イベントレポート

【開催レポート】エンゲージメントだけでは解決策にならない?!心理的資本の第一人者とぶっちゃけトーク 

従業員の組織へのコミット度や、仕事への熱意などをあらわす「エンゲージメント」という言葉は、ここ数年ですっかり企業経営において浸透してきた感があります。離職防止や生産性向上など様々な効果を期待して、この「エンゲージメント」を高めたいと考えている企業は多いのではないでしょうか。
一方で、従業員のエンゲージメントをサーベイで測ってみたものの高めるために何をしたらいいかわからない、あるいは施策を実施しても思ったような成果が得られない、といった声も多く聞かれます。

そこでにわかに注目を集めているのが「心理的資本」という概念です。心理的資本とは、一人ひとりが持つポジティブな心のエネルギーで、前向きな行動を起こすエンジンのようなもの。学術的にも業績との相関が認められており、開発可能である(意図的に高めることができる)ことも特徴です。一人ひとりの心理的資本が高まらないと、単に従業員のコミットを引き出しただけでは真に組織の活力は高まらない。打ち手は心理的資本に鍵があると考えられ始めています。

そこで今回は、日本における心理的資本研究の第一人者である大阪大学 大学院経済学研究科 教授の開本浩矢氏をお迎えして、株式会社Be&Doの橋本豊輝が様々なケースもご紹介しつつ、「エンゲージメント」施策だけでは解決できない、真にイキイキとした組織づくり・人材づくりをどうすれば実現できるのか?という課題について、ざっくばらんにぶっちゃけトークしました。

2022年3月24日に開催した心理的資本セミナーのレポートとなります。

パネラー紹介

開本浩矢 氏(画面右)
大阪大学 大学院経済学研究科 教授・兵庫県立大学 名誉教授(経営学博士)
橋本豊輝(画面左)
株式会社Be&Do 取締役/COO

「心理的資本」とは?

橋本:本日は、「こころの資本」を翻訳出版され、心理的資本研究の第一人者の開本先生をお呼びしています。先生、よろしくお願いいたします。

開本:みなさんこんにちは。ご紹介いただきました開本です。なかなかハードルの高い紹介をされまして、第一人者なんて自分で言うと、とんでもない嫌なヤツになりますけど、人に言われる分にはいいかなと素直に喜んでます(笑)。今日はどうぞよろしくお願いします。

橋本:確かにそうですね(笑)。今日は「心理的資本」って言葉を初めて聞いたよって方もいらっしゃると思いますし、じゃあエンゲージメントとどう違うの?って疑問をお持ちの方もいらっしゃると思うので、まずは開本先生とお話を始める前に、ちょっと私の方から簡単な概要をご説明したいと思います。

橋本:「心理的資本」は、業績に影響するということで注目されている概念です。もともと経営学で、「人がパフォーマンスを発揮するためには何が必要か?」っていうことが長年研究されてきました。最初に注目されたのが「人的資本」、つまり知識やスキルみたいなものが必要だとされたんですけど、それだけではなかなかパフォーマンスが発揮されない。そこで次に注目されたのが「社会関係資本」です。これは仕事とか事業というのは誰かと一緒に取り組むものなので、社内外の人的ネットワークがパフォーマンスに影響するであろうということで注目されました。でも、知識やスキルを持っていても、人間関係をしっかり持っていても、それだけでは成果がなかなか生まれない。ということで注目されてきたのが、この「心理的資本」なんですね。
やり遂げる自信や自発的な目標達成を促すポジティブな心のエネルギーで、いわゆるエンジンのような役割を果たすものが「心理的資本」です。
「人的資本」や「社会関係資本」というのは、時代や環境、目標などが変化すれば、それに合わせて常にアップデートしていかなかければならない性質のものだと思うんですけど、そもそも、そこに向かうためのエネルギー源となるエンジンがないと、それを新しく得ていくこともできないですし、せっかくあるものを活かすこともできなくなるので、この「心理的資本」という考え方は非常に大事だと私たちは思っています。実際に海外のさまざまな研究によると、10%〜25%程度、業績に影響すると言われています。
この心理的資本を構成する要素は、今4つあると言われていまして、その4つの頭文字をとって「HERO」と訳しますが、「ホープ」「エフィカシー」「レジリエンス」「オプティミズム」ですね。私たちは、わかりやすいように日本語に言い換えているのですが、「ホープ」は「意志と経路の力」、「エフィカシー」は「自信と信頼の力」、そして「レジリエンス」は「乗り越える力」、「オプティミズム」は「柔軟な楽観力」というふうに表現しています。そしてこの心理的資本の大きな特徴は、「測定できる」ということと、「開発できる」というところです。
次に、最近の潮流もお伝えしたいなと思うのですが、まず厚生労働省の令和元年版の労働経済白書でも、この「心理的資本」が結構出てきています。「個人の資源」と表現されていますけど、ワークエンゲージメントに対する重要な予測因子であるとか、「仕事の資源」と「個人の資源」は相互に関連するとか、いろいろ書かれています。
ワークエンゲージメントと心理的資本は混同されがちですが、ここをうまく表現しているなと思うので、この図を紹介したいなと思うんですけど、

