コラム

必要だから愛すのか、愛しているから必要なのかという問いを組織に適用すると?

人と組織のイキイキとした関係性が、パフォーマンスの向上につながり、結果として事業の持続可能性や成長を実現できるものだということは感覚的には同意をいただけるのではないでしょうか。今回はいつもと違う角度でこのことを考えてみたいと思います。

ある映画を観ている時に、登場人物が放った言葉が耳に残って離れません。その台詞はこうだったと記憶します。

「必要だから愛しているのではありません!愛しているから必要なのです!」

感情のこもった緊迫した場面のやり取りです。日常生活の中ではなかなか使うことが無い言い回しかもしれません。けれども、なかなか深い問いにつながると思いませんか?

例えば冒頭のやり取りを「会社と個人」「組織と個人」と位置付けてみると、どうでしょうか。
会社や組織を「経営」と言い直しても良いかもしれません。
そんなわけで、経営(会社・組織)から個人に対するメッセージだと置き換えてみましょう。

「愛」の定義は人それぞれだと思いますが、この場ではあくまで会社と個人の関係として、あくまで広義の「愛」と考えてください!

そのように考えてみると、ひとりの人材を「必要だから愛している」というケースが多く見られるように思います。
実際に事業を進めるうえで、必要なスキルや経験を持っているかどうかは、重要です。成果を出していくためにも大切です。しかし、この考え方だけで人材のことを捉えていると大きな問題につながりかねないと思いませんか?

Teamwork and growth strategy concept. Top view of many people bl

これは見方を変えれば、会社が個人のスキルや知識や経験やその人の持つ人脈などに「依存」している状態かもしれません。その人自身の存在よりも、その人が何を成せるのかということに目が行き過ぎている気もします。
よく同様のケースを耳にするのですが、「スキルや経験」を重視して採用をしたところ配属先の現場でうまくいかず、悪ければトラブルを起こして組織がガタガタになってしまい、むしろ組織力が低下してしまうなんてことはざらにあります。これは必要だから愛してみようとお試しをした、のかもしれませんが…。パフォーマンスへの悪影響が大きそうです。愛し方は様々ではありますが、必要だから愛すとなると、なぜか歪んだ愛情になってしまいそうな気がするのは私だけでしょうか。どこかに無理が生じてきそうに思ってしまいます。

そもそも必要だから愛そうっていうのも変ですよね…。

では逆に、ひとりの人材を「愛しているから必要」と考えるとどうでしょうか。成果が求められる企業活動の中では、なかなか簡単にはそのスタンスをとることは難しいと感じられそうです。ただ一方で先ほどの例とは逆に「スキルや経験は無い(または未知数だ)が、この人と一緒に働きたい!」ということもありますよね。会社のヴィジョンに心から共感してくれていて、前向きに取り組んでくれそうだという人なら、スキルや知識は後からついてくるものとも考えられます。その人の存在そのものを認めている前提なので、その人の強みや良さを探し、活かしていくことにも目を向けることができそうです。本気で愛しているなら、甘やかさずにスキル習得や経験値を積めるように機会を提供していくようにも思います。

と、後者が絶対的に良いように書きましたが、実際には限りなくグレーで、その両輪のバランスなのだろうとは思います。しかし、短期的な成果だけに目を向けたり、効率や合理性を追い求めるあまり、後者のような「愛しているから必要」という考え方は後回しにされ、ないがしろにされることが多いと感じています。要はバランスが悪い!

必要だから愛しているのか、愛しているから必要なのか。なんだか禅問答のようですが。
ビジネスのシーンではあまり考えないものですが、本当に人は経営資源としても資本としても、最重要視されなければならないです。今は人的資本経営というキーワードを見かけることがとても増えました。社会全体で、その重要性が再認識される潮流は間違いなくあると思いますが、まだまだ表面上の数字や評価のために何をするのかに終始しているようにも見えます。(少なくとも私には!)

愛のある経営者や、愛のある組織責任者は実際に存在しますし、そういった方々は愛している社員たちがイキイキと働けて結果として業績がついてくる、そんな状態を持続可能なものにしていくために試行錯誤を続けていらっしゃいます。

従業員のエンゲージメントが大事だ!と言いながら、会社として従業員を愛していなければ、従業員も会社に対してのエンゲージメントが強くなるなんてことは無いのではないか…と思ったり。目指せ相思相愛。

私は「愛している」なんて言えない典型的な”日本人”ですけれど!

さて、手前味噌ですが、私たちの会社は「株式会社Be&Do」と言います。
人がイキイキと成果を出すためには「Be(在ることを認める)」と「Do(成すことを認める)」の両輪が必要だということを示した会社名なんです。

BeとDoの両輪で、企業も個人もハッピーになるよう、私たちは挑戦を続けていこうと思います!

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
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・心理的資本の特徴
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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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