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【人的資本の開示の背景】
人的資本の開示が2023年4月より義務化され、上場企業は、いったい何を人的資本というのか、そして何を開示すればいいのか、まだまだ手探りが続いているようです。
そもそも、なぜ人的資本の開示が上場企業で義務化されたのでしょうか。
欧米、特に欧州では環境問題やサスティナビリティに関心が高く、それらは企業価値として評価されています。
環境やサスティナビリティなどESG投資の流れから人的資本へ、投資家やステークホルダーの関心が向いてきたことが背景にあります。
人的資本の開示の要求には、「企業の価値を生むのは人材である」という当たり前のことに多くの人があらためて意識を向けている現れです。
企業の競争優位性を生むため、どんな人材がどんな割合でいるのか、またどんな人材をどのように育成していくのか、そしてその人材の能力を発揮するためにどんな取り組みをしていくのか、などが企業の価値として評価されることになります。
【人的資本の開示内容】
国際標準化機構(International Organization for Standardization、ISO)が策定した、人的資本の報告に関する国際規格として、ISO30414があります。
この規格は、組織が人的資本(従業員や人材に関連する情報)の報告を行う際に、どのような指針に従うべきかを示しています。人的資本は組織の成果や継続的な成長に影響を与える重要な要素であり、その価値を適切に評価・報告することが企業の経営において重要とされています。
ISO 30414は、人的資本の報告に関する以下のような項目に焦点を当てています。
- ワークフォースプロファイル:従業員の統計情報(性別、年齢、雇用形態など)や能力の評価、労働条件などに関する情報。
- ワークフォースダイナミクス:採用、退職、トレーニング、昇進などのプロセスに関連する情報。
- ワークフォースプランニングと戦略:人材戦略、スキルの評価、将来の人材ニーズなどに関する情報。
- ワークフォースコストと収益:従業員の給与、福利厚生費用、トレーニングにかかる費用などに関連する情報。
- イノベーションと持続可能性:人材のイノベーション、多様性と包含性、従業員のエンゲージメントなどに関連する情報。
日本では内閣官房にて非財務情報可視化研究会が設置され、人的資本可視化指針(20220830)としてレポートを出しています。
このレポートでは、”人的資本への投資と競争力のつながりの明確化(フレームワークを活用した統合的なストーリーの構築)”とあり、価値協創からつながるストーリーとして示すことの重要性を示しています。
ただ、実際はまだまだ手探りで何を開示すればいいのか、もっと言えば、なぜ開示するのかという意味さえあやふやな状態といえます。
【人的資本は開示がゴールではない】
2020年の経済産業省産業人材政策が出した「事務局説明資料(経営戦略と人材戦略)」の中で以下の問題提起をしています。
●経営課題と人材戦略上の課題は直結
●求められる雇用コミュニティのあり方は変化してきている
●経営戦略を実現するための人材戦略が重要になってきている
●経営環境の変化と、人材戦略を通じた企業価値の向上」など
それに対しての課題を以下のように示しています。
●日本企業の多くは人材マネジメントを効果的に実践できていない
●人材戦略と経営戦略に紐づけが一番の課題
この指摘のとおり、もっと企業の価値を高めるために、経営戦略と人材戦略を一気通貫し、人材を活かしていくことに他ならないと思います。
一方で、かつてのように右肩あがりの時代ではなく、つねに変革と挑戦が求められる時代において、これまでの昭和型人材マネジメントからの転換をはかることが求められており、そこには多様性を活かす、従業員のWellbeing、キャリア自律といった視点を取り入れていくことが必要になってきています。
人的資本の開示は、その取り組みを実践していくという宣言であり、多くのステークホルダーがその行く末を見ていくことになるのです。人的資本を如何に活かし、企業価値を高められているか、そこを目指していくことに本来の目的があるのです。
【人的資本の基盤となる心理的資本】
人的資本は知識やスキル、経験などを意味します。ただ、いくら知識やスキルがあっても、それを活かして意欲を持って行動していかないと、成果にはつながりません。心理的資本は「やりとげる自信」や「自律的に目標達成に向かう心のエネルギー」を意味する概念です。
また心理的資本は個人の幸福=Wellbeingにも関連します。心理的資本は計測でき、また開発することも可能です。
心理的資本を開発することで、業績に10~25%の影響がでるというエビデンスがあります。中核人材の心理的資本は業績に大きな影響を及ぼします。人的資本が結果であるなら、その動機付けに関連する心理的資本の状態を把握し、開発することで、真に人材を活かすことが可能になると考えています。

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