ようやく「心理的資本」の話題が、増えてきたように感じます。
人的資本、ウェルビーイング、エンゲージメント、心理的安全性、、、様々な情報が毎日のように経営者をはじめとするマネジメント層や、人材開発・組織開発をミッションとする人事部門の方々が目にするメディア等で発信されるようになってきました。それらの文脈のひとつではありますが、私たちが大切にしてきた「心理的資本」についても注目が集まりつつあります。
いずれにしても、これらの人を大切にする、人がイキイキすることを目指すキーワードたちが単なるバズワードにならず、本質を理解し、実効策として継続的に取り組まれることを切に願っています。働くひとりひとりが実感できるようになるまで!!
さて、最近の話題をいくつか共有します。
目次
ニューロサイエンスの分野と人的資本経営がテーマの講演
HRカンファレンス2022-秋-にて、心理的資本をテーマにした講演があるようです。
「仕事に対する“モヤモヤ”を“ワクワク”へ変える働きがいを高め人的資本経営を実現する「心理的資本」とは」と題し、株式会社電通の高橋氏による講演前インタビューが公開されています。心理的資本にご関心のある方は、参加されても良いかもしれません!
講演では、早稲田大学の脳神経科学や人材組織マネジメントを専門とされる枝川教授と実施された調査結果も知れるようです。心理的資本を高めるための指標の開発、そして高めるための論理的アプローチの開発が主題のようです。
人の心に注目した、経営学における研究。それが心理的資本の研究になるわけですが、人の心に作用するので、幸福感や高揚感、ストレスなど、様々にホルモンなどが影響しているであろうことは明白。脳神経科学(ニューロサイエンス)における議論は、共通点も多く面白いです!
ちなみに…ですが、思い切りポジショントークになりますが!
私たちは心理的資本診断®を用いて、既にデータを継続的に測定しながら、これまでの研究で明らかになってきた介入アプローチ方法を実践的に行っています。実践を経て、実際に具体的な成果が生まれている方法を体系化しています。PsyCap Master認定講座では、その手法を身に着けてもらうことを目指しますので、ご関心ある方はぜひお申込みください。
常々、私は思っているのですが、研究結果に基づき、それは実践を経て初めて”使える”技術となるということです。そして一過性にしないことが大切。私たちは継続的に心理的資本を制御しながら、ひとりひとりがイキイキと活躍できる状態を目指すことが大切だと考えます。
スター社員とハイパフォーマンス社員の違いと心理的資本
もう1つ、日本の人事リーダー会の会合レポートでも、最新の研究に基づいた興味深いディスカッションが行われていましたので共有です。
神戸大学の服部准教授の提言を受けた皆さんが、飛びぬけて高い能力を持つ「スター社員」は、どのような“経験”を通じて生まれるのか~優秀な人材が「突出した人材」になるためのEmployee Experienceを考える、をテーマにお話されています。
近年は、組織の平均レベルをはるかに上回る成果を上げる「スター社員」が、企業の業績に与える影響が大きくなっている。こうした「スター社員」はどのような経験を通じて高い能力を持つのか。企業は「スター社員」候補にどんな経験を提供すればよいのか。今注目の従業員体験(Employee Experience)や、キャリアデザイン、組織文化など、人事に関するさまざまな重要課題が絡む本テーマについて、神戸大学・服部泰宏氏の提言を受けて、日本を代表する企業の人事リーダーたちが語り合った。
分かりやすいなと思った表現として、心理的資本は「心のしなやかさ」であり「やりぬく力」をあわせもっているということでしょうか。
ハイパフォーマー社員は人的資本(知識やスキル)、社会関係資本(人的ネットワーク)を持っており総じて優秀とされています。継続的にパフォーマンスを発揮するスター社員はそれらに加え、心理的資本を持ち合わせているとされます。面白いのはハイパフォーマーとスター社員が完全一致するわけではなく、重なりが一部であるという点です。
成果をあげることは大切ですが、その成果からおごってしまったり、成功体験から逆に抜け出せず柔軟性を欠いてしまうようなことが起こり得るからでしょう。記事中にあった「成功者のトラップ例」が分かりやすいです。
成功者のトラップ(例)
1)傲慢(自分は特別という過剰な自己評価)
2)強みの弱点への転換(人を惹き付ける力→悪しき人心掌握)
3)当初は問題でなかった弱みの顕在化(あまり意見を聞かず突っ走る)
4)自身のやり方への固執
5)これらに、本人の責任ではない偶発的失敗が重なることで大脱線となる
例えば個人として、短期的にはハイパフォーマーとして評価されていても、周囲との信頼関係を築けるようなポジティビティ、状況が変われば柔軟に別の方法を描けるような心のしなやかさ、物事のポジティブなところに注目できる視点、失敗を糧にできることetc…そうした心理的資本を高め制御できるようでなければ、継続的な活躍をするスター社員とは言えないということです。
上司からの評価、数字だけの評価だけでは見えてこない、長期にわたって継続的に活躍するスター社員。
これって、一般的な評価だけに依存すると潜在的な活躍人材が見えてこないということですよね。
一方で、心理的資本は開発できるというのが特長。人的資本、社会関係資本を開発するにも、そのために前向きに行動するには土台となる心理的資本が間違いなく大切になると私は考えていますが、心理的資本を高められるマネジメントやコミュニケーションの風土をつくっていくことが大切だと思います。
ミドルシニアの活躍、定年後を考えた時の心理的資本
心理的資本について触れられている書籍も発刊されました。一般社団法人定年後研究所 理事所長の池口武志氏による著書「人生の頂点(ピーク)は定年後~サードエイジ=人生最良の時間をどう迎えるか」です。
著書の中で心理的資本は「心のバネ」という表現で紹介されています。
中高年期になると、役職定年や定年後再雇用への移行による大きな役割変化、親の介護・自身の病気による働く環境変化など大きな転機に遭遇します。
このような転機を乗り越えていく心のバネが心理的資本です。人生の頂点(ピーク)は定年後より
中高年人材が大手企業から中小企業へ転職する際の決め手になることは、専門性や知識よりも人柄といわれることが多いそう。これから伸ばすべき能力はそうした専門知識や資格ではなく「相手に寄り添える心の補強」ではないかという提言もされており、ミドルシニアのキャリア自律を考えた時に大切な観点になるのではと思いました。
また良い情報があれば、共有させていただきます!