コラム

レジリエンスを高めるために必要なこと~自律型の組織と人材づくりに

ビジネス環境は複雑を極め、変化のスピードも早く、グローバル化も進行。先行きが不透明な時代と言われます。
AI、IoT、ビッグデータを活用した第四次産業革命時代とも呼ばれるなか、企業の在り方や、個人の働き方についてひとりひとりが問われている現状です。
キーワードとなるのは「自律」です。臨機応変に課題を解決できる自律型組織・自律型人材が求められています。

その自律した組織、人材を形成する要素として重要なことのひとつとして「レジリエンス(resilience)」が注目されています。

レジリエンスとは?

「レジリエンス(resilience)」は、直訳すると「回復力」や「反発力」のように表現されます。

経営学・組織論等で用いられる心理学用語のひとつとして注目されていますが、もともと物理学でも用いられてきた用語です。ストレス(stress)と一緒に考えると分かりやすいでしょう。

ストレス(ある力、緊張)が一定以上かかることにより、反発してもとの状態に戻るような力のことをレジリエンス(回復力・反発力)といいます。弾力性とも言えるかもしれません。

BCP(事業継続計画)のように企業・組織としての危機管理のテーマにも「レジリエンス」は登場します。
リスクマネジメントの一種でもあり、ゼロからマイナスになってしまったときに元通りにいかに戻すかということです。
さらにマイナスから回復するだけではなく、以前よりもプラスの高みへと進化するような「超回復力」という考え方もあります。
(神戸大学経営学研究科の金井壽宏教授は、論文や講演・ワークショップの中で触れられている)

時に心が折れにくい人が「レジリエンスが高い人」と表現されます。
例えば、硬質な素材の壁があったとします。その壁は、簡単には壊れないかもしれないですが、何度も鉄球がぶつかっていると、ヒビが入ってきたり、少しずつ耐久力がなくなってきてしまいます。何度も同じところにぶつかることで、その部分からポキっと折れてしまい、崩れてしまうかもしれません。もしくはもっと硬い素材のものがぶつかると一発で壊れてしまうなんてこともありそうですね。
一方で、触るとやわらかいゴムや低反発素材のようなものだと、一度へこんでも元通りに戻ってきます。衝撃そのものを吸収してしまい、形状記憶のように回復をしていきます。イメージの話ですが、これを人に置き換えるとわかりやすいかもしれません。

「こうでなければならない!こうあるべきだ!」という考えが強すぎて完璧を求める人と、「何が起こっても仕方ない」「なんとかなる」と楽観的に考えている人との違いにも表れます。

働く中でストレスがないということは皆無に等しいもの。変化が読めず、流動性が大きい時代を生き抜くためには、しなやかに弾力のあるレジリエンスをもつことが重要です。

では、レジリエンスは身に着けることができるものなのでしょうか。

レジリエンスを高めるために必要なこと

組織のレジリエンスを高めるためには、やはりひとりひとりの従業員がレジリエンスを高めることが、結果として変化に強く問題が起きても柔軟に対応できる組織に近道でしょう。企業としての問題が起こった場合のエスカレーションやワークフロー、ポリシーをつくっておくなど体制やルールづくりでカバーする部分もありますが、それだけでは本当に予想外のことや未曾有のことが起こった場合の対応としては心もとないもの。
一人一人が自律的人材として、レジリエンスを身に着けておくことが大切です。

では個人としてレジリエンスを高めるためには?

業績に結び付く個人の心理的な状態を測る指標に「心理的資本(Phycap)」があります。
「希望(hope)」、「レジリエンス(resilience)」、「効力感(efficacy)」、「楽観性(optimism)」の4つが指標となります。

これらは相互に作用するもの。
例えば、簡単に言えば、効力感を高めることで、将来に対する希望も持つことができるようになりますし、自分ならなんとかなるという楽観もできるようになります。そして、想定外のことが起こっても対応でいるようなレジリエンスも持ち合わせることができるようになるものです。
(そして、想定外のことを対応できたとしたら、それはさらなる効力感の向上にも結び付きます)

効力感の高め方は明確です。

レジリエンスを高める自己効力感

効力感=自己効力感(Self-Efficacy)ともいいます。
カナダの心理学者バンデューラが提唱した概念で、「自分ならできそうだ」という有能感のことです。
自己効力感は、行動の変化に対して相関関係があります。
一方でモチベーションは行動の変化に対して相関関係はありません。

自己効力感が高い状態であれば、失敗して落ち込んだり、問題が起こってストレスをためていたりしても、「自分ならできそうだ!」「自分ならやれるさ!」と、回復することができるのです。(一時的なモチベーションが高いだけの状態なら、失敗して落ち込んだら、なかなか立ち直ることができないでしょう。)

