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やる気を高め行動を促す新手法「ガイディング」とは -意味・特徴・効果・手法を説明

もしあなたが周囲の人の「やる気」や「イキイキ」を引き出し、主体的・自律的な成長やパフォーマンス発揮を促したいと思ったとき、どのように声をかけますか?自己流でコミュニケーションをとってみるが「本音を言ってくれない」というリーダーの声をよくお聞きます。

マネジメントの難易度は飛躍的に高まっています。例えば、社員の属性(性別・年齢・国籍・性格など)は多様化しています。2022年には中小企業にもパワハラ防止法も施行され、強引なマネジメントスタイルは社会的にも通用しなくなっています。さらに、働き方も多様化する中、従来のように飲み会(いわゆる飲みにケーション)に頼った支援にも無理があります。しかし、変化の時代と言われる今、ますます社員の主体的な成長が求められるでしょう。

このような背景から、マネジメント能力のアップデート・リスキリングが不可欠になっています。そこで有効となる人材育成手法が、”ガイディング(Guiding)”です。経営者、管理職、人事部はもちろん、企業や個人の活性化を支援するコンサルティング業、コーチ業、研修講師の方も新たなノウハウとして取り入れられる手法です。

本記事では、ガイディングについて、意味・特徴・効果・手法を解説します。

ガイディングとは

ガイディング(Guiding)とは、他者のポジティブな心のエネルギーである”心理的資本”を高めるコミュニケーション手法であり、人材育成手法の一つです。心理的資本を高めることで、心の柔軟性を生み、やり遂げる自信と自発的な目標を達成する行動を生むことができます。もう少し平易な言葉で言い換えると、ガイディングは人の「やる気」や「イキイキ」を促す関わり方の手法といえます。

参考:日本心理的資本協会

ガイディングは、職場でのマネジメントやキャリア支援、トレーニングの場で用いることができることはもちろん、様々な分野における目標においても有効な手法です。例えばスポーツ選手のトレーニングや、健康指導・健康増進支援、学校教育の場面や、受験や資格取得などの学業のサポート、子育てをはじめとする私生活にいたるまで、多様な場面で活かすことができます。

名称の由来

ガイディングはガイド(Guide)を元とした言葉です。ガイドは直訳すると、”案内人”です。ガイドと聞くと、観光や登山などに帯同するガイドを想像されるのではないでしょうか。まさしく旅のガイドのように、対象者が目指す目的地に向かって、コミュニケーションを取りながら共に伴走して支援をすることをガイディングと呼んでいます。また、そのような支援者をガイドと呼びます。

コーチングと比較したガイディングの特徴

コーチングとは、「自分自身の気付きを促すことを目的に、傾聴し、適切な問いかけをする」人材育成手法です。対象者が明確な課題を持っており、行動を起こしたいが、その方法に迷っている場合は、真の答えを引き出すコーチングの手法が有効です。

ガイディングは”心理的資本”を高める手法です。コーチングでは対象者に何らかの答えを見出してもらうことは可能ですが、加えて「やり遂げる自信や意欲」ともいえる心理的資本を持ち合わせていなければ、形だけの行動選択になってしまってまい、実際に行動を起こすことは難しいと考えられます。さらに、対象者自身の志(Will)がまだ明確になっていない状態で真の答えを見出すための問いかけが繰り返されると、対象者が “詰められている”という感覚に陥り、返って行動を起こせなくなる可能性があります。

このように、問いによって自分自身の気付きを促すコーチングと、やり遂げる自信や意欲を高めるガイディングはシナジーがあると考えられます。

また、ガイディングは対象者の課題解決を促す問いや行動を促進するためのノウハウが体系化されていることが大きな特徴のひとつです。その公式を理解し、使い方を習得することで、個人の力量依存になりづらく、汎用的に活用し易い手法です。

