会社にとって大切な「評価」。しかし、的確な評価をすることはとても難しく、評価する側のスキルも問われます。
たとえば、日々の業務に追われ、年次評価の時期に慌てて部下の評価項目の資料を出してきたことはありませんか。
また、部下に評価を付けながら、「この評価で正しいのか?」と自身の感覚を疑ったことや、評価について話し合う機会が少なく、「もうちょっと成果が上がれば評価も上がっていた」と、フィードバックで初めて部下に伝えたりしていませんか。
そのようなことが続けば、部下は「もっと早く言ってくれ…」と感じ、モチベーションも下がってしまいます。
このように、均等で公正な評価はとても難しいもの。
では、組織のやる気と価値を上げる評価とは、どのようなものなのでしょうか。
目次
日本の評価制度は、見直しの時期に来ている
部下を持つ人は、「自身の評価は妥当なのか」という迷いを持つことも多いでしょう。
不当とまでは言わなくても、同期や同僚、部署間で格差を感じたり、評価者の好みの問題では?と悩んだ経験があるはずです。
会社の評価は、する方もされるほうも、年収に直結します。
その現状に不満や迷いあると、安心して会社で力を発揮できません。
今上司である人も、かつては上司からフィードバックされた評価について不満をもったこともあったのではないでしょうか。
また、自分から見た部下への評価は良くても、上位者によって評価が修正される…などの「組織的調整」が入ることもあるでしょう。その結果、低い評価を本人にフィードバックしろと言われても、部下をよく知る上司としてのフィードバックは曖昧になってしまいます。ランクが下がる理由を聞かれても、明確に説明できないという現象も起きてしまいますね。
このような「評価のひずみ」は、いまだに多くの会社で起こっています。
今まで行われてきた評価制度は、そろそろ見直すべき局面にあるのではないでしょうか。
一般企業の評価方法はふたつ
評価には、相対評価と絶対評価があります。
学力の評価方法として話題になることが多い言葉ですが、企業の人事評価も結局のところ、どちらかで評価されることが多いのが現状です。
実際、多くの企業で取り入れられているのは相対評価です。
しかし近年では、成果主義やグローバル化の影響を受け、絶対評価や認定評価といった評価の方法を採用し始めている企業も多く、一部段階的にでも取り入れ始めた企業も増え始めました。
企業でよく使われている相対評価とは
企業での相対評価とは、順位を付けた上から、「S評価→A評価→B評価→C評価→D評価」と評価を付ける方法です。
この場合、中央値をボリュームゾーンに設定していることが多いため、自動的にS評価・D評価は人数が少なく、C評価が最多となり、ついでA評価B評価が多くなります。
組織に20人いると仮定すると、
S10%→2人
A20%→4人
B40%→8人
C20%→4人
D10%→2人
ということです。
このように機械的に評価するため、全体的に成績が良いと、自身の成果が前年より良くてもB評価になることもあり、逆に前年と同じくらいの成果でも、まわりの成果が低いケースでは、前年B評価→A評価に上がることもあり得ます。
つまり、個人の設定した目標に到達していても、評価が下がるという結果にも、なり得るのです。
デメリットもある絶対評価
絶対評価とは、相対評価とは逆に、目標設定を超えた成果を上げれば、たとえ20人全員でもS評価になる評価の仕組みです。
個人を見て評価ができるため、相対評価よりは公正なようにも思えます。しかし、誰も目標設定を超えなければ、全員がD評価になる可能性もあるのです。
個人の満足にはつながりやすく思えますが、組織としては運用も難しいため、「絶対評価が良い」とはとても言い切れません。
現状の評価制度が「うまくいっている」という企業は少ない
会社の評価制度が相対評価・絶対評価どちらであったとしても、「今の評価制度は完璧だ」といい切れる企業はないでしょう。
そして、もしあなたが、期末直前になって
「そう言えば、あいつの目標ってなんだっけ?」
と、部下が書いた目標管理シート急いで確認するような方法を取っているならば、部下の納得する評価は下せていないはずです。
