新型コロナウイルスの感染拡大。急激な社会の変化に対応ができない、会社が求める人材像からのずれが生じているといったミドル・シニア層のキャリアに関する課題が浮き彫りになってきました。
実際、ミドル・シニア世代が出世の階段を順調の登ることができず限界を感じた結果、向上心や仕事への情熱を失うといったことも。日本は超高齢化社会を迎えており、今後はより人材の高齢化が進みます。
増えていくミドル・シニア層に社内でどう活躍してもらうのか。会社としてどう対応していくのかを考えていきます。
目次
ミドル・シニア層のキャリア形成が重要な時代に
一般的に、ミドル世代は35歳~54歳までを、シニア世代は55歳以上と定義されています。
2025年問題は目前。いわゆる「団塊の世代」と呼ばれている約800万人が75歳以上の後期高齢者になります。ミドル・シニア層が労働人口の大きな割合を占める世の中はもう迫ってきています。少子高齢化が進む近年、人材確保にむけた高年齢者の雇用対策は、日本企業にとって欠かせない課題となってきました。
高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月から70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。年齢にかかわりなく働く意欲がある誰もがその能力を発揮できるよう、国としても高齢者雇用の促進を求めています。しかし、ただ単純にその年齢まで雇用すればいいというわけではなく、スキルを発揮し成果を出してもらわなくてはいけません。ミドル・シニア層のキャリア形成が企業において重要な課題となっています。
ミドル・シニア層のやる気が下がる現状
一定の年齢が来ると管理職が役職を外される「役職定年」。企業が従業員の通常の退職よりも有利な条件を提示して退職を募る「早期退職制度」。同一企業内において仕事内容や職種のポジション、勤務地などを変更する「配置転換」。
役職定年は50代後半から60歳までの間に定めている企業が多く、給与が高いミドル・シニア層を狙った早期退職・希望退職を募る企業が増加しています。終身雇用が崩壊し、ごく普通の会社でもこれらの人事制度を目にする機会は増えています。
一方で定年後の再雇用を実施している企業が増えているものの、再雇用で給与が減額になる場合が多く、モチベーションに影響しています。これら様々な制度がある中で、周囲からの期待を感じられなくなり、キャリアの目標を見失ってしまうミドル・シニア層が増えているのです。
ミドル・シニア層のキャリア支援 必要なこと
「人生100年時代」の企業の在り方 ~従業員のキャリア自律の促進~」(平成29年12月/経済産業省)では『企業の役割も 「雇い続けることで守る」から、「社会で活躍し続けられるよう支援することで守る」に、変容が求められているのではないか。』と述べられています。
会社側から定年まで仕事を与え、「自社で雇う」ことの保障を維持し続けていくことは難しくなっています。社内で通用する力ではなく社会で通じる力を育み、社外への転進も含めた個人の自律的なキャリア開発の促進・支援が求められています。管理する人材開発ではなくキャリア開発を応援する、その姿勢が必要なのです。
今までのキャリア形成は、企業主導で一律に実施されるケースが多く、必ずしも従業員それぞれの能力や適性に応じたものとはいえませんでした。今後は「個」に焦点を当てたキャリア形成支援策へと転換していく必要があります。個々人の能力や適性、意思と意欲に応じた選択型メニューを策定するなど、多様な機会を提供し、キャリア形成支援を積極的に進めることが企業に重要です。
また、キャリア開発の支援を行う前に、そもそも個人がポータブルスキルの認識や自己理解ができているか、が問題です。※ポータブルスキルとは「持ち出し可能な能力」。特定の業種・職種・時代背景にとらわれない、どのような環境でも活かすことができるスキルのことを指します。
指示命令で言われたままに仕事をこなし、ふりかえる機会を設けずに進み続ける。そして自分の中で体系化されていない状況を続けている場合、自身の強みや弱みを認識できていないことも。
行動・特徴把握、自己理解から始め、環境理解を深めた上で、将来を見据えたキャリアビジョンを作成するといった流れがよいでしょう。深い自己理解があるからこそその人らしいキャリアビジョンを描くことが可能となるのです。
若年期からの形成が必要
人はそれぞれ仕事観や特性、価値観も異なるため、一律かつ集団的なやり方では本来対応できません。従業員それぞれが自分の内的な動機や価値観を顧みて、企業が用意するキャリア形成施策をただ受け入れるのではなく、自らの価値観やエンプロイアビリティを高めようとする意志を強く持つことが必要です。また、自身にとって何が重要であるかを考えながらキャリアを見直し、将来を創ることが大切です。
企業側はそれら理解したうえで、個人に合わせたキャリア形成支援を行う必要があります。
そしてこれらのキャリア開発施策をミドル・シニア世代に対して行うことはもちろん大切です。
ただしある一定層に向けた一時的な解決策の提示ではなく、職業人としてのキャリア形成を長期的な視点で捉えることが大切です。振り返り、目指すキャリアを見つめ直す機会を若年期から定期的に取り入れていくことが必要。ミドル・シニア層の問題は若年期からのキャリア形成の延長上にあると考えるべきです。若いうちから継続的に社外でも通用するスキルを身につけていく、そういった必要性の認識が必要です。
セカンドキャリアに必要な「学び直し」
「第二の人生における職業」といわれるセカンドキャリア。将来を見据えたキャリアの転身やキャリアアップ、人生をより豊かにする手段としてセカンドキャリアを前向きに捉える流れが広がっています。
セカンドキャリアを成功させるには、新しい組織・仕事への対応力も身につけなければなりません。ミドル・シニア層が活躍するためには、これまでの知識や経験にたよるだけでなく「学び直し」の姿勢が求められます。企業側にも学び直し(リカレント)や越境学習に対するサポートが求められます。
ミドル・シニア層が社内外で活き活きと働く姿を若手社員に見せることで、良きキャリアモデルになるでしょう。また若手社員の育成にもつながっていきます。
まとめ:キャリア開発のあり方
社内の大部分を占めるミドル・シニア社員をどう活躍させるか。キャリア自律を促すために企業側からも働きかけることが求められています。
人材を囲い込むのではなく、社外でも活躍できるよう支援・環境の整備が必要。これからの時代に合わせたキャリア支援が求められています。