コラム

エンゲージメントスコアが伸び悩む原因は「心理的資本」にあり!制度改善への依存を回避すべき理由

人的資本経営の潮流を受け、多くの企業がチャレンジ機会の創出、評価制度の刷新、1on1の導入、心理的安全性の確保など、多種多様な施策を講じています。しかし、現場の実態はどうでしょうか。

「一定の成果は出たが、そこからエンゲージメントのスコアが伸び悩んでいる」 「離職率などの喫緊の課題が解消されない」

もし貴社がこのような「踊り場」に直面しているのなら、それは「制度や環境」という外側のアプローチだけでは限界に達しているサインかもしれません。今、注目すべきは、それを受け取る社員一人ひとりの「心の持ちよう」、すなわち「心理的資本」です。

なぜ、同じ「制度」でも人によって捉え方が違うのか

エンゲージメント調査において、同じ職場で同じ制度が提供されていても、回答が二分されることがあります。

  • 挑戦の機会: 「手を挙げれば異動できる」とポジティブに捉える人がいる一方で、「自分に合うものがない」「制度が不十分だ」とネガティブに反応する人がいます。
  • 上司のフィードバック: 「自信に繋がる」と感じる人がいる一方で、「自分のことをわかっていない」「忙しそうで相談しにくい」と感じる人もいます。

会社が提供する制度は等しくても、本人の受け取り方によってエンゲージメントは大きく左右されます。この「受け取り方のフィルター」こそが、個人の心の持ちようによるものなのです。

「制度改善」だけに依存する3つのリスク

心の持ちようを置き去りにし、制度(環境面)の充実だけでエンゲージメントを上げようとすると、以下の弊害が生じる恐れがあるかもしれません。

  1. 「至れり尽くせり」による「ゆるブラック」化
    制度を追求しすぎるあまり、社員を甘やかす状態になり、心地は良いが成長や緊張感のない、いわゆる「ゆるブラック」な職場を生み出しかねません。
  2. 「要望する側」という意識の定着による「成長の棚上げ」
    「会社が環境を整えるのが当たり前」というマインドセットになり、自身の成長や貢献を棚上げして会社への不満ばかりを募らせる構造に陥ります。
  3. 現場リーダーのプレッシャーによる「逆効果」
    人事が「環境」のみを整え、個人のケアを現場に丸投げすると、リーダーはやり方がわからないまま「スコアを上げろ」というプレッシャーに晒されます。この焦燥感はチームに伝播し、逆にエンゲージメントを下げる逆効果を生みます。

パフォーマンスのエンジン「心理的資本」とは

ここまで、平たく “心の持ちよう”と表現してきましたが、これは「心理的資本(Psychological Capital)」の概念で説明できます。 事業成果に関わるヒトの資本は3つの観点から整理することができます。

  • 人的資本(Human Capital): 知識・スキル(何を知っているのか)
  • 社会関係資本(Social Capital): 人的ネットワーク(誰を知っているのか)
  • 心理的資本(Psychological Capital): 前向きな行動の原動力(何をやろうとするのか)

いくら知識や人脈があっても、それを動かす土台となる「心のエネルギー(エンジン)」がなければ、パフォーマンスには結びつきません。心理的資本は、目標達成に向けて進むための「やり遂げる自信」や「自律的なエネルギー」を指します。

心理的資本の4つの特徴

  1. 業績への影響にエビデンスあり: 心理的資本への介入を行うことで、業績や幸福にも良い影響があることが研究で明らかになっています。離職コストの削減や生産性の向上まで期待できます。
  2. 計測・開発が可能: 一時的な気分や感情のように変動しやすいものではなく、安定的でスキルや能力に近い概念です。定量的な測定が可能。さらに、開発方法が体系化されています。
  3. 遺伝的な要因だけではない:前向きな感情や態度への影響は、パーソナリティ(遺伝的な資質など)の要因が大きいですが、うち40%が心理的資本が要因と言われています。教育やマネジメントで変えられる領域なのです。
  4. チーム・組織に伝播する:心理的資本の状態は、組織内における様々なコミュニケーションを通じて伝播し、相互に影響し合います。特にリーダーの影響力は大きく、メンバーへの波及効果は大きいです。

