マネージャーなど組織を率いたり、人を育てる立場になると、様々な悩ましい場面や状況に遭遇されておられることと思います。
今回はそのうちの一つ、「部下が結果が出ずに自信を失っているけど、頑張ってほしい。そんなとき、どんな関わり方をしたらいいんだろうか?」について心理的資本の観点から考えてみたいと思います。
目次
心理的資本診断で見える結果
当社は、心理的資本®(=ポジティブな心理的エネルギーで積極的な行動や自律的な目標達成を促すエンジン)の状態を計測する心理的資本診断®をお客様に提供しています。その結果をお客様と一緒に拝見して、次のアクションについて議論やご提案をさせていただくことがあります。
組織に必ずと言ってもいいほどいらっしゃるのが、「自信と信頼の力(=Efficacy:自己効力感)」が低いor下がっている、且つ「業績感」が低いor下がっている方です。そして、そのような方を発見した時に「たしかにこの部署は業績が良くないんです。だからこの結果は納得です。」とお客様が仰ることがあります。
この解釈は少し危ないかもしれません。もしかしたら、「業績が良くない人は、自信がなくても仕方がない。(自信がなくて当然だよね。)」という思い込みがそこにはあるかもしれません。確かに、組織や自分自身が期待に応えられているか、または期待と実績のその差分について、冷静かつ客観的に捉えることは必須です。そして、その差分を認識すれば、自信を失ってしまうこともあるとは思います。
しかし、自信や自己効力感が著しく低くなると、目標達成に向けて奮起して頑張るどころか、行動を起こしづらくなって身動きがとれなくなってしまいます。そうなると、業績を高めるのは非常に難しいです。逆に、自信や自己効力感が高まれば、目標達成に向けた行動を起こしたり、継続したりする原動力となるのです。
部下の自信や自己効力感を高めるアプローチ
なかなか結果が出ていない部下の支援はいろいろ方法があると思いますが、ここでは効果的な一つの手法として、自信や自己効力感を高めるアプローチに触れたいと思います。
自己効力感を高める方法は4つあります。
- 達成体験・・・成功も失敗も含め、経験値を積む
- 代理体験・・・他者から成功や失敗から学んだり、刺激を得たりする
- 社会的説得・・・ポジティブなフィードバック
- 心理的幸福・・・心身が健康的である状態
4つのいずれも、組織風土やマネージャーの関わり方による影響は大きいのですが、すぐにでも実践できるものとして”ポジティブフィードバック“があります。
ポジティブフィードバックの押さえておきたいポイント3点
ポジティブフィードバックを実践するにあたり、知っておきたいポイントを3点にまとめました。
【1】結果だけでなくプロセスや存在にも
ポジティブフィードバックは、目標を達成したときや、結果や成果が出たときにのみ行うものではありません。今回のテーマは結果が出ていない部下なので、もし、目標達成したときだけ行っていたら、機会がほとんどないことになります。
ポジティブフィードバックは、プロセスや行動に対して行っていくことが大切です。結果にはつながっていなかったとしても、その途上で出来ていることはあるはずです。上司の方にとっては出来て当たり前のことでも、部下にとっては頑張ってやっていることかもしれません。小さくても目標に向かってやっている行動を認めて、伝えてください。
それ以前に重要なのが、部下の存在を認めるポジティブフィードバックをすることです。「ちゃんとあなたのこと見てるよ(〇見守り×監視)」「気にかけてるよ」これを示すことが、フィードバックを受け取る上での基礎となる信頼関係を作ります。
【2】ここぞの一発よりも、気軽に高頻度で
「ほんまにすごい結果が出たときだけ、目一杯褒めるのがワシのやり方や~」というスタイルをとりたい方もおられるかもしれませんが、自己効力感を高めようとするのであれば、「頑張ってるね!」「それいいね!」「困ってることない?」という気軽な声掛けを、日々行っていく方が効果的です。
ポジティブフィードバックを受けることは、部下の方にとっては、自分の頑張っている方向は間違っていないんだなと思えたり、これを認められたということはここまでは出来てるんだなと自覚できたりする、とてもいい機会です。ということは上司の方にとっても、日々部下と向き合いポジティブフィードバックしていくことが、成長機会をたくさん与え、結果に対しても大きなズレを防ぐことにもつながります。
意識して部下の一挙手一投足まで見過ぎた結果、ネガティブな点が気になって指摘をしてしまうような…、そんなマイクロマネジメントにはお気をつけください!
【3】メンバーを巻き込んだもん勝ち
ポジティブフィードバックは、上司と部下の間だけのものではありません。メンバー同士でも、どんどん行っていいものです。メンバー同士でもポジティブフィードバックをすることで、意識してお互い何をしていることに目を向けることになります。それが信頼関係をつくり、同時にいい緊張感も生み出します。
上司だけがメンバー全員分のポジティブフィードバックを高頻度で行おうとすると、時間もパワーもかかり大変かもしれません。メンバー間でなされるようになれば、上司の皆さんも少しは負担が軽くなるでしょう。
ポジティブフィードバックをする機会がない。お互い何やっているか分かりづらい組織構成だから、やりづらい・・・。という場合には、週末に自分の”今週のグッジョブ”(できたこと・嬉しかったこと・頑張ったことなど)を共有することをきっかけにされるのもおすすめです。
”魔法の一言”ではないので継続的なかかわりを
ポジティブフィードバックも決して”魔法の一言”ではないので、自信を失ったところから部下を再浮上させるためには、継続的に行っていくことが必要になります。はじめのうちは週に1度でもいいと思います。
部下がパワフルにイキイキと働くことは、組織にとっても良い結果をもたらしてくれるはずです。ポジティブフィードバックを通じて、部下の自己効力感を高めてみませんか?
今回は、「自信と信頼の力(=Efficacy:自己効力感)」が低いor下がっているという例を切り取ったので、心理的資本の中でもEfficacyに注目してみましたが、「乗り越える力(=Resilience)」など他の構成要素(HERO)着目したマネジメントアプローチを用いることも十分に考えられます!
心理的資本診断について詳しく知りたい!まずは測ってみたい!と思われた方は、こちらをご覧ください。