厚生労働省「令和元年版 労働経済白書」

橋本:「仕事の資源」例えば裁量性とかコントロールできるかとか、上司の支援とか、そういったものと、「心理的資本」とが相互に関連しあって「ワークエンゲージメント」に繋がるという関係性にあるということが、この図でわかりやすいのではないかなと思います。
それと、ちょうど今年の1月の日経新聞にも「心の資本」という言葉で登場していました。
実証実験で指数が33%向上したことが、営業利益の10%ほどの押上げに相当すると紹介されています。

橋本:それと、もうひとつ、第一生命研究所さんが「Well-being経営に役立つ心理的資本」ということで、研修介入によって心理的資本が3%増加したよというような成果も紹介されています。
また、直近の日経新聞では「人的資本」を開示していく動きが非常に強まっていて、それが投資判断や人材の採用に繋がってくるっていう考え方が出てきているんですけど、ここも心理的資本が関連してくるところだと思います。
そして、私たちBe&Doも実際に心理的資本を診断するものや、トレーニング介入をして開発するプログラムも持っているので、その成果例を少しご紹介しますね。

橋本:これはとある個人の方のデータなんですけど、これは実際に介入して4、5ケ月後くらいの変化です。もともと心理的資本が高い人だったんですけど、実際に介入することによって、心理的資本の値も向上していますし、本人の業績感も高まっている、というデータが出ております。
ということで、様々に注目が集まっているこの心理的資本というものについて、今日はお話していきたいと思います。
開本先生お待たせいたしました。ちょっと概略が長くなってしまいました。

開本:いや、全くその通りというというかコンパクトにうまくまとめていただいたなと思います。補足するなら、「人的資本」から始まって「社会関係資本」、それから「文化的資本」を入れる人もいるので、必ず3つと決まっているわけではないんですけど、私たちは大体「人的資本」と「社会関係資本」と「心理的資本」という3つの段階で捉えようとしています。
「人的資本」は、何を知っているか?「Knowing What」という概念を示す資本、「社会関係資本」は、誰を知っているか?「Knowing Whom」っていうことです。「心理的資本」は「Knowingなんとか」ってなかなか表現するのが難しいんですけど、「何をしたいか?何をしようとするか?」という一人ひとりの意欲に注目しようとする考え方です。
そもそも充分なリソース、知識やスキルを持っている(人的資本)、または幅広いネットワークを持っていても(社会関係資本)、それを活用しようという気持ちが起こらない限りは、なかなか実際の行動には繋がらないので、それに則って心理的資本っていうのはできているということかも知れません。
世の中、Well-Beingや健康経営の流れも一つだと思いますけど、働いている人が楽しくなければ、幸せでなければ、人生100年と言われる長い期間働くにあたってとても大事なんじゃないかと。この2年間はコロナでいろいろとガタガタしましたけど、逆にそういう時だからこそ、こういうことを改めてきちんと考え直すということが、僕や橋本さんが考える新しい資本主義なんだろうなと思っています。

