コラム

VUCAの時代求められているのは「自律」と「支援」~パフォーマンスマネジメントの具体策とは~

VUCAの時代。
企業を取り巻く環境は急速なスピードで変化し続けています。

たとえば、みなさん持っていらっしゃるであろうスマートフォン。
2008年7月にAppleが「iPhone」を日本で発売開始。その進化や変化は目まぐるしいものがあります。
AIアシスタントが実装され、指紋認証の機能が搭載。防水・防塵といった仕様になり、高速化は進み5Gの時代を迎えようとしています。

Volatility(不安定性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、 Ambiguity(あいまい性)
複雑かつあいまいな時代。
優れたビジネスモデルを実現できたとしても、優位性を保ち続けることは困難だといえます。

予測不能と言われ、変化が早く複雑な時代であっても、企業を支えているのは「人」であることには変わりありません。
VUCA時代へ対応でき、主体的に行動できる人材を育成していく必要があると言えます。

そして人材を育成し、成果を最大化させる「マネジメント」にも変化が求められています。

変化の速い時代 パフォーマンスマネジメントに注目が集まる

半年~1年前に立てた目標の達成度に対する評価、変化の速い時代では評価する時点では目標自体が意味をも持たない、ということはすでに弊害として現実に表れているのではないでしょうか。ましてそんな目標に対する評価は納得できるものであるわけがなく、半年も前のことに対してのフィードバックを受けたところで今後の行動や学びにつながるとは考えにくいでしょう。

マネジメントする側としても、半年以上も前からの記憶を辿る必要があり時間をとられるだけでなく負担に感じてしまう。また、結局のところ鮮明に覚えている出来事や直近の成果といったものを評価に用いる、といったことに陥りがちです。
仕事ぶりに対する評価ではなく、上司部下の間における属人的なつながりが重視される評価になる、といった問題にもつながってしまいます。

個人や組織のパフォーマンス(成果・ 業績)の最大化を目的としたマネジメント手法。
パフォーマンスマネジメントが注目されています!

そもそも「パフォーマンス」とは何でしょう。

やみくもに営業をかけていくのは「行動」。
契約を取るのは「成果」。
セールスポイントを分かりやすく説明資料を用意して営業に向かうのは「パフォーマンス」。

成果は、天気、経済といった自身ではどうすることもできない外部要因で結果が左右されてしまいます。
しかし、パフォーマンスは、説明資料を作る、セールスポイントを要約して伝える、それとも関係性を作りながら会話の機会を増やしていく、といったいろいろな選択肢があるのです。

パフォーマンスマネジメントは、メンバー一人ひとりの能力向上やキャリア開発を行うと同時に、成果創出に至るまでのマネジメントを行うこと、が目的です。
パフォーマンスマネジメントでは、メンバー一人ひとりが自律的考え行動を起こす、個人の成果を高めることでチームそして組織の成果へと繋げていくこと、に重きをおいています。
変化への適応と創造性の高い優れた成果を生み出すには「個」の力が重要となるのです。
VUCAの時代、自律的な判断や行動ができなければ、変化に対応することができなくなってしまいます。目標を達成するために何が必要か、自身で考え、道筋を導き出し、失敗を恐れることなくトライしていくことが必要とされます。
そしてマネジメントには「評価」ではなく、メンバー一人ひとりの成果を生み出すための成長を「支援」することが求められています。

パフォーマンスマネジメントの手法:ノーレイティング

メンバー一人ひとりの能力を伸ばしていくそしてモチベーションを向上させる。それと同時にビジネスにおける目標も達成させる。
と言われても具体的に次の行動に移す、のは難しい・・・ですね。

では具体的なパフォーマンスマネジメントの手法についてみていきましょう。

みなさん『ノーレイティング』はご存知でしょうか。

企業でよく使われているのは相対評価です。
相対評価とは、順位を付けた上から、「S評価→A評価→B評価→C評価→D評価」と評価を付ける方法。
この場合、中央値をボリュームゾーンに設定していることが多いため、自動的にS評価・D評価は人数が少なく、C評価が最多となり、ついでA評価B評価が多くなります。

相対評価では中間の評価を受ける人の割合が一番大きくなる傾向にあり、低い評価をにならないよう失敗を恐れチャレンジをしにくくなります。
失敗を恐れ、他人との比較を気にする。個人はもちろん組織としてのパフォーマンスの向上にはつながりにくい状況といえるでしょう。

