人材不足傾向の高まりから、従業員の定着率改善や生産性向上のための施策に注目が集まっています。
また、多様な人材を活かした組織づくり、働き方改革の推進も進められています。
皆さんの会社の職場ではどのような対策をとられていますか?
よく耳にするのは、
- 従業員満足度調査のようなアンケートを実施して課題を見つける
- 人事評価制度を納得性の高いものにしようとしている
- 研修により社員教育を強化する
- オフィスを使いやすくしたりオシャレにする
- 福利厚生を充実させる
- 社内イベントを豪華にする
- コミュニケーションを促進する
などなど。
やり方にもよりますが、どれも間違いではきっとありません。
しかし!!
それで本当にしごとそのものに対する満足度は高まるのでしょうか。
仕事の満足は仕事からしか得られない
わたしが社会人になったばかりのころ、当時勤務していた会社の代表が何度も繰り返し言っていた言葉の中でひとつ、とても共感するものがあります。
「職業に貴賤(きせん)はない」という言葉です。
どのような仕事でも、その人がやりがいを持って働いていれば、それは尊いものという考え方です。
事実、その仕事があるおかげで、社会全体がまわっているのだとすれば、とても重要なものです。
どの仕事が偉くて、どの仕事がしょぼい、なんてことは一切ないのです。
つまり、どのような仕事内容であっても、仕事に対する満足は得られるはずなのです。
(迷惑行為を行ったり、非人道的、非合法な仕事はもちろん別ですよ)
前向きなやりがいが生まれるタイミングとは
では、やりがいというのはどのように持てるのでしょうか。
当然ながら、その仕事がどんな目的で、どのように世の中に役立っているのかという目的や目標が明確であり、そのビジョンが本人に伝わっていることも重要です。
そのうえで、加えて以下のようなことを経験したときに、その仕事に対する前向きな満足が生まれるものです。
- 仕事で何かを成し遂げるという達成感を体験したとき(達成)
- 自分の仕事が上司や仲間から認められたとき(承認)
- 責任の重い仕事をまかされたとき(責任)
- 仕事を通して自分の成長が実感できたとき(成長)
このような経験の積み重ねにより、仕事に対する意欲は高まっていきます。
仕事に対して夢中になり、自然と貢献意欲も高まり、目標達成・課題解決をするために試行錯誤・創意工夫も行うようになるということが容易に想像できると思います。
そして、従業員ひとりひとりが仕事そのものに対して満足し、成長できれば、組織の目標に向けて強力な推進力になります。
経営者であれば自社の従業員、組織を任された管理職の方であれば部下に対するマネジメントをふりかえってみてください!
- 達成体験が感じられるように支援していますか?
- 日々の仕事に対して上司や同僚から承認できていますか?
- 成長に合わせて責任のある仕事を任せていますか?
- 本人が成長を実感できるような評価をできていますか?
ハーズバーグの二要因論
ハーズバーグの二要因論をご存知でしょうか。
職務に対する満足感と、職務に対する不満足を感じる要因は、まったく別の独立したものであるという考え方です。
産業構造の変化に伴い、企業の経済活動における生産性の定義も変化しています。
第三次産業革命を経て第四次産業革命へと時代は進んでいます。
多くの従業員のクリエイティビティが求められる職場、かつ多様な背景を持つ従業員が存在する職場では、より個々の仕事そのものに対する前向きな満足が重要になります。
- 職務に対する満足度を高めるためには、仕事そのものからしか得られない。
- 職務に対する不満足を感じるのは仕事そのものではなく環境要因である。
環境要因とは、具体的にはオフィス環境や給与条件、制度、上司のマネジメント力など。
環境要因が満たされていても、職務に対する前向きな満足感を得ることは難しく、満たされなければ不満足につながるもの。
不満防止にしか使えないということなのです。
以下はモチベーション研究者である松井賚夫教授による実証研究の結果です。
環境を整えることで、マイナスをゼロにするという役割は果たすでしょう。
しかしながら、現場が自律的に課題解決をする本当に強い組織・自律的に成長する組織はできません。
ゼロをプラスに、マイナスをプラスにして、さらにシナジー効果を組織にもたらすことを考えなければ、これから人材不足から経営環境は厳しくなることが予想できます。
今、実行している(実行しようとしている)施策への投資は、本当に妥当でしょうか。
現場のひとりひとりの仕事に対する満足を高める施策になっているでしょうか。
ぜひふりかえってみてください!
参考文献:心理学的経営(大沢武志著,1993)