しかし、上司の「評価スキル」自体の向上や、取り組み・行動はあまり指導されません。
「評価下手」を改善する機会もノウハウも与えられないため、部下を納得させられる評価ができる上司もどんどん少なくなっている・・・そんな会社が多いのが現状なのです。
部下の「いいところ・悪いところ」を的確に把握し、ひとつひとつの目標に対してのフィードバックができる。
そんな上司が増えたら、自然と部下と上司に信頼関係が生まれ、会社の「評価スキル」自体が上がっていくはずです。
ノーレイティングという新しい評価方法
ノーレイティングという評価方法があります。
これは絶対評価のひとつで、「ランク付けをしない評価制度」と言われています。
今までのような年次評価ではなく、リアルタイムで目標設定をして、短期間で上司とミーティングを行い、そのフィードバックにより、その都度の評価がされるという方法です。
これには、部下の行動をすぐに評価できるというメリットがあります。その結果、良いことも悪いことも、新しい情報・記憶で判断を下せるため、双方に納得感が生まれるのです。
しかし、ノーレイティングだけが、正しいわけではありません。危ないのは、上司が個人の好みや管理職への忖度で、短期間に評価をゆがめてしまうことです。
「ノーレイティング風」を装い、表面的に良い評価をした気にならないよう、導入には注意も必要です。
ノーレイティングの手法は、日本企業では取り入れられ始めたばかり。
安易に導入するだけではなく、最良を目指し改善していき、新しい評価システムをその企業にあった形態へアップロードしていきましょう。
ノーレイティングを機能させる3つのポイント
ノーレーディング導入の前提条件を見ていきましょう。
ポイントは3つです。
(1)上司と部下が頻繁に評価面談を行い、目標に対する達成度合いをお互いに記録すること
(2)管理職に、部下の報酬額を決定する権限と原資が配分されていること
(3)目標管理制度によって、社員の目標がきちんと定まっていること
部下本人とのすり合わせも重要です。本人の「達成していない」「達成した」という思い込みを客観視し、お互いに「ここまで出来れば、この項目は達成」という基準も、しっかり話し合うことが求められます。
また、部下によって自己評価の高低には差もあります。
そのため、「ここが現時点での平均値」という、数値データの資料も準備できるとベストです。
頻繁にミーティングを行い、評価面談をすることで、双方のコミュニケーションがはかれるのも、ノーレーディングのメリットです。
「この仕事には、こんな意図がある」という共通認識を持てたり、「この部下にはこういう方面が向いている」という気付きが生まれることで、育成面でも方向性を描きやすくなるでしょう。
注意点は、権限と原資です。
上司がそれを把握しないまま高評価してしまうと、結局調整が入り、部下の評価は上がらなかったという事態も起こり得ます。そうなると、上司・部下ともに会社への不信感をつのらせる形になるだけで、いいことはありません。
経営者・管理職は、ある程度の権限は評価者である上司へ渡し、実際接している部下への評価を適宜判断させるようにしたいですね。
経営者・管理職も、部下の行動や性質を把握できるようコミュニケーションをとる機会を増やしましょう。そして、評価者である上司とも面談を行い、不均衡になっていないか、などを注視する必要があります。
まとめ:ノーレイティングが機能すれば、信頼関係が自然とできる
上司の重要な業務のひとつに、メンバーの人材育成がありますが、人材育成と評価制度は、密接に結びついています。
今までと同じ、
人事部から「期限です」と言われるから、半期ごとのルーティンとして評価をおこなう…
面倒だけど、年度が終わるから評価をする…
といった姿勢からの脱却を目指し、評価を人材育成にも役立てましょう。
「評価のための評価」をやめることで、上司も部下も仕事を自分事として捉えられるようになったら、会社に活気が出ることでしょう。
もしあなたが現行の評価制度について限界を感じているなら、ノーレイティングという「究極の評価方法」への転換に向けて、準備を始めてみてはいかがでしょうか。