ワーク・エンゲージメントを高める「2つの資源」

「労働経済白書」でも引用されているJD-Rモデル(仕事の要求度―資源モデル)に基づくと、成果(業績や定着)に繋がるワーク・エンゲージメントを高めるには、2つの資源が不可欠です。

  • 仕事の資源: 「環境・制度」(成長機会、裁量権、情報共有など)
  • 個人の資源: 「心理的資本」

会社組織におけるこれまでの施策は「仕事の資源」に偏り、「個人の資源」がブラックボックス化されていたのではないでしょうか。 仕事の要求度(責任やノルマ)が高い状況で、これら2つの資源が不足すると、社員はバーンアウト(燃え尽き)を起こしてしまいます。

※【厚生労働省ウェブサイト】仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)とワーク・エンゲイジメントについて:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/backdata/2-3-08.html

まとめ:ヒーロー(HERO)を組織に宿す

心理的資本を高める要素は、その頭文字をとって「HERO」と呼ばれます。

  • H:Hope……希望/意志と経路の力(推進力の源)
  • E:Efficacy……効力感/自信と信頼の力(強さと行動の源)
  • R:Resilience……乗り越える力(回復力・成長力の源)
  • O:Optimism……楽観主義/柔軟な楽観力(柔軟性の源)

会社が「仕事の資源(制度や環境)」を提供する際も、このHEROを育むアプローチを組み込むことが重要です。同時に、社員自身も自分の心の状態を知り、メンテナンスする「セルフマネジメント」の視点を持つ。この双方向のアプローチが、エンゲージメントの停滞を打ち破る鍵となります。

「心の持ちよう」は、決して掴みどころのないものではありません。科学的なアプローチで、個人のエネルギーを高め、エンゲージメントを最大化させる組織づくりを始めてみませんか。

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赤澤智貴

赤澤智貴

株式会社Be&Doの事業開発ディレクター。学生時代、野球部キャプテンでチームマネジメントの失敗を経験し、「人を怒りでコントロールするのではなく、前向きな気持ちやモチベーションを引き出すリーダーシップ」が重要と気づく。新卒で採用支援会社にて企画営業を経験した後、2019年に株式会社Be&Doに参画。事業開発全般を担い、個人・組織の心理的資本の向上を追及している。また、アンガーマネジメントの普及活動にも取り組み、関西支部副支部長 兼 本部委員としてコミュニティ運営にも携わる。プライベートでは2025年より社会人お笑いに挑戦中。

心理的資本の概要/高める方法を資料で詳しく見る!心理的資本とは、人が何か目標達成を目指したり、課題解決を行うために前に進もうと行動を起こすためのポジティブな心のエネルギーであり、原動力となるエンジンです。「心理的資本について詳しく知りたい」方は、以下の項目にご入力のうえ「送信する」ボタンを押してください。
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・心理的資本が求められる背景
・心理的資本の特徴
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執筆者プロフィール
赤澤智貴

赤澤智貴

株式会社Be&Doの事業開発ディレクター。学生時代、野球部キャプテンでチームマネジメントの失敗を経験し、「人を怒りでコントロールするのではなく、前向きな気持ちやモチベーションを引き出すリーダーシップ」が重要と気づく。新卒で採用支援会社にて企画営業を経験した後、2019年に株式会社Be&Doに参画。事業開発全般を担い、個人・組織の心理的資本の向上を追及している。また、アンガーマネジメントの普及活動にも取り組み、関西支部副支部長 兼 本部委員としてコミュニティ運営にも携わる。プライベートでは2025年より社会人お笑いに挑戦中。
研究員リスト
  • 赤澤智貴
  • 小西ちひろ
  • 橋本豊輝
  • 石見 一女
  • Li Zheng
  • 心理的資本研究員
  • 下山美紀
  • 舞田美和
  • 岡本映一
  • 雪丸由香
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