橋本:ほんとに良い傾向が世の中的にも生まれつつあるのかなっていうのは思いますね。やっとしっかり、人に注目し始めたというか。

開本:はい、そう思います。先ほど橋本さんがお話いただいた報告書の中でも、人に関する情報を会計情報にプラスして出していこうというこれからの動きがありましたけど、その中身もいろいろレベル感があると思います。非常に淡白にするのであれば、離職率とか、そういった結果の数値だけを出すこともできるわけですけど、それを超えてどれだけ人に投資をしているか?、リターンとして人がどれだけ成長しているのか?っていうことをきちんと測って、財務諸表であれば貸借対照表ってありますが、それと同じように人に対しても貸借対照表のような情報が出せて、今自分の会社ではこれだけの人的なストックがあるんだと、それは去年に比べてこれだけ増えたんだと、その増えた理由は、こういう検証をしたからだというのがちゃんと投資家にわかるようになると、そこに注目して投資するということもひとつのアプローチとしては合理的になるのかなと思います。

橋本:そうですね。そういう指標がオープンになってくると、求職者もどういう会社で働きたいかが明確になってくるのは間違いないなと思いますね。

開本:特に今の若い人たちはそうだと思いますけど、どれだけ自分を成長させてくれるか、成長の機会とかチャンスを与えてくれるかっていうのを、就職先を決める大事な基準にしてると思うので。単純にジョブ型雇用という言葉で職務記述書、または仕事の中身を細かく定義をするっていうことではなくて、その先を見据えた採用があってもいいんじゃないかなって思います。

橋本:そういった指標をオープンにしていくっていう流れがある中で、1番わかりやすく注目されがちなのが、エンゲージメントサーベイとか、モチベーション調査とか従業員満足度調査とかかなと思うんですが、さっきの白書にも書いていましたけど、もともとエンゲージメントとかの根底にある「個人の資源」の部分はどういう状態なのか?とか、それを高めていくような働きかけを会社としてやってるのか?とか、その数値の変化がどうなのか?とか、ここを見ていくってすごく意味があることなんじゃないかなって改めて思いますよね。

開本:これまでも多くの企業では、従業員意識調査とか、従業員満足度調査とか、モチベーションサーベイみたいなことがたくさん行われてきたと思うんですよね。それで確かに平均何点とかっていう結果は出るんですよ。それを去年と比べて何点上がったとか、何点下がったとかいう話は当然わかるんですけど、じゃあなぜ数字が上がったのか、下がったのかというところが少し曖昧になっている気はします。

橋本:そうですね。調査の後に実際現場で起こってることとか、サーベイで悪い結果が出たからじゃあどう介入するのかっていう話のときに、心理的資本の概念を加えることで解決のヒントになるところもあるんじゃないかなって思うんです。
例えば、エンゲージメントサーベイを実施しても、その後の打つ手がないとか、なぜ改善したのか、なぜ悪くなっているのかがわからない、っていうような、その根幹の部分がちょっと曖昧になることがよくあるなって思っているんですね。サーベイの結果が悪いと、仕事の裁量権をもっと従業員に持たせた方がいいんじゃないかとか、従業員が挑戦できる機会をもっと用意すべきだ、と言われたりするんですけど、そういう機会を用意されたとして、本人が「自分にもできるぞ!」っていう自信、つまり心理的資本がなければ逆効果になることもありえるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか?

開本:心理的資本の4つの要素の中にある「レジリエンス」ですね。これは挫折の経験を乗り越えるっていうイメージですけど、その挫折って必ずしもネガティブなことだけじゃなくて、思わぬ形で抜擢人事されていきなり昇格しちゃったとか、そういうポジティブな状況であってもある種のストレスになって、それが挫折のきっかけになるんですね。それを考えれば、単純に上司が「自律性を発揮しろ」と言ったところで、いきなりそんなん言われても戸惑うばかりとか、「何かアイデア出せ」と言われてストレスを溜めるだけっていうこともよくありますね。必ずしも前向きな気持ちは出てこないっていうのは明らかだと思います。

橋本:「アイデアを出せ」みたいな話もよく聞きますよね。「イノベーションを起こせ」とか、「クリエイティビティを発揮しろ」とか言う割に、上司が詰めるとか、ダメ出しばかりなんてこともあったりして、それじゃ高まらないですよね。

