ワークエンゲージメント。そしてワーカホリズムという言葉があります。一見仕事に没頭していると肯定的に捉えてしまいがちですが、本質はワークエンゲージメントとは異なるものです。
ワークエンゲージメントを進める上で、ワークエンゲージメントとワーカホリズムの違いを知る必要があります。
ワークエンゲージメントとワーカホリズムの違い
ワークエンゲージメントとは、
「熱意」(仕事に誇りややりがいを感じている)
「没頭」(仕事に夢中になり集中して取り組んでいる)
「活力」(仕事に積極的に取り組んでいる)
の三つが揃っている心理状態。仕事を楽しいと捉えポジティブな状態で取り組んでいる状況です。
ワーカホリズムとは、強迫的に働く状態。
「この仕事をしなければならない」という追い立てられたような感情から仕事をし続けてしまうことも。また、業務量の多さから黙って仕事を持ち帰りこなすなどプライベートの時間を使って対処するといったことになる場合も。このような状態を指す言葉が「ワーカホリズム」です。
ワーカホリズムの傾向を持つ労働者は,仕事において高い成果が得られることも多く、職場でも重宝されます。しかし、必要以上に仕事にのめり込んでしまうため、このような状態を長く続けていると心身に悪影響を与えてしまいます。
ワークエンゲージメント、ワーカホリズム。どちらも仕事の内容、そして成果に繋げる熱心さといった側面では同じように見えるかもしれません。しかし、どういった精神状態で仕事に取り組むかによって、やっている感・やらされている感が変わり、心の負担が大きく変わります。
ワーカホリズムとは
ワーカホリズムをはじめて提唱したのは、聖職者で宗教心理学者でもあったウェイン・オーツ( Wayne E. Oates )。オーツ は自分が仕事に依存している状態を指す言葉として、アルコール依存を指す言葉であるアルコホリズム(alcoholism)を参考にワーカホリズム(workaholism)という言葉を創り出しました。オーツはワーカホリズムを「絶え間なく働こうとする衝動または統制できない欲求」と定義。
また、Schaufeli, Shimazu, & Tarisの調査によると、ワーカホリズムに関して、「過度に一生懸命に強迫的に働く傾向」とされており、「一生懸命に働きすぎる」「強力かつ強迫的な内発的な衝動がある」といった2つの特徴がみられることが指摘されています。
ワーカホリズムには「時間の多くを仕事に費やす」「仕事中でなくても頻繁に仕事のことを考える」「組織からの期待や経済的な必要性以上に働く」などの様々な特徴があるとされています。
熱心に取り組んではいるものの自ら望んで取り組むわけではなく、働くことに強迫的かつやめられない状態です。
ワーカホリックな状態にある人は、仕事をしていないことに罪悪感を覚え、常に仕事のことが頭から離れません。仕事から離れることに不安を覚えるようになります。それら罪悪感や不安感を払しょくするために、より仕事に打ち込むようになるのです。
バーンアウトとは
ワーカホリズムは「強迫的に働く状態」。バーンアウト(燃え尽き症候群)とは、バーンアウトととは「燃え尽きる」という意味。今まで熱心に仕事に取り組んでいた人が、急に熱意や意欲を失ってしまう状態を表しています。
バーンアウトになる原因は、ストレスや疲労が蓄積される、精神や身体へのストレスがかかり続けるといったことにあります。バーンアウトになると、仕事への態度が変化、 急に欠勤や遅刻が増える、 仕事のミスや雑な対応が増える、 感情や意欲を失う、人とのコミュニケーションをとりたくなくなる、といった状態になってしまいます。
ワーカホリズムな状態が続くと、バーンアウトやメンタルヘルス疾患につながるリスクが高いと言われています。ワーカホリズムは仕事をしていると気持ちが落ち着くため、自身でストレスに気づきにくく、体調不良になってようやくストレスを自覚することも。不調に気づいてからも仕事をすることで落ち着くため、より仕事に邁進し、ストレスを蓄積させるという悪循環に繋がる場合もあります。
ワーカホリズム・バーンアウトをふせぐためには
ワーカホリズムな状態が続くと、バーンアウトに陥ったり、メンタルヘルス不調にもつながりかねません。その状態を改善し、ワークエンゲイジメントを高めることが大切です。
ワーカホリズムとワークエンゲイジメントは、仕事に対してたくさんのエネルギーを注ぐ点は共通しているものの、ワークエンゲイジメントは仕事をポジティブに捉え、ワーカホリズムは仕事をネガティブに捉えているという根本的な違いがあります。
この根本的な違いを理解したうえで、ワーカホリズムを低減させ、ワークエンゲイジメントを高めることが必要です。
従来のメンタルヘルス対策では、不調をいかに防ぐかいったネガティブな結果を防ぐためのストレス要因低減策が主体でした。
しかし、現在は従業員の雇用維持が難しく、努力しても将来的に報われる未来が見えない状況。企業の形も垂直(ピラミッド)型組織から水平(ネットワーク)型組織への転換が進み、個人の自立が求められています。
これからは従来のストレス要因を低減させるだけの対策でなく、個人・組織の強みを伸ばし成長へと導き、仕事の資源(仕事のコントロール、上司・同僚の支援、報酬、フィードバック、コーチングなど)を充実させる取り組みが求められています。ポジティブな面に注目することが必要です。
従業員一人ひとりのキャリアをどのようにして伸ばしていくか、動機づけをいかに高めていくか、こういった視点を持つことが必要です。この視点が従業員一人ひとりの生産性、そして組織の生産性へと繋がります。
そして、マイナスに注目しそれをなくすアプローチ以上に、プラスの面に着目し伸ばす取り組みが必要となっています。