「やる気が見られない」
「言われたことしかやらない」
「すぐに辞めてしまう」
メンバーの仕事ぶりをみるにつけ、悩みため息をつきたくなる。皆さんの職場では、こんなため息が聞こえませんか。
今までの先輩上司のように、イニシアティブを取り、強いリーダーとして物事を先頭だって円滑に進めていかなくてはならない。
しかし、強いリーダーとして部下を引っ張ろうとすればするほどメンバーがついてきてくれず、むしろやる気をなくしていってしまう。チームとして成果は上がらず、自分ばかりが忙しくなっていく。メンバーとの関わり合いに不安や違和感を感じながら日々のマネジメントを進めている。
いつの間にかチームのボトルネックに自分自身がなってしまっていることに気づいていない、思い悩むリーダーは多く存在するのではないでしょうか。
メンバー一人ひとりが自ら仕事に取り組み、成果をあげるために必要なこととは何でしょうか。
それは『動機づけ』です。
目次
『動機づけ』とは~部下が自ら仕事に取り組むために必要なこと~
『動機づけ』とは、心理学において引用される考え方で、生活体に行動を起こさせ、目標に向かわせる心理的な過程を言います。内的要因と外的要因の相互作用で成立し、モチベーションとも呼ばれます。
内発的動機付けと外発的動機付けとは
時間を忘れて夢中になる、みなさんもそんな経験はあるのではないでしょうか。
このような報酬や罰則などがなくても自分自身から発生しているやる気を「内発的動機づけ」と言います。自分の内部から起こる動機付けであり、金銭や評価、賞罰といった外からの外的報酬には基づきません。
また、それに対して「外発的動機づけ」なるものもあります。評価や報酬、あるいは称賛や罰則などの自分以外の自分の外側の要素によって起こるやる気のことです。給料が上がることや、周囲のメンバーから褒められる・認められる、昇進や昇格によって「よしやるぞ!」といった気持ちに一時的にはなるものの、長続きしない。慣れると効果が薄くなり、より強い動機付けを求めて依存するようになるといった側面もあります。
メンバーが自ら仕事に取り組み、成果をあげるためには「内発的動機付け」に目を向けること、が重要です。
内発的動機付けを効果的に行うために必要な三要素とは
どのようにすれば内発的動機づけを効果的に行えるのでしょうか。
内発的動機づけに関する理論として、エドワード・L・デシが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」があります。 自己決定理論では、以下の3つの欲求が満たされたときに 内発的動機づけが起こると考えます。
動機付けされるきっかけには三つの要素があります。自律性、有能感、関係性、この三要素が満たされること。質の良いモチベーションを持つことができ、その結果、仕事の成果が上がり、働く人の満足度も大きくなります。
自律性・・・「自分の行動は自分自身が自発的に行っている」と感じること
有能性・・・「自分は能力がある・役に立っている」と感じること
関係性・・・「周囲の人と信頼し合っている・関心を持たれている」と感じること
管理しなければならない、指示しなければならない、という枠組みから外れることが大切です。
メンバー一人ひとりに自身で考え行動する機会を与えること。当事者意識を持たせること。
リーダーだけが計画を把握し、指示を与えればいいというわけではなく、メンバー一人ひとりが考えられる材料を共有する、ということが重要です。
やりたくない、やる気がない部下のモチベーションアップに必要なこととは
自身がもつ興味や関心のあることを仕事として取り組めている場合。内発的動機付けにより、メンバーが自ら仕事に取り組み成果に結び付けてくれる可能性は高い、と言えるでしょう。しかし、メンバーがやりたいことと会社や組織のやるべきこと、求めることが必ずしも一致するわけではありません。
メンバー自らが自身で、組織の中で『やりたいこと』を見つけられ、自ら動いてくれれば問題はありません。しかしそれができない場合も多いと思います。
「つべこべ言わずにやれ」
「指示通りにやれ」
「今の苦労は後々に役に立つ」
といった精神論・根性論で引っ張ったとしてもいい成果は得られません。むしろこういった強制力はパフォーマンスを低下させることに繋がります。
メンバー一人ひとりが持つゴールはさまざまです。
より多くの報酬をもらうこと、スキルアップして実力を身に着けていくこと、昇格や出世・・・。
個人のやりたいこと、目指す姿、そして会社のやるべきことが一致する部分を作ること。マネージャーに求められている役割の一つです。
組織の戦略に基づき、無理やり目標をたてたとしてもうまくはいきません。個人と組織の方向性のすり合わせ、コミュニケーションをしっかりとっていく。そして、その中でメンバーが『自分ごと』を見つけていけるよう、自ら考える機会を作ること、が大切です。
対話を続ける中で、今取り組む仕事が自身ゴールにとって必要な一部であること、一致しているのだと納得することができれば、メンバーのモチベーションは上がっていきます。
働き方改革が進む中、生産性向上につなげるためには、一人ひとりが自分なりの答えを持ち、自律的に成果に結び付けていくことが大切です。
自律的に動ける人材を育成できるか否か、チームとしても組織としても成果が変わってくるでしょう。
上司の指示のもと動く、指示がなくては動けない、ではなく、自ら個人としての成果、組織としての成果を結びつける行動をとる。
そのためには一人ひとりが「やりたい」という意思を持つこと、そしてその「やりたい」を支援することが大切です。内発的動機を高めることに繋がり、主体的に動き出すメンバーが増えていきます。
結果、従業員満足度に繋がり、長く活躍してくれる人材の育成にもつながるはずです。