コラム

ヤクルト高津監督が繰り返した「絶対大丈夫!」という言葉が持つパワーとは?

野球に興味関心が無いというビジネスパーソンにも知ってほしい話です。

2021年のプロ野球シーズンは、セントラルリーグ覇者のヤクルトスワローズとパシフィックリーグ覇者のオリックスバファローズの接戦に次ぐ接戦、文字通りの激闘を経て、ヤクルトスワローズが日本一となりました。昨年、一昨年と最下位からの優勝です。私も試合を中継で観戦していましたが、日本一が決まった時の選手たちの涙には、感動を覚えました。

そのヤクルトスワローズの高津監督が選手たちにかけた言葉の持つ意味と効果について触れたいと思います。

絶対大丈夫という言葉が生むプラスのパワー

これからがリーグ戦の正念場というところで、選手を戦いに送り出す時に高津監督が選手たちに何度も繰り返して伝えた言葉が「絶対大丈夫」です。

絶対大丈夫。その根拠は君たちが自分のことをしっかり理解し、チームや仲間のことを理解して周りを信じ、一枚岩になったら絶対に崩れない。絶対大丈夫。なんかあったら僕が出ていく。なんかあったら僕に相談して。なんかあったらコーチにも相談して。自分で抱え込まない。これがチームスワローズ。前年までの悔しい想いに基づいて、懸命にここまでやってきたのがこのチーム。みんな自信を持ってほしい。絶対大丈夫。絶対いけるから。絶対大丈夫。もし今日グラウンドに立つ時に、ふと思い出したら、絶対大丈夫と言ってみてください。絶対大丈夫だから。どんなことがあっても僕らは崩れない。グラウンドで正々堂々勝負しましょう。

―動画3分あたりからの高津監督のコメントから抜粋

これは、潜在力を引き出し人を前向きにする言葉だと思います。

失敗が続いて自信を失いがちなときや、不安な想いのまま挑戦をする必要があるときに、信頼できる人や尊敬できる人から「あなたなら絶対大丈夫」と声をかけられるとどのような気持ちになるでしょうか。自分にもできそうだ、なんとかやってやろう、というような勇気に似た前向きな気持ちが生まれてこないでしょうか。

「絶対大丈夫」
実はこれは前向きに行動を起こそう、目標に向けてやり遂げようというような心のエネルギー強くするメッセージなんです。(この行動力の源泉となる心の状態は、心理的資本なのです)

ビジネスの場面でも、メンバーから相談があった時に「〇〇さんならできるよ」「〇〇さんなら絶対大丈夫」と声をかけることができるかどうかで、結果が変わるかもしれません。少なくとも声をかけられた人は、多少なりとも前向きな気持ちになると思います。

重要な関係性の質と最低限の自信

ビジネスの現場

一方で抑えておく必要がある大切なことが2点あります。それは声をかける(かけられる)相手との関係性と、本人がそれまでに努力・行動を積み重ねることができているかどうかです。

関係性の質

今回例にあげたヤクルトスワローズの高津監督は、高津さん自身が日ごろのコミュニケーションの中で得られた関係性から、きっと選手たちチームのメンバーからの尊敬と信頼が間違いなくあったのだと思います。

冒頭のメッセージの中にも、その片鱗がうかがえますよね。一人で抱え込まないこと、何かあったら相談して、何かあったら僕が出ていく(僕に任せろ)ということを伝えていらっしゃいます。

これまでやってきたことに自信を持つように繰り返し伝えているようにも思いますし、何よりメンバーをリーダー自身が信頼しているようにも聞こえます。

過程をしっかりと見てメンバーを信じ、日ごろから関わりながら相手を認めていく。その繰り返しなのではないでしょうか。きっとそんなリーダーとチームの関係性だったのではないかと推察します。

最低限の自信

「絶対大丈夫!あなたならできるよ」と声をかけられて、逆に不安が高まったり、プレッシャーを感じてしまい萎縮してしまうケースもあります。

だから「絶対大丈夫」という声をかければいいというわけではないのです。何もやっていない、努力もしていない状態で言われても、その根拠が無ければ、むなしくなってしまいます。

だから日ごろから小さなものでもいいので達成体験をどれだけ積むことができるか、試行錯誤することができているかということが大切になります。その過程で自信が少しずつついてくるのです。

やれることをしっかりやったら、時の運。気持ちが楽に。人事を尽くして天命を待つ。

1990年代に2年連続でリーグ優勝した野村監督時代の話として、高津監督が冒頭の動画の前半でおっしゃっていました。「やれることをしっかりやる」ということも、やはり大事なのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

高津監督の「絶対大丈夫」には日々のビジネスや日常生活にも活かせるヒントがありました。

日々の努力の積み重ねによる試行錯誤と達成体験。そして信頼できる人からの「絶対大丈夫」という背中を押す言葉。

これは心理的資本®を構成する要素のひとつである「自信と信頼の力(Efficacy、効力感)」を強化することなのです。自分ならできるという自信、自分に対する信頼。そして周囲との信頼関係から生まれる力なんです。

心理的資本を開発することで、様々な業績向上・パフォーマンス向上・モラル向上等に影響するという研究結果が数多くあります。

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橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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執筆者プロフィール

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、マネジメント支援ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に「心理的資本をマネジメントに活かす」(共著)中央経済社,2023年がある。

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