ガイディングは実証に基づいた手法

ガイディングは実証に基づいた手法です。株式会社Be&Doが提供する「CG1(Confidence Guiding One)」では、ガイド(株式会社Be&Doが認めた面談担当者)との定期的な6ヵ月のオンライン面談を通じた、ガイディングによる中核社員のパフォーマンス発揮支援を行っています。受講前後に実施する心理的資本診断®の結果では、受講者の心理的資本は6ヵ月間における前後比で平均で8.3ポイント、最大で28%ポイントUPしています。

心理的資本とは

誰しもがHEROになれる

ガイディングによって高められる心理的資本とは、ポジティブな心理的エネルギーで、積極的な行動や自立的な目標達成を促すエンジンです。PsyCap/サイキャップ(Psychological Capitalの略称)とも呼ばれます。ポジティブ心理学の流れをくみ、欧米にて2006年頃から研究が進んでいる概念です。日本国内では2010年代半ば頃より、研究者の間で注目されはじめています。2020年に初の翻訳本「こころの資本~心理的資本とその展開(中央経済社)」が出版されています。厚生労働省の発行する令和元年版 労働経済白書では、「働きがい(ワーク・エンゲージメント)を促進するための要因として、個人資源である心理的資本の強化が重要と指摘」として紹介されるなど、自律や挑戦を促す資本として近年注目されています。

どれだけ素晴らしい人的資本(知識やスキル)を持っていたとしても、多くの社会関係資本(社内外の人的ネットワーク)を持ってたとしても、前向きに行動しようという心理状態でなければ、宝の持ち腐れであり、その人本来のパフォーマンスを発揮することはできません。さらに、ビジネス環境の変化のスピードが早まり変化する中、人的資本、社会関係資本を自律的にアップデートしようという強い心理的資本を持ち合わせていなければ、その人のパフォーマンスはやがて低下するでしょう。心理的資本は、人がパフォーマンスを発揮し、結果を出し成長をしていくための基礎となる重要な資本であると考えます。

3つの資本と心理的資本の位置づけ

心理的資本は、エビデンス(科学的証拠)に裏付けされた概念です。心理的資本によって説明できる業績の割合は約10〜25%ということが明らかになっています。(こころの資本~心理的資本とその展開(中央経済社))また、心理的資本が高くなることは、望ましい態度(満足、当事者意識・熱意・活力、イキイキ・幸福感・楽しむ)や望ましい行動(主体的な役割外の働き・協働、生産性向上や業績)に正の相関が確認されています。一方で、心理的資本が低くなると、望ましくない態度(変化に対する皮肉・冷笑、ストレス・不安、離職意向)や望ましくない行動(コンプライアンス違反・問題行動などネガティブな逸脱行動)に負の相関が確認されています。(Aveyら(2011)P140-142 )

心理的資本は安定的であり、測定・開発が可能です。心理的資本を高めるガイディングは、人のパフォーマンス発揮はもちろん、強いては組織の業績向上の鍵となるでしょう。

ガイディングの手法

ガイディングの手法は、心理的資本の構成する4つの要素であるHERO(Hope、Efficacy、Resilience、Optimism)を軸としています。

心理的資本の4つの要素HERO

Hope(意志と経路の力)

ホープは、漠然とした希望というより、こうありたい(Will Power)意志力とそれを実現するための道(経路=Way Power)を描き、行動することを意味します。
ホープを高めるには、何らかのWill(意志)を明確にすること。そして、そこに向けて、どのような目標を立て、どのように行動をしていくのか見通しを立てることが大切です。

Efficacy(自信と信頼の力)

心理的資本におけるエフィカシーは、自信と信頼の力(効力感)です。「自分にもできそうだ」「わたしならできる!」という行動につながる自信であり、自分に対する信頼感でもあります。心理的資本のおける最も基礎となる中核概念で、他要素への影響が大きいものです。

Resilience(乗り越える力)