開本:クリエイティブであるというのは他者と違うっていうことなので、まずは上司が考えている世界とは違うというのが前提です。だから、あるアイデアを言ったときに「それは違うだろう」と上司が言ってしまうと、最初で挫折しちゃいますよね。なのにイノベーションとか言われると部下は辛いし、でもそう言ってる上司もさらに上の上司に言われている可能性もあるんです。

橋本:それはすごく大きな問題として日本の企業に横たわっている問題かなと思っています。たとえばエンゲージメントが低い部門があったときに、そこの上司がメンバーをしっかりサポートしなさいみたいなフィードバックって絶対くると思うんですよね。でもその上司自身がそういうサポートされたことがないので、部下にどうやっていいかわからない、そういうケースはめちゃめちゃ多いんじゃないかなって思います。上司もそんなん言われても俺もどうしたらいいかわからないって、すごく苦しいですよね。

開本:自己効力感、エフィカシーに似た概念で「エンパワーメント」っていうのがあるんですが、それもデータを見ると明らかで、上司の元気がいいと部下も元気がいいし、上司が元気がないと部下の元気を削いでしまう、という結果が出ているので、組織っていうのは上から順番に変わっていかないと、なかなか変わっていかないんだろうなと思います。
なので、組織として心理的資本を高めたいのであれば、まずはそれを言い出すTOPがコミットして変わらないとなかなか浸透しないんだろうなと思います。

橋本:そうですよね。結果は出ても成果のところまで繋がらないですもんね。そういった意味では、実際に心理的資本を測って、先ほどおっしゃったようにTOPがコミットメントして影響力の高いリーダーとかマネージャーとかに順番に広げていく、その人たち自身も心理的資本を高めつつ、メンバーの心理的資本をも高めるようなスキルを身につけていくっていうことも一緒にやっていくのが近道かなと思います。
でも一方で、一人ひとりと向き合わなければならないので大変でもありますよね。たとえば集合研修でも一定の介入をしたら心理的資本が多少上がるっていう研究結果もあるじゃないですか。でもそれって一時的なものになりかねないなと思っていて、本当に長期的に心理的資本を高めて成果が出るようにしていくには、やはり現場のマネジメントとか、日々継続的に関わるような取り組みを工夫しないといけないんだろうなっていう仮説を持っているんですが、先生いかがでしょうか。

開本:翻訳した本でも書いてあるんですけど、2時間の研修で2%とか3%上がるっていう結果が示されてはいて、もちろんそれを否定するつもりはないんですが、それでおしまいって言われたらそれは違うだろうなって思いますね。やっぱり研修などで最初の一歩の介入をすることは重要ですし、その最初の1歩と、2歩目から3歩目の必要なエネルギーは違うかなって思います。それが心理的資本のおいしいところというか、一度ポジティブな回転が回っていくと、その回転そのものが次の回転に繋がるようなことも出てくると思うので。研修をいつまでもやらなくちゃいけないとか定期的に毎年しないといけないとかではなく、キャリアの節目節目ではそういった研修をやって自分の心理的資本をふりかえる機会を持つのが大事かもしれませんね。

橋本:それは大事かもしれませんね。まず一つ目の0→1と、1から2とか3に行くところとは全然違って、心理的資本が高まっていったらどんどん自律的に行動したり学んだり内省したりをどんどんできるようになるってことじゃないですか。そうやって複利でどんどん高まっていくイメージが湧きます。
一方で、おっしゃっていただいたとおり、キャリアの節目ですよね、たとえば新任でリーダーになるとか海外赴任するときだとか、産育休から復帰するときだとか、そういういろんな節目を越えていく際にそれまでの自分の資産をどう生かすのかがすごく大事ですし、自分がどうしていきたいか?を改めて振り返る良い機会かなと思うので、そのタイミングでの介入ってすごく意味あるなと思います。

開本:そうなんですよね。そういうキャリアの節目節目では、必ずレジリエンスのきっかけになるような挫折にもなりえます。例えば思わぬ昇進や転勤もそうだし、新たな役割を担う場面っていうのはレジリエンスが問われがちです。今までやったことがない役割を果たすとなると、最初はみなさん自信はないものなのでエフィカシーすら低下する可能性があるってことなんですね。そしてまた次のステップとしてのキャリア目標や、そこに向けてどんなルートがあるのか見えてくるものが変わってきますので、ホープにおいても変化するタイミングなのかなと思います。

