終身雇用が崩壊して、日本はこれから「人生100年時代」を迎え入れる準備を始めています。多様な人材の活躍が求められる時代へと変化。
従来は「入社すればこちらのもの。あとは定年まで働くのみ」といった流れが多かったかと思います。今後はそういった考えで働く社員は、会社にとって足をひっぱる存在になるかもしれません。
ひとり一人がキャリア観を持って働くこと。それこそが変化の激しい現代を生き抜くためのキーワードです。
今回は、企業と個人に求められるキャリア観とキャリア形成について、徹底的に解説をしていきましょう。
目次
キャリア教育の重要性
キャリア形成を考える前に、キャリア教育の重要性について考えてみましょう。
ここでお話するキャリア形成とは将来自分がなりたい姿を目指して、企業活動を通じて自己の成長を進めることです。つまりキャリア教育は、企業が社員に向けて必要な能力や態度を育てていくものを指します。
人生100年時代と言われる今、平均寿命が年々高くなり人口減少や少子高齢化により労働力は減少しているため、このキャリア教育が非常に重要です。
2025年4月から「65歳定年制」が実施される計画。各企業に対し導入が義務づけられていきます。
近い未来、定年はただの通過点となり働く期間が長くなる時代が始まります。老後のことを考え、早いうちからキャリア観を持って長期的に仕事に取り組むことが必要です。
一般的にキャリア教育とは学生に行うイメージがあるかもしれません。
しかし今後は、個人と企業の双方がキャリア形成の価値を知り、社会に出たあとでもキャリア教育を行う意識を持たなければいけないのです。
企業側に求められる新たなキャリア観とは
終身雇用が崩壊しつつある100年時代の中では、従来とこれからでは企業に求められるキャリア観が異なってきています。
日本企業の多くは「定年まで働くことが当然だ」という考え方を持つ終身雇用が一般的で、キャリア教育といえば社内で必要なスキルアップを図るものが主流でした。OJTや社内セミナーなどが挙げられますが、そこには学び直しといった概念は少ないかと思います。
昨今の社会情勢の変化によるテレワーク・副業の増加で、内輪的なキャリア教育を中心にする企業の流動性が高まっています。自発的なキャリア形成を生まない社内研修を熱心にしていると「気づけば社員がいなくなっていた!」なんてことも。
時代は変わりました。社員は企業に尽くすものではなく、能力や時間を提供してくれる存在なのです。
企業は労働者を管理する対象として捉えるのではなく、上下関係を取り払ったビジネスパートナーしての良好な関係を作る姿勢や努力が求められます。
キャリア形成は個人が自律的に考えることが重要ですが、企業も働き方を見つめ直し社会の変化に合わせた柔軟なキャリア観を持たなければいけません。
離職するのでは?「キャリア形成」への不安
キャリア形成に一定の理解を示す管理者であっても「社員に自律的なキャリア形成を促すと社外へ流動してしまうのでは…?」という不安がある方も多いかと思います。
たしかに自律的なキャリア観を持った社員は、優秀な人材として評価されやすく社外でも通用する存在になるでしょう。実際、働く場所はどこでもあるようにも思えます。
生まれてくる矛盾と不安…どうすれば良いのでしょうか。
ポイントは社員に自律的なキャリア形成を促し「長く勤められる組織づくり」に徹することです。個人が主体的にキャリア形成を考える組織であれば、社員は自ずとついてきてくれるというメリットがあります。
社員自身に自己責任の自覚や主体性が生まれ、企業へどのように貢献して今後自分の成長につなげるかを考えるようになるのです。
逆にこれからの時代、自律的に動けない社員は環境に適応できなくなっていき、結果として企業にマイナス、生産性低下等を招く可能性が高まります。
キャリア形成を促すメリットと促さないデメリットを考えてみてどうでしょうか。
やはり企業は社員の流動を恐れることなく、個人が主体的にキャリア形成を図ることができる環境づくりを行うことが重要であることがわかります。
万全の取組で100年時代を迎えよう
人生100年時代を前に企業に求められる課題は、組織全体でキャリア形成を促して成長力を高めることです。成長力が高まることで日本の雇用は活性化され、自社も多大な恩恵が受けられます。
今まで個人のキャリア形成と言えば、会社を一旦休業して留学、副業を行うといった形が主流でした。
しかし企業が積極的にサポートに回らなければ、離れている間に帰属意識が低下し流動の原因ともなってしまいます。
そのため企業がキャリア形成において意識することは次のとおりです。
●職業人生の長期化とフェーズの切り分け
●雇用される能力(エンプロイアビリティ)の維持・発展
長い職業人生の中で稼ぐ力を養えば、雇用される能力の維持につながり、離職を防いだ上で企業の成長力は豊かになっていくのです。
ここで具体的な企業の取組を紹介します。
CSR(企業の社会的責任)としてキャリア形成に関する取り組みを進めている企業があります。
例えば50歳以上を対象としたキャリア研修の開催の他にも、ボランティア休暇、副業制度を導入といったようにキャリア形成に熱心に取り組んでいます。
https://toyokeizai.net/articles/-/368526
ほかには、キャリア形成支援を行う企業に対して表彰を行う「雇用・労働グッドキャリア企業アワード」といったものがあります。
※令和3年度「グッドキャリア企業アワード」は中止となっています。
厚生労働省による施策のひとつで、社員のチャレンジ精神を尊重したり定期的なキャリアコンサルティングを実施したりしている企業に対して評価・表彰を行っています。
https://hrnote.jp/contents/soshiki-goodcareer2020-1/
このように社員のキャリア形成を支援する取り組みはもはや当たり前の時代に…。
とはいえ、難しく考えずにまずは小さく実践できる取組を企業が率先して進めていきましょう。
まとめ:企業と個人双方がキャリア観持てば組織は強くなる
企業が社員のキャリア観に対して理解を示し自己成長の機会を提案すれば、ぶら下がり社員を増やすことなく100年時代でも生き残れる強い組織となっていきます。
企業を存続させるために、年代問わずにキャリア教育を提供する必要があるでしょう。
とはいえ、もちろん個人もキャリア形成に対して意識を変える必要があります。
日本企業全体が年功序列、終身雇用に重きを置く「メンバーシップ制」から仕事に対して人が割り当てられる「ジョブ型」へ舵を切り始めています。個人も受け身にならず自らキャリアを形成していく姿勢がなくては取り残されてしまいます。
個人と企業が明確なキャリア観を持ち、二人三脚体制でキャリア形成を醸成させることが重要です。