心理的資本のレジリエンスは立ち直り乗り越える力です。単に落ち込みからの回復というレベルではなく、困難な状況下でも、その困難を糧に大きく乗り越えて成長していく力を意味しています。ネガティブな出来事に限らず、ポジティブな機会もリスクとして捉えます。例えば昇進や抜擢、何らかのチャンスをリスクテイクしてものにするかどうかも、レジリエンスが関わります。

Optimism(柔軟な楽観力)

心理的資本のオプティミズムは、出来事を現実的に柔軟に楽観することで、物事を肯定的に理解、納得することを意味しています。ただ気分が良いとか、いつも楽観的だとか、根拠の無い「なんとかなる」とは異なります。また、気質や性格とも異なります。物事の捉え方や思考習慣であり、鍛えることができるものと考えます。

ガイディングサイクルによる対話の実践

ガイディングでは、「目標設定⇒行動する⇒ふりかえり⇒フィードバック」のサイクルを回し、「HERO」を意識して継続的な行動促進をします。目標は達成が可能だと本人が感じられるものを設定して、まずは小さくても一歩目の行動を起こすことが大切です。極端な言い方をすれば、「バカバカしいくらいの簡単なこと」からやってみることをおすすめします。実際に行動してみると、意外とそれ以上のことができることに気づくこともあります。さらに、行動した結果について内省を促します。ガイドは良い面に注目した承認・見直し・激励などのポジティブなフィードバックをして、本人が変化を実感できるよう支援します。

ガイディングサイクルを継続して実践することで、強固な心理的資本が形成されます。

ガイディングを習得するには

本記事でご紹介したガイディングの手法はほんの一部です。PsyCap Master®(サイキャップマスター)認定講座では、8週間のオンラインプログラムを通じて、心理的資本の概念やガイディングのスキルについて深く学ぶことができます。なお、PsyCap(サイキャップ)とはPsychological Capital/心理的資本)の略称です。講座での認定基準をクリアした方は、ガイディングのスキルを有するPsyCap Master®(心理的資本開発指導士)として、日本心理的資本協会による認定を受けられます。心理的資本について学ぶことができる国内初の認定講座として2022年10月に正式に開講し、2023年2月時点で総受講者は70名を超えています。

講座では、知識の習得だけではなく、受講者同士のディスカッションを通じた実践的な学びや、心理的資本を高める行動の実践による体感の学びによって講座が進むため、深い学びを得ることができます。

また、修了後に任意で参加できる認定者コミュニティでは、PsyCap Masterの仲間と繋がり、継続して学ぶことができます。

PsyCap Masterの声

PsyCap Master認定講座では、心理的資本を理解し、心理的資本を高める介入法であるガイディングを学び、活用できることを目指しています。ご自身の心理的資本をコントロールできることはもちろん、マネジメントやトレーニング、メンタリングやコーチング、様々な場面で活かしていただけることを目標にします。その一つの形として、ガイディングを用いた心理的資本を高める基礎的な方法を教える講座やワークショップを開催できることも目標のひとつです。

PsyCap Master認定講座を修了した受講者の実際の声を、インタビュー形式でご覧いただくことができます。研修講師、大学講師、フリーランス、コーチ業など、多様な方々から、心理的資本・ガイディングについてご自身の言葉でお話頂いています。下記に記事の一部をご紹介します。

ガイディングを現場で実践しよう

職場など、自身が他者にガイディングを実践することで、あなたの周囲の方々に”イキイキ”が波及することでしょう。そしてあなた自身がイキイキ過ごすためのスキルとしても役立てることができます。ぜひ、楽しみながらガイディングの実践にチャレンジする一歩目の行動を起こしていただければ嬉しく思います。

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
◆資料内容抜粋 (全16ページ)
・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
・構成要素「HERO」の解説/開発手法とは? など

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執筆者プロフィール

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

研究員リスト

  • 赤澤智貴
  • 小西ちひろ
  • 橋本豊輝
  • 石見 一女
  • Li Zheng
  • 心理的資本研究員
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  • 舞田美和
  • 岡本映一
  • 雪丸由香

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