって「健康経営」がどんな意味を持つのか?何を目的として「健康経営」を行うのか?について、社内で議論するところから始めてみることをお勧めします。
単に従業員が健康になり、疾病リスクを減らすことが「健康経営」の目的ではないはずです。その視点に立てば、どんな施策を実施すればいいのか?のヒントが見つかるはず。
ぜひ、「健康経営」をきっかけにして、貴社の従業員のエンゲージメントを向上させ、イキイキと生産性高く仕事ができる職場づくりにチャレンジしてはいかがでしょうか?