部下を選んだことがある方は多くいても、上司を選んだことがある人は、ほぼいないでしょう。
職人やスポーツの世界であれば、上司である師匠やコーチを自分で見極め、自分で選ぶことができそうですが、会社組織ではまず不可能ですね。
いざとなったら、部署異動希望や転勤希望を出すことは可能でも、「あの人の下に行きたい」は、なかなか受け付けてくれないのが会社です。
異動時期が来るたびに、「どの組織に行かされるのか」、上司部下ともにヒヤヒヤ…
四半期ごとに異動が発表される会社だと、そんな不安も多く、ストレスが溜まることでしょう。
「とにかく、自分と相性の良い上司に当たりますように!」と、運任せにしているあなた。
自発的に上司を懐柔する「ボス・マジメント」で、その現状を打破してみませんか?
目次
上司は選べない…けど、「かかわりかた」は選べる
上司という立場の人は、とにかく「部下にいかに仕事をさせるのか」に時間のほとんどを使っています。
しかし、「上司のせいで仕事が進まない」と悩む部下も、多数存在しているのです。
上司の立場からすると「自分はちゃんと仕事をしている、部下に言われる筋合いはない」と思うかも知れませんが…
部下の立場だったとき、悩みませんでしたか?
たとえば、決裁印をくれないけど、それがなぜなのか?を教えてくれない上司。
せめて、仕事を進めるための突破口だけでもフォローしてほしいと感じた経験、あるはずです。
そのとき我慢するか、ぶつかっていくかはその人次第。しかし、上司を変えることはできないため、仕事の相性が悪い上司に当たってしまったら、どちらかが異動するまで耐えるしかありません。
しかし、上司を選べなくても、上司との「かかわりかた」を選ぶことは可能です。
それが、ボス・マネジメントです。
アメリカでは当たり前のボスマネジメント 多様性の受容がカギ
「ボスマネジメント」と聞いて、どのような手法を思い浮かべるでしょうか。
従来的な、ボスによる部下の管理手法も「ボス・マネジメント」と呼ばれることはあります。
しかし、ここで紹介する「ボス・マネジメント」は、意味がまったく違います。
部下が上司の性格や特性を理解した上で、上司をうまく動かし、成果に結びつけることを「ボス・マネジメント」と定義します。
アメリカでは「ボス・マネジメント」という考え方は珍しいものではなく、高い業績を上げている人に共通する行動特性のひとつとして、研究材料にもなっています。その証拠に、MBA(経営学修士)コースのカリキュラムの中にも含まれているのです。
アメリカでボス・マネジメントが主流になった背景には、上司が年下や女性であったり、人種の異なる人であったりが当然の世界、ということが挙げられます。
そのため、さまざまなタイプの上司に対応するためのコミュニケーション力を上げることが求められるのです。
ダイバーシティ社会だからこそ、その人の個々の特性を理解し、ときにうまく扱えるようなボス・マネジメントが当たり前に定着したと言えるでしょう。
しかし、ボス・マネジメントの必要性は日本でも同じ。たとえ前の上司にうまくいった手法でも、今の上司には通用しない…という状況は、常に発生しているはずだからです。
ただ上司いいなりになるだけではなく、リサーチ力や対応力を身に付けましょう。コミュニケーションを取り、上司の性格を把握しましょう。
ボス・マネジメントを意識して行動していれば、必然的に顧客対応にも生かされます。
毎日実践すれば、対人関係スキルが訓練され、人との交渉力が上がる…という副産物も得られます。
そもそも上司とは? 「上司」の人間性ではなく、役職にコミットする!
評価者、承認者、人脈、トラブル解決者、コーチ、教師、目標、パートナー・・・
上司にはさまざまな役割があります。
ただ立場が上なだけではなく、何役をも担い、技術やツールを持つ、結構「便利」な存在なのです。
その上司が持っている「権限・機能」を、自身が仕事しやすいように使える資源だと思えば、ちょっとクセのある上司の思考や行動自体も・・・割り切れませんか?
上司は、活用できる資源を意外とたくさん持ってるはずです。
言い方は悪いかもしれませんが、うまく操縦し、利用しましょう。
そして、上司からの視点でものを考えたり、相手の立場に立つ思考をしていけば、ボス・マネジメントがさらにしやすくなります。お互いに気持ち良く仕事ができるようになったら、あなたの上司は、そんなに嫌な人ではないということに気が付ける可能性もあります。
役職上の「上司と部下」だけで終わらない関係性を築く
いくら嫌いな上司でも、部下である以上、かかわらないという選択肢はないはず。まずは基本をおろそかにせず、「報・連・相」をしっかりするところから、コミュニケーションを取りましょう。
それから、上司の好みの手法を分析します。
現場第一主義なのか、データや数字に重きを置くタイプなのかで、操縦方法は変わってくるからです。
上司に提案を上げるにしても、ある程度好みを盛り込んだ提案の方が通してもらいやすいのは当たり前。もし通らなくても、アドバイスはもらえるでしょう。そして、その仕事に上司を巻き込み、上司のリソースを自分のために活用できたら、大きな結果に結びつくはずです。
ボス・マネジメントの最終的な理想は、上司と理解を深め、そして活用しあうWinーWinの関係になること。上司はパートナーであり、上下のないイコールとしての関係が築けたら、ボス・マネジメントは成功です。
もし「上司の言うことには逆らってはいけない」と考えているのなら、率直に意見を言い合えるまで、コミュニケーションを取る必要があります。ボス・マネジメントにおいて会話はとても重要。心の中に言いたいことを溜めたり、ののしり合ったりしていては、いつまでたってもあなたは「部下」のままです。
とはいえ、無遠慮にズケズケものを言うことに意味はありません。お互いが自立し、尊敬しあえる信頼関係を築くことで、あなたのボス・マネジメントはうまくいくでしょう。
ボスマネジメントの成功は信頼を得ることから始まる
上司を変えるのは難しい、そして上司の人間性を変えることは、もっと難しい。それをよく知っている人にこそ、上司のタイプに合わせてアプローチを変えてみて欲しいと思います。
上司と、仕事のベクトルを合わせていきましょう。
そして信頼関係を築き、あなたの仕事がうまくいくよう、言いたいこと・聞いて欲しいことをハッキリ伝えられるようになりましょう。上司にとっても、有益な意見を言ってくれる部下は貴重なはずです。
ボス・マネジメントにおいて、無理やり上司を好きになる必要はありません。
まずは仕事上での信頼を得ましょう。
そして、「君に任せる」「君を信じる」が引き出せたら、大成功。部下であるあなたが主体的に動き、ボスからの信頼を勝ち取れたら、仕事は驚くほどスムーズに進み始めます。
まとめ
上司のいないとき、部下同士が上司の愚痴を言ってるシーン、よく見かけますね。
しかし、その時間は不満をガス抜きに過ぎず、何の解決にもなりません。
人間関係が悪化し、仕事も停滞しているのに、お互いに「言わない・言えない」状況。会社としても、いい状態とはとても言えません。だからこそ、部下である側が、積極的にボス・マネジメントを行い、組織を円滑に回してほしいのです。
上司と部下は、対等な存在です。たまたま、それぞれが役職・役割をもって同じ組織に配属されただけで本来は一人の人間同士。上下関係を意識し過ぎては、息が詰まってしまいます。
つまり上司と部下とは、あくまで会社の業績を上げるための「チームメンバー」。お互いに敬意を払い、尊重し合うべき相手だと考えることができれば、組織は円滑にまわり始め、会社としても、自然と成果を得ることができるはずです。