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ひとりひとりが自信をもって挑むことの大切さ~サッカー日本代表の激闘より

 

2018ワールドカップ ロシア大会、サッカー日本代表は決勝トーナメントまで進みベスト16まで進んだところで戦いを終えました。

このワールドカップは、直前の監督解任・交代劇や、平均年齢の高い「おっさんJapan」と呼ばれたり、10人になったチームに1勝しただけということや、グループリーグ最後のポーランド戦の終盤10分間のパス回しなど話題に事欠かない(?)良くも悪くもいろいろ言われる大会になりました。

サッカーの内容に関する評価は、専門家の方にお任せして、このワールドカップロシア大会をマネジメントの視点で考察をします。

ビジネスに置き換えて「結果」も「プロセス」も大事という見方をするならば、大きな成果があったのではないでしょうか。
(今回の目的を「次の大会を見据えた若手育成」だとしても、その成果を測ることは難しいですが)

なぜなら、結果としてベスト16まで進んだ(FIFAランキング68位にも関わらず!)という事実と、各試合の内容や、メディアも巻き込み多くの人が感動したり話題にしたという面でも、最高ではないにしても現時点の最良の成果だったと考えるからです。

成果につながった理由は「自信」ではないでしょうか。

 

ワールドカップ直前の監督交代~自信のある選手を選ぶ必然性

本大会出場のための予選を勝ち抜くために、それまで率いた監督を直前になって解任するということが起こりました。監督はハリル・ホジッチ氏から西野氏に代わりました。
(何があったかは定かではありませんし、ここで論じるものではありません。)

現場としては、それでも“成果を出さなければならない”というプレッシャーがあります。

そして着任したばかりの新監督(=マネージャー)も、このワールドカップ(=プロジェクト)での戦いで成果を出さなければならない状況です。

サッカーではなくとも、いざ同じような立場に管理職としておかれたとすれば、何を考えるでしょうか。

置かれた状況や責任を考えると、とてつもなく大きなプレッシャーと共に、普通なら不安に押しつぶされてしまいそうですが、それをメンバーに見せるわけにもいきません。
本音はそうではなくとも自信満々に演じる必要もありそうです。

短期間とはいえ、仕切り直しをしっかりと行い、今できる最善策を徹底して講じるのみではないでしょうか。きっとメンバー選考も同様の考え方だったのかもしれません。
監督自身の経験に基づきながら、メンバー選考も経験豊かなメンバーを中心に選ぶ。その時に考えうる最善策を実行したということでしょう。
それはつまり根拠ある「自信」をもってワールドカップの舞台で戦ってくれるという選手を厳選したということ。

番狂わせのコロンビア戦勝利~自己効力感を早々につける重要性

日本チームは大会前のFIFAランキングでは、圧倒的なグループリーグ最下位。
そんな中、初戦は前回ブラジル大会で惨敗した格上のコロンビアです。

まさかの試合序盤での相手選手のレッドカード退場。香川選手が冷静にペナルティキックでゴールを決め、そして人数的有利になりましたが、それでも苦戦を強いられ、同点に追いつかれます。
途中出場した本田選手の鮮やかなコーナーキックから大迫選手のヘディングシュートで勝ち越し点を奪い、日本はコロンビアに勝利をおさめます。

この大会、勝利したのはこの1勝のみ、しかも10人の相手にしか勝っていないということは、評論家だけではなく選手自身も明言しながら悔しさを滲ませています。

しかしながら、明らかなのは、10人の相手とはいえ、死に物狂いで迫る格上コロンビアに対して勝利したということです。

この勝利は、選手たちに「自分たちなら決勝トーナメントにいける!」という自信をつけたことは間違いないでしょう。
これはまさしく「自己効力感(Self-Efficacy,自分ならできそうだという有能感につながる自信のようなもの)」がチーム全体で高まった状態になったのではないでしょうか。

サッカーに限らず、あらゆるスポーツ、そしてビジネスの場面でも「流れ」をつかむ瞬間というものがあると思います。
それは「これならいける!」「自分ならやれる!」というような“自己効力感”の高まりにより、パフォーマンスが向上している状態が起こっているからだと私は考えます。

グループリーグ第2戦のセネガル戦は、常に得点を先行されながらも粘りで追いつく展開で引き分けに持ち込みました。
試合を観戦していると、圧倒的な身体能力を誇るうえに組織力もあるとされるセネガル代表を相手に、まったく臆せずに、むしろイキイキとパスワークをまわし、攻撃を行う日本代表に、負ける気がしない感覚を持ちました。屈指の好ゲームだったのではないでしょうか。乾選手のゴール、本田選手のゴールともに、とても見ごたえがありましたね。

これも、初戦のコロンビア戦で得た自信から、パフォーマンスがさらによくなったと感じました。
「試合を重ねるごとにチームが強くなる」という表現も、多くのメディアでもされていましたが、これも「自分はできそうだという自信=自己効力感」のなせる業だと思います。