また、レジリエンスを高めるためには、日々の思考の習慣や、行動の習慣を変容させていくことが求められます。
行動変容のためにも自己効力感が重要です。

例えばちょっとしたことでクヨクヨ悩まないことや、起こった出来事をポジティブに捉えること、目の前のことに囚われず長期的・大局的な見方をすること、ふりかえりをして次に活かすということなど、少し考えただけでレジリエンスのためには日々の思考・行動がカギにもなります。

自己効力感の高め方

自己効力感を高めるには大きく4つの方法があります。

達成体験

スモールステップで小さなことでもいいので、達成体験を積むことが大切です。
もちろん大きな目標の達成をすることで、より強力な自己効力感を得ることができることは間違いありませんが、大切なことは日ごろから自己効力感を高めていくことです。

だから毎日、目標に対しての進捗が実感できるように行動を細分化・ブレークダウンして、可視化することです。

毎日のやることリストをチェックリストとして実行するのも良いでしょう。スタンプカードのように、できた日に印をつけていくことでも良いでしょう。もちろん進捗をグラフでつけていくなども効果的です。

日々の積み重ねによる小さな達成体験、そしてその先にある大きな達成体験の繰り返しにより、自己効力感をよりいっそう高まっていきます。

代理体験

代理体験、またはモデリングともいいます。

代理体験とは、例えば自分の同僚や友人ががんばっている様子を見て、「あの人ががんばっているなら自分もがんばろう」「あの人にできるなら自分にだってできる」というようなことを感じる体験です。

共通の目標に向かっている他者のがんばりが目に入ること、耳にすることなどで効果が生れます。
近い距離で一緒に働いている、自分と近しい立場の人がいると良いですが、そうではない場合も多いでしょう。

働き方・仕事の進め方も多様になり、職場が離れ離れであったりシフト制や直行直帰で顔を合わさないケースもあるかもしれません。
そんな場合は、それぞれのふりかえりをITを活用して共有するという方法も良いですね。

言語的説得

言語的説得は、上司や教官や同僚などから「あなたならできるよ!」「応援しているよ!」「すごいじゃないか!」「よくがんばってるね!」というような声をかけることです。

励ましたり、褒めたりするような承認行為を行うことで、自己効力感は高まります。

特に効果が高いのは上司など目上の人からの励まし、背中を押すようなアプローチです。
また、行動の結果をしっかりと評価する声掛けをすることは、言語的説得効果だけではなく、「達成体験」として本人に実感を増幅させることにもつながるので効果的です。

生理的情緒的高揚

生理的情緒的高揚は、ドキドキ、ワクワクしているような状態を指します。
一種の興奮状態となります。ですので一時的なものになりがちなものですし、意図的に生理的情緒的高揚を起こすことは難しいものです。

何かをやり遂げた後の高揚で、「また次もチャレンジしたい!」と思うようなこともあるでしょう。
また、喜怒哀楽により「やってやるぞ!!」と興奮状態になっていることもあるでしょう。

少なくとも「楽しい」状態をつくりだせる環境や仕組みを用意することが良いでしょう。

例えば、達成度や進捗をグラフなどで可視化したり、競争やランキングや賞などを設けて良い意味でのゲーム感覚を与え刺激することも一つの方法です。

健康的な生活を心掛けることも大切

レジリエンスを高めるためには、心身を健康的な状態に維持することや、リフレッシュをうまくできることなど、自身の身体のセルフマネジメントも重要な要素になります。

いつも疲れている状態や、体調がすぐれない状態だと、やはり気持ちもポジティブになりにくい。

基本的なことですが、食事・運動・睡眠といったことを健康的に行えているかどうかが大切です。
思い切り遊んだり、好きな音楽を聞いたり、アロマの香りで癒されたり、なんでも話せる友人と過ごしたりすることもリフレッシュになるでしょう。

  • 暴飲暴食を避け、できるだけ栄養バランスを意識した食事を摂ること
  • 毎日の歩く距離をのばしたり、週に1度はスポーツを楽しむ
  • 眠る前までパソコンやスマートフォンを見ず、ゆっくり柔軟体操などをして質の良い睡眠をとり、起床後は朝日をしっかり浴びる

など、基本的なことを心掛けるだけでも違ってくるでしょう。

まとめ

レジリエンスを高めることは、日常的な意識と行動でできるということです。

  1. 目標を立てて、進捗を確認する日々のふりかえりを行うこと(達成体験を生む)
  2. 日々の小さな行動目標の達成を可視化して共有すること(代理体験を生む)
  3. 目標に対する励ましや、進捗に対する承認をすること(言語的説得を生む)
  4. 楽しむことができる仕掛けや環境を用意すること(情緒的高揚を生む)
  5. 健康的に過ごす生活習慣をひとりひとりが心掛けることを推奨する(健康的な状態に)

これらを、それぞれに習慣的に行えるようにしていけば、ひとりひとりのレジリエンスも高まります。
結果として組織のレジリエンスも高まります。

 
橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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・心理的資本の特徴
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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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  • 橋本豊輝
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  • 心理的資本研究員
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  • 舞田美和
  • 岡本映一
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