「ちょっと私たちも困ってるんですよね」
人事担当者が言いづらそうに話してくださったのは、「CG1(旧サービス名:CareerGoals1on1)」へ参加させたいと考えている候補者の一人、Wさん(40代・女性)についてでした(※実際の事例をもとに内容を一部脚色し、守秘義務に反しない範囲でご紹介しております)。
”困った人”Wさん(Before)
Wさんは真面目な仕事ぶりが評価されて、あるチームのリーダーを任されているものの、ここ最近、少し様子がおかしいのだとか。気分にムラがあるのか、とても前向きにはつらつと仕事しているときもあれば、不機嫌さが周りにもハッキリわかるほど言動が荒れることもあり、チームメンバーも彼女の顔色を窺いながら仕事をすることで疲弊してしまっており、チーム全体のパフォーマンスが下がってきているのも懸念される。
でも本来はとても能力のある人なので、なんとか今の状態から脱してもらいたくて、それとなく話を聞こうとしてみても「特に問題ないです。大丈夫です。」と言われてしまうのだとか。大きな仕事のトラブルまで至っているわけではないので、人事としては下手に介入することもできず、打つ手に悩んでおられていたとのこと。
もしかすると、社内の人間ではなく社外の第三者にサポートしてもらった方がいいのかもしれない、とCG1の参加メンバーに彼女を加えていただくことになりました。
Wさんの苦悩への処方箋
私がプログラム開始前のオリエンテーションでお会いした第一印象では、とてもそんな荒れた言動があるとは思えないほどに快活な雰囲気で、終始笑顔でお話されるWさん。とても前向きにこのプログラムへの参加を捉えていらっしゃるご様子でした。
「ん?もっと不安定な感じの人なのかなと思ったのに、全然大丈夫そうだけどな・・・」と、予想を裏切られたなと感じていたところ、事前課題で受検いただいたタイプ診断の話題から、「人にはいろんなタイプがあって、タイプの違いによってはコミュニケーションの難しさを感じることもありますよね」と話題を振ると、、、「実は・・・」と、恐る恐るメンバーとの人間関係で困っていることがあると話し始められました。
そう、ご本人もずっと悩んでいらっしゃったのです。
チームみんなで一丸となって共通の目標に向かっていく、そんなチームを作りたいと思っているのに、なかなかみんなが同じ方向を向いてくれない。一生懸命伝えても無反応なメンバーがいたり、不満を感じている雰囲気もある。コミュニケーションがどうもうまくいっていないと感じる。そしてその苛立ちを自分でコントロールできないでいる自覚もあるのだけれど、リーダーとして堂々としていなければという想いもあり、誰にも相談できない。そんな気持ちでこの数か月、一人で悩んでいらっしゃったとのこと。
真面目で責任感が強いからこそ、誰にも相談できない。そんな方は彼女に限らず多いのですが、自分一人の視野で物事を捉えていると、八方ふさがりの袋小路に入ってしまうことがあります。このまま放置すると、きっともっと苦しい状況に彼女は陥ってしまうだろうなと推察されました。
私からは、このCG1プログラムを通して、目指したいチーム運営に向けて、ガイドと壁打ちをしながら今の課題を整理して、ご自分らしいリーダーシップやコミュニケーションのスタイルを見つける、そんな6ヶ月間にしませんか?とご提案すると、「ぜひそうしたいです!」とコミットいただきました。そこで、彼女の悩みのサポートへの適任者として、これまで様々な難しいタイプの人のマネジメントを手掛けてきた経験のあるガイドを選任して、プログラムをスタートしました。
「随分変わったね!」WさんのAfter
そして6ヶ月後。他人の反応に一喜一憂するからこそ心を乱されていた彼女が、自分らしさに自信を持てるようになったことで心が安定し、意見の違いや対立にも一呼吸置いていったん受け入れて対応する、そんなコミュニケーションができるようになった!と、喜びの声を聞かせてくださいました。
もちろん、最初から順調だったわけではありません。途中、理想と現実の違いに苦しむ時期もあり、一進一退を繰り返す踊り場のような期間もありました。しかしガイドからは、彼女が常に前向きさを失っていないこと、自身の課題と本気で向き合おうとされている様子が見えていたため、きっと彼女なら乗り越えられると信じて、粘り強く丁寧なサポートを続けてもらいました。
そして6回目のセッションを迎える頃には、すっかり晴れやかな笑顔に。ガイドとの対話の中で、ご自分のコミュニケーションの癖に気づき、多様な価値観を受け入れるとはどういうことなのか?自分の心がネガティブに揺れた際に具体的にどのような対処をすればいいのか?を試行錯誤されながら、たどり着いたゴールでした。
人事の方からも、プログラムが進行するに従って「どんどん表情が変わっていかれてびっくりしています!」とは伺っていたものの、周囲からも「なんか随分変わったね!」と声がかかるほどになったとの嬉しいご報告がありました。
なんであの人はあんななんだろう?と、対応に苦慮するような”困った人”が、組織の中に一人や二人、いらっしゃるかもしれません。ですが実は、そんな人こそ「もっとうまくやりたいのに!」「どうしたらいいかわからない・・・」と一人で悩んでいらっしゃるのかもしれません。
そんな”困った人”も、今回のWさんのように、利害関係のない社外の第三者がいれば、苦しい胸の内や自分の「できない」と感じている部分をも素直にさらけ出し、サポートを得ることで変わっていかれる可能性が大いにあります。そして”困った(状況にある)人”が、その困った状況から脱することができたなら、その本人だけでなく周りの人たちのパフォーマンスも大きく変わります。”困った人”こそ、組織のパフォーマンスを大きく変える鍵を握っているのかもしれません。