ノーレイティングという評価方法があります。
これは絶対評価のひとつで、「ランク付けをしない評価制度」と言われています。

今までのような年次評価ではなく、リアルタイムで目標設定をして、短期間で上司とミーティングを行い、そのフィードバックにより、その都度の評価がされるという方法です。
これには、部下の行動をすぐに評価できるというメリットがあります。その結果、良いことも悪いことも、新しい情報・記憶で判断を下せるため、双方に納得感が生まれるのです。

パフォーマンスマネジメントの手法:リアルタイムフィードバック

メンバーに対して行動の結果に対して継続的に、管理職側からフィードバックする。
リアルタイムかつ多頻度。これはノーレイティングを実施する上でも併せて必要となる要素です。

リアルタイムフィードバック。
リアルタイムフィードバックを行うことで、仕事の進行状況に合わせた方向性の転換がスムーズになります。そして、そのつどフィードバックをすることで、「今更言われても…」という部下の不信感を生まずに済みます。スピード経営ができ、変化に対しても柔軟に対応することができます。
納得して仕事に取り組めますし、行動に対しての正しい評価がすぐにされるため、不平不満がなくなり、今後のポジティブな行動や態度にもつながるのです。また、軌道修正がしやすくなるので、パフォーマンスを上げることにつながります。

半年から一年といったスパンでの評価では、安心感も納得感も得ることができない、方向転換が難しいというのは明らかかと思います。
四半期、もしくは月1回程度の振り返りだけでは、自分の働きが上司にきちんと評価されているのかが、部下に伝わりません。そして、何週間も経ってからのフィードバックは、現代のビジネスの進め方としてはスピード感がなさすぎます。
そのような悠長な評価方法では、部下の仕事のスピードが落ちてしまうこともあり得るでしょう。

パフォーマンスマネジメントの手法:1on1ミーティング

上司とメンバーとの関係をより密にし、対話を進めることに重きをおきます。
年に一回、半年に一回といった評価面談の場ではなく、日常的に対話をする機会が必要となります。

1on1ミーティング。
1on1とは上司とメンバーの対話の場です。上司からの一方的な評価や報告を求める場ではありません。
主役はメンバー。上司側は自分が何を話すべきか、ばかりに気を取られがちですが、パフォーマンスマネジメントにおいて重要なのは相手の話をいかに聴くか、であることを忘れてはいけません。

上司側には、進捗の確認や業務における問題や相談だけにとどまらず、メンバーの経験について内省を促し、自ら次の行動に対する目標を立て実行してもらえるよう支援していくことが求められています。
VUCAの時代で変化が激しければそれだけ会社におけるミッションやバリューを再確認を継続的に都度行うことは大切となるでしょう。また、変化に対応し即座に行動へと結びつけるといったことも必要になります。

場とコミュニケーションを絶やさないようにする取り組みは、メンバーに安心感と信頼感をもたらします。日々変化する社員の状況と業務環境もコミュニケーションによって把握できるため、社員の成長のためにどうマネジメントするべきかが見出しやすくなります。
上司と部下の相互理解が進まない理由には、仕事をするうえでの常識に対する世代間ギャップや、コミュニケーション不足があげられます。
その課題を解決し、「人材の定着」を実現するためにも、新しい組織運営ツールとして「1on1ミーティング」を活用することは、メリットが大きいといえるでしょう。

ランク付けを行わない、相対評価をしない、ことがノーレイティングの本質ではありません。
上司とメンバーが日常的に1on1ミーティングを行い、目標を設定しリアルタイムにフィードバックを行う、細やかにそして頻度高く部下と向き合う姿勢が求められているのです。


レーティング評価を行わない「ノーレーティング」や、頻度高くフィードバックを行い評価する「 リアルタイムフィードバック」、定期的に対話を行う「1on1」。
上司がメンバーのパフォーマンスをマネジメントする仕組み、必ずしもすべてを行う必要性はありません。

また、やり方も必ずしもインターネットや書籍にある内容が正解ではありません。
1on1ミーティングでは、1週間に1回/30分ほどの頻度が理想といったカタチが記されているかもしれません。しかし、すべてのメンバーに対して毎週時間を確保するのは難しいという現状があるならばそこを無理する必要はありません。始めは、1か月に1回/30分からでもいいのです。
上司もメンバーもミーティングに慣れてくると、仕事のスピード感や環境に合わせた最適の頻度が分かってくるはずです。

大切なのはメンバーのパフォーマンスを向上させたい、個人の成長に繋げたい、という姿勢を表し、行動を起こすことです。
安易に仕組みを導入するだけではなく、最良を目指し改善していき、そのチームや組織にあったカタチへと変えることが重要なのです。

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