コラム

自分らしくいられる居場所を複数持つことがウェルビーイングを育む

本コラムでは「ウェルビーイングと居場所」について考えてみたいと思います。

ウェルビーイングって何だろうか

ウェルビーイングという言葉にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
なんとなく健康な状態なのか。幸せかどうかじゃないのか。イキイキしていることじゃないのか。様々なイメージをお持ちかと思います。

WHOが「健康」を定義する中で「肉体的・精神的・社会的にウェルビーイングな状態」と表現していますが、ウェルビーイングの感じ方そのものは人によって異なるので、明確な定義が無いものなんですよね。「Well」と「Being」と考えれば、良い在り方や状態と言えるでしょうか。

そのように考えると、ウェルビーイングは「現状を前向きにとらえられている」か。「将来に肯定的な見込みを持つことができている」か。あくまで自己決定による主観的なものと言えると思います。

ウェルビーイングと居場所の数が比例する

先日、白秋共同研究所さんのイベントにて予防医学研究者の石川善樹さんが、プレゼンテーションの中でとても興味深いデータを紹介してくださっていました。元データは令和元年度の内閣府による調査で「子供・若者の意識に関する調査」というものからです。

データが物語っていたのは「居場所の数」と「ウェルビーイングに類する心理的な指標」の相関です。
例えば「今の充実感」や「自己肯定感」「チャレンジ精神」「社会貢献意欲」は、居場所の数が多ければ多いほど高いという結果が示されていました。

居場所というのは、分かりやすいところで「家」や「職場」などでしょう。それ以外の第三の居場所「サードプレイス」と言える場所を持っているかどうかが大きく影響しているのかもしれません。ちなみにアメリカの社会学者のレイ・オルエンバーグ氏による「サードプレイス」の定義は「家庭や職場での役割から解放され、一個人としてくつろげる場」とされています。

つまり「自分らしく振る舞うことができる」ような居場所があるかどうか、そのように私は考えます。またはその居場所を通じて「自分らしさを認識したり、形成したりできる」ような場をいくつ持っているかということなのでしょう。それは物理的な場所とは限らず、人のつながりによる居場所と考えると良さそうです。

思い浮かべてみてください。家や職場や学校などの居場所以外の第三の居場所をいくつ持つことができているでしょうか。

第三の居場所を持たないリスクと居場所をいくつも持つ効用

わたしはビジネスパーソンの方のキャリアの悩みや、ウェルビーイングに関して広く相談に乗る機会があります。そんな時にお話をうかがってみると、忙しくて家と職場以外にコミュニティには属していないという方もそれなりに多くいらっしゃる印象です。極端な例かもしれませんが、家と職場の往復しかしていない場合、様々なリスクが潜んでいるかもしれません。

自分の会社の価値観だけでものごとを観てしまうことで、自分の強みを適切に認識できないということもありえるでしょう。また、社内で積極的に挑戦をして失敗しても助けてもらえたり、AがだめでもBの道もある、というようなセーフティーネットが築けていないかもしれません。誰かにサポートしてもらえなければ、日々のストレスを抱え込んで蓄積してしまうかもしれません。

やはり、できることなら居場所を複数つくることが望ましいと言えそうです。自分らしく振る舞える場所があって、ポジティブなコミュニケーションをとれる場所があればあるほど日々の生活が楽しく有意義なものと感じられるのは当然のことかもしれません。心の充実感という意味では間違いないですね。結果として視野を広げることになったり、挑戦しても大丈夫という安心感から積極的に行動できるようになるかもしれません。

もちろん「家」も「職場」も自分らしく居られる居場所であることが望ましいですが、必ずしも理想通りいかないものです。常に周囲の状況は変化するものという前提に立っておくと、気持ちが楽ですね。

レンガは誰と積むか、何のために積むか

ここまでの話では、誰かと何かを共有することがカギを握りそうです。

例え話で「誰と行動を共にするか」は、わくわく感や良い緊張感を得るためにも重要だということを説明してみます。

「レンガを積んでください」と言われて、ひとりで黙々とやっても、ほとんどの人にとって楽しいものではないでしょう。では「全く素性を知らない人と一緒にレンガを積んでください」と言われても、やはり楽しいと感じる人はあまりいないでしょう。これが「大好きな〇〇さんと一緒にレンガを積んでください」というシチュエーションだとどうでしょう。ドキドキがとまりませんよね。レンガを積みながら楽しく会話をするかもしれません。何を話そうかなとワクワクもするかもしれません。もう「レンガを積む」という行為は手段に過ぎなくなるかもしれません(笑)

せめて一緒に何かを取り組む人が、どんな人なのか知っていくこと。最初はお互いを知らなくとも、少しずつお互いのことを知ることで変わります。好きにならずとも、この人のことは信用できるなとか、信頼できるなとか、仲良くなりたいなとか、一緒に頑張りたいなとか、そういった気持ちも生まれてくるのではないでしょうか。まずは知る機会をつくる、これが信頼関係をつくるための最初の一歩かもしれません。

ここでさらに「レンガを積む目的」がしっかり腹落ちして、自分の目標として、その仕事自体にやりがいに感じることができれば、さらに生産性が高まりそうです。目的を認識し、自発的に目標を立てながら、イキイキと取り組んでいくことでしょう。

目的を共有する「居場所」を見つけ、そこで「仲間」をつくっていくこと。ちょっとした行動からはじめることができると思います。(第三の居場所じゃなくとも、本来は会社、職場のチームもそういった場であるはずですし、意識していないことが多そうですが身近な家庭・家族でも大切なことです。)

心理的資本を高める資源としての居場所の存在

居場所としてはどのようなものがあり得るでしょうか。

  • 趣味のサークルやコミュニティに参加する
  • 社外の勉強会や講座に参加する
  • 社内の部門横断のプロジェクトに参加する
  • 地域活動に参加する
  • 友人たちと定期的に会う
  • SNSで発信しながら共通の話題の仲間を集める
  • 自分が落ち着ける好きな場所に行く

これらは一部ですが、意外と身近なところに機会や場はあるのかもしれません。

自分にとっての「誰を知っているか」「人のつながりのある場」は、結果として自分自身の大切な資産になります。何か目標を目指すときや、課題を持った時に相談をしたり助けてもらったりすることもあると思います。

人の前向きな行動につながる原動力となる「心理的資本」は、こうした自分の資産を適切に認識することも大切です。それらが行動する自信にもつながるからです。また、人は弱いという前提に立てば、誰かのサポートが得られる状態も大切です。(ソーシャルサポートと言います)
誰だって疲れてしまったり、誰かにサポートしてもらわなければ立ち直れないなんてことはあるものです。また自分のことを認めてもらえるようなポジティブなフィードバックをもらえることで、さらなる自信につながってくることもあるわけです。

少しでもやりたいと思っていることがあれば、仲間に入ってみる。または仲間を集めてみる。それが仕事につながることであれ、プライベートのものであれ、仲間を見つけるために、一歩踏み出してみるのはいかがでしょうか。

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
◆資料内容抜粋 (全16ページ)
・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

研究員リスト

  • 赤澤智貴
  • 小西ちひろ
  • 橋本豊輝
  • 石見 一女
  • Li Zheng
  • 心理的資本研究員
  • 下山美紀
  • 舞田美和
  • 岡本映一
  • 雪丸由香

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