橋本:そういう節目を通して、レジリエンスとかホープを見直して、そこから行動を起こして達成体験を生むことでエフィカシーを再度構築して行くっていう介入が効果的なんだろうなと思うんですけど、そこにはオプティミズムの部分も重要かなと思うんです。思考習慣というか、物事の捉え方次第で大きく変わりますよね。

開本:そうですね。難しく言うと「帰属理論」と言いますが、なぜそのことが起こったかっていう理屈、原因を考えるところですよね。

橋本:起こる事実に対して、それを感謝として捉えるとか、自分にとって意味があった学びになったと捉えるとか、そういうオプティミズムの思考の癖づけがあれば、どんなことが起こってもレジリエンスに繋がると思いますし、そこは日々ふりかえり内省をするのが1番大事じゃないかなって私は思ってるんですけども。

開本:一人ひとりが振り返って内省することで変えられる要素は確かにあるんですが、人って社会的資本関係に囲まれているので、周りが謙虚な人ばっかりだと、自分だけオプティミズムを高くいられなくて自分も謙虚であるべきかなっていう暗黙のプレッシャーは出てくるんですよね。
これは、最近よく言われる「心理的安全性」が低い状態ですよね。「自分は悪くない」と思っているのに、周りの人が「環境のせいにしない、人のせいにしない」という見方をしている社会のなかでは、集団の圧力で自分もそうあるべきかなと思ってしまうので、我々平均的な日本人の文化的には、なかなかオプティミズムがしっくりこないというところがありますね。そうは言ってもちょっと自分に対して厳しすぎるんじゃないのかなっていうのが心理的資本のオプティミズムが重要な点かと思います。

橋本:国民性ってほんとあるかもしれないですよね。歴史とか文化も大きく影響してくるってことですよね。ちょうどコメントもいただいていますが、「楽観主義は、未来は変えられると信じることだ」「論理的には鶏と卵の関係なので信じる勇気が必要な気がします」ということですね。

開本:そうですね。その未来を信じるってことを「未来への探索」って言葉でよく説明するんですけど、その前提としては、どこかしら「過去への寛大」と言うか「過去への許し」っていうのはあるのかなと思います。それを許せないとなかなか未来に向かって希望を持つのは難しいので。でも、ここには文化の壁がけっこうあって、自分は許したくても、まわりは許してくれそうにないなっていうところが、平均的な日本人の辛いところかもわかりません。

橋本:そのお話をお伺いしていて思うのは、社内に限らず、社外や友人知人でもいいんですが、第三者が良質なフィードバックをしてくれるとか、こういうふうに考えてみたらどう?っていうような問いかけをしてくれる、そんな存在がいるかどうかが重要じゃないかなって思うんですけど。

開本:そうなんですよ、真面目な人ほど自分の過去を許せないんですよ。だからこそ上司とか同僚がフィードバックをすることが重要です。フィードバックって褒めることだけじゃなくて、うまくいかなかった時に「それはあなたのせいじゃないですよ」っていう「過去への寛大」が生まれるようなフィードバックも大事なんですよね。逆に、どんなにうまくいかなかったことでも少しはうまくいってるところがあるので、そこをきちんと見つけてあげてフィードバックしてあげることが、その人の過去の寛大さにつながるし、それが未来への探求にもなるんだろうなという気がしますけど、、、なかなか難しいですけどね。

橋本:どうしてもネガティブなところに目がいく人が多いので、そのうまくいっているところを見つけることが上司もできなかったり、そこがすごく課題かなと・・・。

開本:やっぱりネガティブなことを言った方が自分の賢さをアピールできちゃうんで、本能的にそうなっちゃうんですけど、それだとやっぱり部下やチームは良くならないと思うんですよね。

橋本:結構地道に身近なところからやっていかないといけないのでしょうね。小さなことでも積み重ねていけばいいというか。

開本:そうなんですよね。心理的資本って言うと大袈裟になりがちなんですけど、言ってることはそんなに大袈裟なことではなくて、みなさんが日常的にいろんな人間関係とか組織の現場で工夫ができることかなとは思います。だから測定しておしまいってわけじゃなくて、日々の生活の中で少しずつ変えていくというのがやっぱり心理的資本の開発につながっていくんだろうなとは思います。

