褒めることが苦手な人は多いと思います。そんな人に朗報です。やりがいは褒めることでは生まれないのです。
マネジメントに従事している場合、メンバーとのコミュニケーションを通じて育成したりパフォーマンス発揮を促したりすることが求められると思います。
成長しようという意欲や、成果につながる行動が自発的に生まれてくる状態をつくるには、やはり「やりがい」とか「働きがい」というのがとても重要な役割を果たします。
増える「やりがい不足」の社員
いま、若手の離職理由には「やりがいを持てない」ことや「成長につながらない」のようなものがアンケート上位に入ってきていると聞きます。ここには重要な意味があります。
もしかすると、離職を防ぐためにメンバーの働く”満足度”を高めようと、甘い評価をしたり、褒めて伸ばすことを意識し過ぎるあまり「褒める」ことに終始してしまっていることも多いのではないでしょうか。「甘やかし」という表現になってしまうかもしれません。
もちろん「褒める」ことや、それ以前に「認める(承認する)」というコミュニケーションは信頼関係をつくるうえでも、相手の自信をつくっていくためにも、とても重要な働きかけであることは間違いありません。
マネジメントに従事される方は、褒めることが苦手だとしても、例えば「話をしっかり聞く」とか「ちょっとした変化にも気づいて声をかける」とか「おつかれさま」「よくやってるね」と労いの言葉をかけるようなことは相手を認めるという行為になるので、基本だと思ってやっていきましょう。
そもそも認める行為すらできておらず、コミュニケーション不足により「やりがい」以前の問題でメンバーの離職やパフォーマンス低下につながっているとすれば、それはそれで大問題ですよね!
話を戻しますが、基礎のキソとして最低限でも「承認」のコミュニケーションは必須だと思います。もちろん褒めるべきところはしっかり「褒める」ことも大切です。
ただ、ここで終わってはNGなのです。
大事にするだけでは卵はかえらない
褒めるだけで終わってしまうと、どのようなことが起きるでしょうか。
「これでいいんだ」「このままでも評価されるんだ」と受け取ってしまうこともあります。いわゆる”アガリ”という状態だと勘違いしてしまうのです。
自分はこれ以上は成長を期待されていないし、この場にいても成長できないと感じてしまうかもしれません。
逆にこれで十分評価されるなら、このままゆるくやっていればいいや~という状態にもなりかねません。
いずれにしても、この組織から求められるパフォーマンスはこんなものだという認識です。
「自分はもっとやれるし、やりたいと思っているのに、上司にも会社にもこれ以上は求めてもらえない。」「これで十分だし自分は今は困っていないし、これでいっか」といった状況です。これは勿体ない状態この上ないですね。
そんな話をすると、チャンスは自分でつくるものだ!という声がどこかから聞こえてきそうですし、それは間違いでは無いのですが、全ての人が積極的に自分で動いていける人ばかりではありません。
いやむしろ、そうやって動けるような自律型人材への変容を支援していくことこそ、マネジメントに求められる役割のように思います。
ここで「最近の若者は受身でよろしくない!」なんて切り捨てようものなら、これから生まれてくるはずのタマゴを捨ててしまうようなものかもしれません。
これはものの例えですが、タマゴを自力で破って生まれてくる生き物もいますが、親が多少刺激を与えたりすることで生まれてくる生き物もいますよね。生まれてきた子どもも、ひとり立ちさせるためには、あるタイミングから厳しい場にあえて放り出すような生き物もいます。
大事に扱うだけではなく、刺激を与えることができているでしょうか?
さらなる成長への期待や課題を共有すること
1on1ミーティングや、そうではなくとも職場でのちょっとしたコミュニケーション機会をイメージしてください。
しっかりとメンバー(多くの場合は直属の部下)に対して、さらなる成長への期待や、より高いパフォーマンスを発揮するための課題、業務上の改善点などを伝えることができているでしょうか。
フィードバックをしっかり伝えることは、その人自身の位置や状況を知る機会をつくり自己認識を促すことにつながります。
自己認識が進んだのなら、さらなる成長期待や貢献期待をしっかりと伝えることです。壁を乗り越えるためのギャップとなる課題をどうやって乗り越えていくか、障害をどう突破していくか一緒に考えて握ることです。こうした働きかけはフィードフォワードとして将来や未来に視点を向ける効果があります。
もちろんポジティブな賞賛・承認といった働きかけとセットで対話を進めることで、より効果的なものとなります。
(考えてみれば、改善点ばかりチクチクと言われても、あまり良い気はしないですし、認められていない感があります。最低限認めたうえでのフィードバック、そして達成すれば次のフィードフォワードが大切です)
ただ一方で、こうしたことができるということは、日常の働きぶりや、コミュニケーションや、相手のことを”ちゃんと見ている”ことが大切です。そうでなければ、どこを承認すれば良いか、どこを褒めたら良いか、どんなことをフィードバックすれば良いか、どんな期待をかけたら良いか全く分からないでしょう。
もし、ひとりひとりを全く見ることができていないとしたら。厳しい言い方をすると、これではマネジメントできているとは言いませんね。また数字だけ見ているのであれば、それは管理しているだけだと私は思います。
忙しくて余裕が無いとか、メンバーが多すぎてひとりひとりに関与できないということであれば、そもそもの仕事の進め方や、組織構成を見直すことが必要かもしれません。
これを書いている私も、毎度毎度は先ほどあげたようなコミュニケーションができているとは言いません。しかしながら、本コラムで取り上げたようなことは、意識的に1on1ミーティングや普段のコミュニケーションは行っています。
現場のマネージャーが、こうしたアプローチをできるようにならなければ、若手の離職問題は無くならないように感じます。
ちなみに、Habi*do(ハビドゥ)では、日ごろのメンバーの様子をメモしておけるパーソナルメモ機能があります。こちらの記事もよければご覧くださいね。
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