ポーランド戦のパス回し~リーダーが自信をもって決断をする必要性

グループリーグ最終戦、ポーランドを相手に0-1で負けていながら、最後の10分間に行われたパス回しには、賛否両論が巻き起こりました。
同じグループのコロンビア対セネガルの結果に、決勝トーナメント進出の切符の行方を預けたのです。

有終の美を飾りたい未勝利のポーランドと、2位通過を目指したい日本との思惑が一致して、お互いに積極的に攻撃しないという展開にサポーターもヤキモキしたとされます。

もちろんサッカーをはじめとするスポーツは、真剣勝負をするからこそファンも魅了されるものです。
一方で、グループリーグ突破をしなければ次に進めない(この試合でチームも解散、敗退決定)状態です。

グループリーグ突破という目先の目標も、史上初のベスト8進出という目標も、ここで無茶をしてはすべて終わってしまう。
だから、その時点で監督は目標達成に向けた最善策を講じたということであり、その責任は監督が背負うということだと見受けられました。

誰だって最後まで正々堂々と全力を尽くして戦うことを望んだことは間違いないでしょう。
グループリーグ突破が、一つのマイルストーンに過ぎないのであれば、10分間のパス回しも一つの手段。
それも一つの賭けで、もしセネガルが点をとれば、ここで日本は敗退していたわけです。

もし、ビジネスの場面で、経営者として大きな決断をしなければならないとき、少しでも生き残る可能性が高い方を選ぶのではないでしょうか。
管理職もチームの目標達成のために、何かの優先順位をつけなければいけない瞬間は多々あります。

監督(=リーダー、マネージャー)が、自信をもって判断をしなければならない瞬間が、ちょうどあの場面だったのだと思います。

ベルギーに敗戦~役割と責任を全うすることでさらなる自信に

決勝トーナメントは、これまで最多得点のFIFAランキング3位のベルギーが相手。スターぞろいのタレント軍団といわれ、かなりの強者です。

そんな相手に、前半こそ苦戦しながら0点でしのぎ、後半に入りカウンターからの原口選手のゴール、そして乾選手のミドルレンジからのゴール、素晴らしいものでした。
いずれもパスワークからのゴール。率直に「強い!」と感じました。

その後、2点を追いつかれ、最後は延長戦になりそうな間際に、ベルギーの華麗なカウンター攻撃を受け、逆転負けを喫することになりました。
しかしながら、最後まで攻撃の姿勢を崩さなかった日本代表には賛辞も送られています。

結果がすべてと言われればそれまでかもしれませんが、この試合も、観ているものをくぎ付けにし、感動した方も多かったのではないでしょうか。
優勝候補のベルギーを、あと一歩というところまで追いつめたのですから。

試合後の各選手へのインタビューは、涙を誘いました。

日本代表が戦ったワールドカップでの4試合、それぞれの選手が自信をもってプレーし、自分の役割を果たしているように感じました。
試合の流れを変え3大会連続のアシストとゴールを記録した本田選手も、試合の組み立てをした香川選手も、泥臭く倒れ込みながらゴールアシストをした岡崎選手も、キャプテンとして攻守の要になっていた長谷部選手も、精密なパスを供給する柴崎選手も、ピンチに対峙しスーパーセーブもあった川島選手も、強力なストライカーを何度も封じ込めた昌子選手も、攻守にものすごい運動量で貢献した長友選手も、ディフェンスを引っ張った吉田選手や酒井選手も、得意のドリブルやミドルシュートでかき乱した乾選手も、半端ない活躍をした大迫選手も、もちろん出場機会が少なかった選手も含め。

それぞれの役割を責任をもって全うすること、それが自信にもつながっていくものです。

誰かのがんばりが力になる~勇気や自信が生れる影響力

ワールドカップ ロシア大会が始まる前、もしかすると期待をしていなかったという人もいるかもしれません。

日本代表は善戦をしました。
結果として、ベスト8には進めませんでしたが、良い意味での期待の裏切りにより、多くの人に勇気を与えることになったのではないでしょうか。

今回代表に残念ながら選ばれなかった選手も、これからが楽しみな若い世代も、「自分たちこそ!」「次こそ!」という想いが生れるのが自然です。

それだけではなく、ただ応援していた周囲の人たちや、サポーターの人たち、テレビで観戦していた人たちも、日本代表ががんばる姿に「自分たちもがんばろう!」というような想いに駆られたのではないでしょうか。

“誰かのがんばりが力になる”というのは、実はその通りなのです。
他者のがんばりを見て「自分はやれそうだ!」「あの人ががんばっているなら、自分もがんばろう!」と感じることも「自己効力感」なのです。
(ちなみに代理体験やモデリングという専門用語で表現されます)

サッカー日本代表のがんばりは、きっと多くの人に「自信」を植え付けたといっても良いかもしれません。

一人一人が自分の役割を責任をもって全うし、自律的に一生懸命に取り組む。
ビジネスの現場でも、そんな人が増えることで、各々に自信が生まれ、組織全体に良い化学反応が起こるのかもしれません。

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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