橋本:心理的資本のいいところは開発する方法が、ある程度明確になってきていて、それも日常の仕事とか生活のなかでできることもたくさんあるなと思っていて、それを知ってるかどうかと、それを行動に移せるかどうかにかかってるなと思うので、そういった意味では伴走してくれるような人や、お互いに切磋琢磨できるような環境とかも重要になってくるのかなと思いますね。
さっき派生して「心理的安全性」っていう言葉が出てきましたよね、チームの中で自分らしく振舞えるかどうかがポイントになるって。この「心理的安全性」と「心理的資本」を混同してる人もたまにいらっしゃるかと思います。「心理的安全性」って、それぞれが自分らしく振舞える環境が1番パフォーマンスを発揮されるってことがGoogleのプロジェクトアリストテレスで明らかになったわけですけど、それってそこに構成する人たちが自律していて心理的資本も高い人で構成しているから成り立つんじゃないかなっていう気がするんです。もちろん文化の違いとかもあるんですけど、じゃあそれを本当に実現できている会社ってどれほどあるか?って言うと、なかなかないんじゃないかなって。これは、心理的資本の開発と並行して一緒に考えないといけないことなんじゃないかなと個人的に思います。

開本:心理的安全性って言葉は、すっかりメジャーになってどなたもご存知かと思うんですけど、心理的資本との1番の違いは、「心理的資本」はエンジンやアクセルの役割をするものなんですけど、「心理的安全性」の方はブレーキをできるだけなくさせようという役割みたいなものですよね。どちらも一人ひとりが自分の能力やスキルを発揮してWellbeingに到達することを考えているので、目指している方向は一緒だと思うんですけどね。

橋本:そう考えると、人材開発としては個人の心理的資本を高めつつ、組織開発のやり方としては心理的安全性をいかに高めるかっていうところに注力していくといいんでしょうね。

開本:そうですね。心理的安全性を高めることは結果的には心理的資本を高めることにも当然繋がってくるんだろうなと思います。

橋本:ありがとうございます。参加者の方からコメントがきてますね。「職場に自由な発言がないことが分断を生んだり職場参画行動を生まないのでは」ということですが。

開本:アメリカのようにもう少し転職市場が活発であれば文句を言うかわりに辞めるっていう2つの選択肢があれば、文句は言わないけど辞めるいう形で意思表明をすることができて、それが組織を変えることにはなると思いますけど、日本はそこまで積極的に転職を選ぶ人はいないと思うので、そうなると文句はあるけど言えない人たちが心理的安全性を損なってしまう、そういう雰囲気をどんどん高めていってしまうのかもしれませんね。部下たちが言えない気持ちを、ある意味忖度するような上司の役割がやっぱり必要なんだろうなと。

橋本:そうですね。チャットにも質問がきていますね。「心理的資本を阻むのは上司でしょうか?組織全体でしょうか?本人でしょうか?」、これはなかなか深い質問というか、ここをもやもやと考えていらっしゃる方が多いと思うんですが、先生、いかがですか。

開本:オプティミズム的に言うと上司、会社だってことになるわけなんですけど、でもまずは自分が心を開かない限りはなかなか心理的安全性の扉は開かないという意味では、もう三者の責任と言えばそうですね。でも三者のどれか?って言われるとやっぱり上司の責任が1番大きいと思います。そこが要になるかなと思うので、初めて管理職になる人たちはチームや部下の心理的安全性をどれだけ確保できるかっていう研修はきちんとした方がいいですね。

橋本:組織って人の集合体なので、一人ひとりがちょっとずつ心理的資本を高められるアプローチをユニット単位でもやって成果が出始めると、組織全体の文化風土にも関わってくるのかなと思いますね。
続けてご質問いただいていますね。「マネジメントは上司の役割が大きいということであれば、マネジメントの役割を変えていかなければならないのではないか?」っていうことですが、、、多分これまでの高度成長期の上司像とは変わってきてるのは間違いないなって僕も感覚的には思っていますが、どう捉えますかね。

