組織開発や風土改革に対して、どのようなイメージがありますか?
「組織内のコミュニケーションに問題がある企業が取り組むもの」
「“昔ながらの”から脱却できていない企業が取り組むもの」
のような、少しネガティブなイメージがあるかもしれませんが、実はそれだけではありません。
激変するビジネス環境下で生き残っていくために、価値を生み出し続ける組織への変革を目指す、未来志向の組織開発に取り組むタイミングにきています。
しかし、「さあ!組織開発だ!」と何の躊躇もなく動き出せる経営者の方、人事や経営企画部門の方はあまり多くないのではないかと思います。なぜならば、ときに組織開発や風土改革は出来ることなら触れたくないパンドラの箱のように見えるから。
「これまでを否定することになるのでは」「経営と従業員の間に溝が生まれるのでは」「現場から反感を買うことになるのでは」などアレコレと想像を膨らませ心配してしまったり、ハードルの高さが目に見える故に一歩が踏み出せなかったり。
使命感だけで乗り越えるには厳しい心の葛藤がそこにはあります。
組織開発や風土改革のテーマは、「ボトムアップ型組織への変革」「エンゲージメントの向上」「コミュニケーションの改善」など、さまざまです。検索をすれば成功事例はいっぱい出てきますが、検索ではひっかかりにくい、失敗に終わった組織開発・風土改革が世の中には多くあります。
上手くいかない要因が分かれば、組織開発というミッションへの得たいの知れない不安感が少し和らぐかもしれません。
目次
組織開発がうまくいかない要因とは?
【1】経営トップがコミットしていない
組織開発は経営トップの覚悟と積極関与が必須要件です。社員のボトムアップの提案で進められているプロジェクトであったとしても、早いタイミングで経営層との合意をして、経営課題として取り組んでいくことが求められます。
【2】組織全体を巻き込めていない
組織が大きくなればなるほど難しくなりますが、選抜型や有志・希望者を集めた形で進めようとしても、全体への波及には限界があります。
【3】現場に定着させることに力を割けていない
一過性で終わらせないためには、継続できる仕組み化がカギです。組織が変わるには、それなりの時間がかかります。定着まで見据えないと意味がないのです。
うまくいかない要因がクリアできれば、組織開発の成功確率は上がります!
少し不安感は和らいだでしょうか?おそらく「組織開発やっぱり大変やん!」というご感想が大半かと思います。
組織開発はスピード感をもって一気に全体にテコ入れができると良いのですが、現実はそうはいかず、ステップバイステップで一歩ずつしか進めません。布石を打つために踏み出す小さく大きな第一歩(=スモールステップ)!組織開発のスモールステップとは?その切り口の例をご紹介します。
組織開発のスモールステップにオススメの切り口3選!
1.健康経営
「健康」は誰しもが関心があり、他社との間で利害関係が生じにくいという点から全社的に始める際にうってつけのテーマです。
例えば、「健康増進プロジェクト」としてチーム対抗で成果を競うという企画が考えられます。ダイエット・禁煙・筋トレなどに取り組むことを通して、自発的に目標を設定し、行動を変え、お互いに励まし合うプロセスを体験できます。このプロセスに自然と慣れることが、その後より大きなテーマで意識・行動変容を求められたとき、経験値として活きてきます。
健康増進の面では、身体が健康になることで心身ともにメンテナンスされた状態となり、生産性アップにつながるといったセルフコントロールの効果が見られます。
そして、組織開発の面でも特にコミュニケーション機会を増やす効果は期待以上のものがあります。普段業務ではあまり関わりのない人とのコミュニケーションや様々な部門・年代の人が混ざってのコミュニケーションは、その後組織横断的なコミュニケーションができる組織となっていくための足掛かりになります。
2.理念浸透
企業理念や行動指針、VALUEなどを定めている企業は多いかと思います。何十年も変わらないものもあれば、中長期的な変革プロジェクトの合言葉となっているようなものもありますが、これらが十分に従業員に浸透していると自信を持って言える組織は多くありません。
ここでオススメできるのが、「理念」を日々の行動に落とし込み習慣化させるところから組織開発を進めるという方法ですが、ポイントが3つあります。
1点目は、自分の行動習慣は自分で決めること。もちろん会社として徹底してほしい行動習慣は必須のものとして実践を促すべきですが、それだけではなく自分でやると決めた項目があることが大切です。
2点目は、行動習慣の可視化をすること。誰がどんな行動習慣を実践しようとしているのか、実際に実践できているのかを出来る限り社内の広い範囲で見えるようにします。可視化によって相互に刺激を与え合う素地ができます。
3点目は、経営層の方も積極的に関わること。自らも行動習慣を開示し、従業員の実践状況に対しては認めてあげると、より活動が促進されます。
この方法は組織開発の一部を切り取った形のため、その後取組み拡大していく入口として、非常にスムーズです。
3.社内研修
社内研修とコラボレーションさせて初めの一歩を踏み出してみるのも一つです。研修での学びや気づきの効果を、現場に戻ったときに持続させられないという理由から、社内研修実施のみに留まる組織開発は難しいと言えます。
しかし、「社内研修をキックオフと位置付けた中期的な業務改善プロジェクト」のような、単発で終わらせない形であれば組織開発の効果が十分に期待できます。研修に参加したメンバーと長期間チームで動くことが多く、自然とリーダーシップを発揮する経験を積むことにもつながります。
どうしても研修起点の場合、通常業務外の色が濃くなるため、研修後に現場に戻っても積極的に取り組んでいけるかどうかは、直属上司をはじめとした周囲の理解を得られているかがカギです。
まとめ:組織開発のスモールステップは「行動習慣を変える」経験をすること
今回ご紹介した切り口で共通しているのは、大小関わらず「行動習慣を変える」という要素が含まれていることです。
「意識を変える」のは非常に難しいことです。自分の意識を変えるのも簡単ではないのに、他人の意識を変えようというのはただごとではありません!他人の意識を変えるには、仕組みから変えることが一つの成功パターンです。仕組みを用意して、行動習慣を変える、行動習慣を変えた先に意識の変化がある。この経験を積むことが組織開発の小さくて大きな一歩となります。