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データでみる職場の孤独、見過ごせないリスクの数々。離職率2.5倍、心身への深刻な影響も

コロナ禍でリモートワークが定着してきました。これにより多様な働き方が可能になり、素晴らしいことの反面、孤独を感じる人も増えているとのこと。
職場の孤独について、調べてみました。

働く人が職場で感じる「孤独」は、単なる寂しさにとどまらず、個人の心身の健康を蝕み、ひいては企業経営にも深刻な影響を及ぼす重大なリスクであることが、国内外の調査データから明らかになっています。

離職リスクが2.46倍に高まる衝撃のデータ

東京大学大学院医学系研究科の研究グループが2025年に発表した調査結果は、職場の孤独と離職の間に明確な因果関係があることを示しました。国内のフルタイム労働者を対象とした半年間の追跡調査によると、仕事において「ほとんどいつも」孤独を感じている人は、「ほとんどなかった」人に比べて離職リスクが2.46倍にも上ることが明らかになりました。これは、従業員の孤独感が、企業の重要な課題である人材定着に直接的な打撃を与えることを示唆しています。

さらに、Job総研が2025年に実施した「職場の孤独実態調査」では、職場の孤独が原因で退職を「検討した」または「実際に退職した」と回答した人が66.7%に達しており、多くの働く人が孤独をきっかけに離職を選択肢に入れている実態が浮き彫りになりました。

心と身体を蝕む孤独の脅威

職場の孤独は、メンタルヘルスに深刻な影響を及ぼします。前述のJob総研の調査では、孤独がもたらす影響として最も多くの人が挙げたのが「不安・ストレスを感じやすい」(40.1%)でした。専門家は、こうした状態が続くと、うつ病や不安障害につながる危険性を指摘しています。

影響は精神面だけにとどまりません。孤独は免疫機能の低下を招き、風邪をひきやすくなったり、病気の治りが遅くなったりすることが報告されています。さらに、心疾患のリスクを高め、将来的には寿命を縮めるほどの深刻なダメージにつながるという研究結果もあります。ハーバード大学が行った9年間にわたる追跡調査では、社会的なつながりが乏しい人は、豊かな人間関係を持つ人と比較して死亡リスクが2倍になるという衝撃的な結果が示されています。

生産性の低下が企業経営を直撃

従業員の孤独は、企業の生産性にも直接的な損害を与えます。米国の調査では、孤独を感じている従業員はそうでない従業員に比べて欠勤日数が7倍近く多く、これが企業にとって年間154億ドルものコストになっていると試算されています。

学術的な研究でも、職場の孤独とパフォーマンスの関連は裏付けられています。あるメタアナリシス(複数の研究結果を統合して分析する手法)によると、職場の孤独は、職務パフォーマンスの低下(相関係数 r=−0.35)、仕事への満足度の低下(r=−0.34)、そして燃え尽き症候群(バーンアウト)の増加(r=0.39)と有意な関連があることが示されました。

孤独感はまた、従業員のエンゲージメントを著しく低下させます。国際的な調査会社Gallupの報告によると、仕事に熱意を持ち、積極的に貢献しようとする「エンゲージメントの高い」従業員は孤独を感じる可能性が64%低い一方で、エンゲージメントが低い従業員は孤独に陥りやすい傾向があります。これは、組織への帰属意識の低下(Job総研調査で38.3%)や、仕事へのモチベーション低下(同37.1%)につながり、組織全体の活力を削ぐ要因となります。

孤独を感じる人の割合と背景

Gallup社の「世界の職場環境レポート(2024年版)」によると、世界の従業員の5人に1人(20%)が日常的に孤独を感じています。一方、日本では、Job総研の調査で約7割(69.2%)が職場で孤独を感じた経験があると回答しており、問題の深刻さがうかがえます。

特に、リモートワークの普及は、新たな孤独のリスクを生んでいます。Gallupの調査では、完全リモートワーカーの25%が孤独を感じており、これは完全出社(16%)やハイブリッドワーカー(21%)を上回る結果となりました。

職場の孤独は、もはや個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき経営課題です。従業員一人ひとりの心の健康を守り、持続的な企業成長を実現するためにも、コミュニケーションの活性化や、誰もが安心して働ける心理的安全性の高い環境づくりが急務と言えるでしょう。

リスクの種類 具体的なデータ・調査結果
離職リスク ・「ほとんどいつも」孤独を感じる人は、そうでない人に比べ離職リスクが2.46倍(東京大学)
・孤独が原因で退職を検討・実行した人は66.7%(Job総研)
メンタルヘルス ・孤独がもたらす影響の最多は「不安・ストレスを感じやすい」(40.1%)(Job総研)
・うつ病、燃え尽き症候群との関連が指摘されている
フィジカルヘルス ・社会的なつながりが乏しい人は死亡リスクが2倍(ハーバード大学)
・免疫機能の低下、心疾患リスクの増加などが報告されている
生産性・パフォーマンス ・孤独を感じる従業員は欠勤日数が約7倍(米国調査)
・職務パフォーマンスや仕事満足度の低下と関連(メタアナリシス)
組織への影響 ・職場への帰属意識が下がる(38.3%)、モチベーションが下がる(37.1%)(Job総研)
・従業員エンゲージメントの低下につながる(Gallup)

従業員の孤独にいかに対応するか

以上のように従業員の孤独を放っておくことは、企業としては経営的にもマイナスでしかありません。
そこで企業で行われている対策は、

  1. 「話すきっかけ」を作るコミュニケーション施策
    1on1やメンター制度の導入
    雑談を促す仕組み(社内カフェなど)

  2. つながりを深めるコミュニティ施策
    社内イベントやランチ会など

  3. 「心の健康」を守る専門的サポート
    産業医・カウンセラー面談やEAP(従業員支援プログラム)に加えて、最近ではAIメンターの活用も増えているようです。

株式会社Be&Doでは働く人のイキイキが個人を幸せにし、組織も高い生産性を生むとその実現を支援しています。
前向きな意欲と行動を生む心理的資本を踏まえたAIメンターが対応する「AIキャリア相談室HERO Me」を開発しました。従業員の孤独解消だけでなく、前向きな意欲向上の支援にお役に立てれば幸いです。

石見 一女

石見 一女

Be&Do代表取締役/組織・人材活性化コンサルティング会社の共同経営を経て、人と組織の活性化研究会(APO研)を設立運営。「個人と組織のイキイキ」をライフワークとし、働く人のキャリアと組織活性化について研究活動を継続。「なぜあの人は『イキイキ』としているのか」第1章30歳はきちんと落ち込め執筆、プレジデント社,2006年。

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執筆者プロフィール

石見 一女

石見 一女

Be&Do代表取締役/組織・人材活性化コンサルティング会社の共同経営を経て、人と組織の活性化研究会(APO研)を設立運営。「個人と組織のイキイキ」をライフワークとし、働く人のキャリアと組織活性化について研究活動を継続。「なぜあの人は『イキイキ』としているのか」第1章30歳はきちんと落ち込め執筆、プレジデント社,2006年。

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