開本:僕も中間管理職をやった経験からすると、それは言うのは簡単ですけどやるのは難しいんですよね。結局一人ひとりに向き合わざるを得ないっていうのがこれからのマネジメントの大きな流れだと思っています。みんな一人ひとり違うし、個別に見ていかないといけないからこそ1on1がこれだけ流行ってきてるんだと思いますしね。でも、ものすごく手間暇かかります。
それから、指示する、命令するというよりも、サポートするコーチする相談の相手になる、という風になってくるので、ものすごく手間暇かかるんですが、残念なことに組織がフラットになり過ぎているために、1人の上司が面倒を見る部下の人数が多過ぎるっていう状況があるので、バブル崩壊以降のこの30年で日本の企業の組織が弱くなってきているのはそこなんじゃないかなという気がします。それは結局、安易に人件費を削る施策に走り過ぎたんだろうなと思います。

橋本:例えば、職場のマネジメントだけじゃなくて、学校の先生とか塾の先生とかも役割変わってきているって話を聞くことがあるんですけど、ものを教えるとか引っ張っていくとかじゃなくて、うまくモチベートしていくことが役割になってきていると。その人のやる気を引き出すために、何が得意なのか知って、それを活かすためにどうしていけばいいかを一緒に考えるとか、それをサポートして応援してあげるとか、ときには改善点をフィードバックしながら、でもその中でちゃんといいところを見つけてあげる、そんな役割を上司が持って接することができれば結構変わってくるんじゃないかなって。それは、実際私も1on1をやったりすると、より感じますね。

開本:そうなると結局評価の仕組みをガラッと変えなくてはいけないし、それを変えるのはトップマネジメントなんですが、なかなかトップはそこまで変わってはきてないなという気がしなくもないですね。

橋本:もう一つおもしろいコメントきてますね。「今、寄ってたかって課長を暇にさせる作戦ができないかと思ってます」ということですが、プレイングマネージャーが多いですし、こういう潮流が世の中に出てきて、あちこちでやってうまくいったよ〜みたいなのが出てくるといいなって思いますよね。

開本:そういう動きは心強いですよね。課長は、課長らしい役割が見つかるっていうことがうまく回っていくひとつの仕組みになるのかなと思います。

橋本:最後に、開本先生から今日ご参加いただいた皆様にメッセージがあればお願いします。

開本:不十分な説明も多々あったかと思いますけど、「過去への寛大」って言いつつ、この世界ってすっきり割り切れる世界ではないですし、僕が正解だと思ってるところは他の人にとっては正解じゃないことも当然あるので、それが多様性を生かすということですし、それをインクルージョンしない限りは組織の心理的安全性もできなので、多様な意見があって当然だとも思います。僕たち研究者にとっても、実務の世界でみなさんがどのように考えているかを直接知り合える機会も貴重なので、こうした機会にお呼びいただいたのはすごく感謝をしております。本当にありがとうございました。

橋本:ありがとうございました。今までメンタリティの部分って自己啓発でなんとかしましょうみたいな風潮があったんですが、今、科学的、学術的な観点でどんどん開発可能だよ、測定可能だよっていうのが明らかになってきています。これから人的資本の潮流も出てきてるので、それをもっと開発できるような発信を私たちもしていきますし、提供もしていきたいと思っていますので、みなさんもぜひ一緒に取り組んでいただけたらなと思います。ありがとうございました!

舞田美和

舞田美和

Be&Doカスタマーサクセス担当/ CDAキャリアカウンセラー。人材サービス・教育研修会社の企画営業として多くの人材育成支援に携わる。その後、人事・採用、大学の新設・運営業務の後、現職。Be&Doのカスタマーサクセス担当として、イキイキとした組織・人材づくりの提案や運用支援を行っている。

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著者プロフィール

舞田美和

舞田美和

Be&Doカスタマーサクセス担当/ CDAキャリアカウンセラー。人材サービス・教育研修会社の企画営業として多くの人材育成支援に携わる。その後、人事・採用、大学の新設・運営業務の後、現職。Be&Doのカスタマーサクセス担当として、イキイキとした組織・人材づくりの提案や運用支援を行っている。

著者リスト

  • 赤澤智貴
  • 小西ちひろ
  • 橋本豊輝
  • 石見 一女
  • 舞田美和
  • 雪丸由香

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