仕事で褒められたことと怒られたこと、みなさんはどちらが多いですか。
年収・給与制度・・・仕事のモチベーションのためにはもちろん大切ですが、それだけで勤続意欲につながるとも限りません。
頑張っているのに評価されない、報われない。誰からも褒めてもらえない。メンバーがこういった気持ちを持っている職場は到底活気のある職場とは言えません。業績の低迷、社員の離職や離脱につながってしまいます。
朝から晩まで必死に働いていた高度経済成長期。
右肩上がりの社会の中、体育会系組織で多少辛い思いをしても多くの人はその会社で働き続けることで給与も上がり、生活は豊かになっていきました。
トップダウン、一律のマネジメントから未だに抜け出せていない、まだまだ称賛が浸透していない日本企業。
感謝の気持ちを示す・伝えることができる、お互いに感謝の気持ちを言い合える職場は活気が高まり、職場やチームの士気が高まることに繋がります。とてもシンプルで最も効果的な方法かもしれません。
しかし、多くの職場はそういった環境でない、そういったチームでない、そういったリーダーではない、のではないでしょうか。
目次
褒められることは叱られることよりも効果あり!
褒めることが実際の現場でどれだけ仕事に影響を及ばしているかを見ていきます。
職場における「ほめる効果」に関するアンケート(株式会社サーベイリサーチセンター)によると、
▼「上司の行動や言葉でやる気が高まった」経験は6割弱、その内容は「ほめられた」が最多
・上司の行動や言葉で「やる気が高まった」と感じたことがある人は56.8%でした。
・「やる気が高まった」と感じた上司の行動や言葉を具体的に聞いたところ、上司から「ほめられた(認められた、評価された)」内容が半数以上と最多でした。次いで上司から「感謝された」、「任された」、上司の「激励」、「率先して動く姿勢」、「適切なアドバイス」、「部下への思いやり」などの内容が挙げられました。
▼「上司からほめられるとやる気が高まる」は8割、「叱られるとやる気が高まる」は2割
・「上司からほめられるとやる気が高まる」(高まる+やや高まる)人は80.7%でした。
・年代別にみると20代で高く、とくに20代公務では92.6%と高い結果となりました。
・一方、「上司から叱られるとやる気が高まる」人は22.0%にとどまっています。
▼ほめられている人のほうが、「挑戦意欲」「仕事への満足」「仕事への楽しみ」「自信」「誇り」が高い
・仕事に対する意識42項目(※)について、5段階(5:まったくそのとおり~1:まったくちがう)のうち上位2段階を占める割合を比べると、すべての項目で『ほめられている人』に“プラスの結果”があらわれました。
・『ほめられている人』での割合が20ポイント以上上回る項目としては、「少々困難な目標でも挑戦したいと思う」(『ほめられている人』では51.8%、『ほめられていない人』では30.5%)、「仕事を効率的にこなせている」(54.8%、29.1%)、「会社(地域・住民)に役立っているという自信がある」(46.7%、21.4%)、「今の仕事に満足している」(38.2%、15.5%)などが挙げられます。
・「毎日、職場に行くのは楽しい」(34.2%、16.8%)、「自分の職業・職種に誇りを持っている」(40.2%、28.2%)といった項目においても、『ほめられている人』での割合が10ポイント以上上回っています。
やはり「褒める」ことには仕事に対する意欲ややる気といったところへの影響が大きいようです。
褒められることが脳にも影響?!
褒められることが脳の活性化へつながることはある実験で証明されています。
2010年、ブルース・ドブキン教授(UCLA神経リハビリテーション科)らがアメリカや日本など7カ国で行った国際研究。
脳卒中の患者さん179人を調べた結果、歩くリハビリをする際に「ほめられた」患者さんは、「ほめられなかった」患者さんより、歩くスピードが大幅に速くなることがわかったのです。
ほめられたグループはとほめられなかったグループ、リハビリ開始前からの改善効果はおよそ1.8倍。全く同じ内容のリハビリをしたのに、結果には大きな違いがあらわれました。
最新のリハビリ器具や医薬品でも、これほどの効果の差を生み出すことはできなかったそうです。
脳には報酬系と呼ばれるシステムが存在します。
何らかの欲求が満たされたときに活性化し、その個体に「気持ちいい」感覚を与えること。脳にはドーパミンを得やすいように、自ら構造を変えていく性質があるということです。
脳卒中の患者さん。歩けたときにほめられると報酬系からドーパミンが放出。脳はドーパミンを得やすいように、自身の構造(歩くときに必要な神経に信号を送る、強くするなど)を変えていく。こういった脳の働きにつながっていることが推測されます。
職場においても褒められることで報酬系からドーパミンが放出。脳はドーパミンを得やすいように、自身の構造(脳が活発になり情報をインプットする力が高まるなど)を変えていく。
脳卒中の患者さんと同じようなことが起こっているかもしれません。
自身が意識している以外の部分(脳)でも褒められることが仕事の質を変える、高めることがつながっている可能性が考えられます!
海外では「褒める」が基本
褒めることが有効であるとはいえ、実際の現場でどう生かしていけばいいのか。
海外ではどのように仕事の場で「褒める」を実践しているのでしょうか?
海外では褒める文化が根付いています。仕事の改善や指摘をする場面でもまずは褒める、ことから始めるのです!?
基本の流れは
褒める
↓
改善点を伝える
↓
改善案をセットで伝える
例:部下のプレゼン。スライドのグラフが小さいそして見にくい。改善しなくてはいけない。
「今回のプレゼンはとてもよかったね!本当によくやったよ!君には感謝している!!あと、ここのグラフが大きく見やすい形だとよりいいんだけどね。」
日本であればどうでしょう。
「ここグラフではだめだ。やり直して。」そんな声をかける上司が大概ではないでしょうか。
私の主人は一年ほどフランスで仕事をしたことがあります。
日本人ならではの勤勉な仕事ぶりは大きく称賛され、毎日のように褒められたのだといいます。たとえ失敗があったとしても、ポジティブに考える人ばかりで、落ち込むことなく自然に前向きに仕事に取り組むのが当たり前になったと言います。
怒られた?としたらあまりに仕事を休まないこと、日本に家族を残してきていること(フランスでは家族をとても大切にします。家を探す手伝いをしてくれた時家族が一緒に来るものだと思っていた現地のスタッフは大きな家を探してくれていたそうです。)くらいだといいます。
たとえネガティブなフィードバックをする場合でも、とにかくポジティブなことから始めることが大切。相手のプライドを尊重しまずは相手の良いところに目を向けた上で、ソフトな言い方をすることが大切です。
承認のHITSで合いの手を入れる
褒めることに効果があることはわかっていても、海外のように褒めるのは難しい・・・そういった方々には「承認のHITS」をおすすめします!
H ・・・ほう
I ・・・いかにも or いいね
T ・・・たしかに
S ・・・さすが or すばらしい
相手の発言などの行動を認める“合いの手”を入れるのです。
上司が部下を褒める・承認するだけでなく、チームの仲間、同僚、関係者等々関わる人たちがお互いに褒める・承認するといった文化が根付くことが理想です。
「いいね」「さすがだね」ーまずはこの呼びかけから始めてみるのはいかがでしょうか。